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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
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動かない

美鳥を先頭に、足音を極力防ぎながら、軽金属性の階段を上がっていく。


飛行船はガスの浮力を利用して飛行するため、鉄などは使えない。

階段もコンパクトで、強度を出すために多角形に作られていた。


「なぁ、ここには影繰りがいないと、アクトレス教官は思っているのかな?」


井口が囁いた。


「いるでしょうね。

でなければ、影繰りだらけの豪華客船に向かうのは無謀に過ぎるわ」


「だけど、それじゃあ、なんで実質子供3人でこんなところに突入させたんだ?」


井口は、やや怒り気味に語気を強める。


「どの道、10分もすればムーンライト号に到着するわ。

その間ぐらいなら、井口君の感知能力と誠の透過があれば、生き延びられるはず、って事じゃない?」


自分で行くと言ったものの、井口は、今、こうして敵地の真っ只中にいる自分に、やはり違和感を禁じえなかった。


確かに前の敵は強かった。

もし誠だったら、もしかしたら殺されていたかもしれない。

敵の能力も、井口だからこそ解明できた、と言える。


だが…。


結局、影能力のバトルではなく、寝技勝負になったからこそ井口は勝てたのでは無いか?

ゴリゴリの影繰りと、俺は戦えるのだろうか…?


「でも影繰りはいない、という目も無い訳ではない気もします。

だからこそ核爆弾を持ってきているのかも…」


誠が言う。


「0は有り得ないわ。

パイロットとか、技師はもちろん乗り込んでいるでしょうけど…」


美鳥が言ったとき、ガツン、と軽金属の床に、誠が倒れた。


「おい、誠、どうした?」


井口が声をかけると、誠は、なんか転んじゃいました…。

と、瞬間、笑ったものの、すぐに自分の足に触れて青ざめた…。


「あ…、足が、動きません…」


「影繰りね!」


美鳥は瞬間、数十羽の蝶を、黒いマントを広げるように周囲に散らした。

井口も、三匹のトンビを両肩の頭の上に出し、鳥の視力で辺りを見回した。


「何も見えないぞ!」


「あたしも、特段、異物を感知できないわ!」


誠は、自分の脈を測っていた。


「脈拍から見て、特に体調は…、いや、この緊張状態を考えれば、脈拍が正常値と言うのは、異常かも!

つまり、脈を遅くするような類の毒なのかもしれません!」


もっとドキドキしていいはずなのに、誠は、とんでもなく冷静だった。


「麻痺系の毒物かもしれないわね。

しかし、空気に異常は見られないわ」


「気体ではなく、物体でもないとなると、何なんだ?

液体か?」


井口は、頭のトンビを飛ばした。

周囲の立体図が、必要になりそうだった。


「敵を見つけられなければ、あたしたちは全滅する。

すぐにミオさんに連絡するわ!」


蝶が床に向かって直進する。

誠が、それを透過した。


しん、と辺りは静まり返っている。

1階下のダンサーチームの気配さえ、感じられなかった。


誠は、自分の足を透過した。


周囲は、井口と美鳥、二人の探査のプロが見張っている。

誠が見たところで、彼ら以上の感知は出来ない。


足の筋肉が、動かない。


それ以外に、機能の不全がある訳ではなかった。


範囲は…。


誠は、自分の足の指を動かしてみた。


感覚は、麻酔にかかったように無かったが、足の指は動いていた。

くるぶしは、動くが、感覚はない。

だが太ももと脛、この筋肉が、ほぼ動かなかった。


血流は、ある。


医学知識がある訳ではないが、異常は見受けられなさそうだ。


だが、動かそうとしても、足が動かない。


誠はズボンをまくってみた。


「あ…」


思わず声が出た。


「おい、そりゃあ…、虫、なのか…?」


誠の、ふくろはぎの中央外側に、テントウムシほどの小さな黒い昆虫が、ピタリ、と貼り付いていた。


誠は、虫を透視した。


「いえ、これは影です。

透視できません…」


誠は唸った。


「取っていいのか…、でも、動けなければ戦えないか…、

取ってみます」


誠は、影の手を足の膝がしらから伸ばし、虫を摘まんでみた。


カパ、と微かな、吸盤を剝がしたような音がして、虫は剥がれた、と思う瞬間、消えていた。


「消えた!」


井口が唸った。


「美鳥に似た影能力か。

あれだけ小さな虫だと、さすがに探すのは難しいぞ…」


「それと判れば、感知できないことはないわ!」


美鳥は軋むように言うが、蝶の数は、格段に増えていく。


誠は立ち上がった。


「大丈夫、虫さえ取れば効果は消える。

毒とか、そういうものではない模様です…」


足を用心深く回しながら誠は、


「しかし、敵の射程距離は判らないものの…。

強い能力です…」


物音一つしない飛行船の中に、緊張感だけが膨らんでいった。









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