捜索
冬晴れの快晴の空の下、メタリックに光っているそれは、季節がらはんぺんのようにも見える。
おでんに浮かぶそれは、誠の大好物だったが、あまり年頃の男子がはんぺんが好き、などとは言いずらいものがある。
かといって、おでんに男らしい具材があるのか、と問われても言葉に詰まるが、せいぜいチクワブ、ぐらいまでにしておいた方が良いような…。
そう言えば、お腹が空いたな…。
誠は朝からずっと、戦い続けていた。
思いながら、影の手を伸ばす。
50メートルで、影の手は爆発し無数の小さな影の手になり、さらに50メートルで爆発をした。
この要領で1000メートルぐらいは手を伸ばすことができる。
無数の影の手が光るはんぺんを捉え、一瞬で7人は虚空に舞い上がった。
強烈な風が誠に刺さる。
影繰りを殺すと、その分強くなれるのか?
今聞いた話が、頭の中で反芻されていく。
それでは僕は、ちっとも強くなっていない。
美鳥さんがドールマスターを殺したのだし、ナイトを殺したのはレディさんだ。
あのノコギリ男は井口さんが喉を掻き切った。
そんなことを煩悶しながら、しかし自分に殺人など出来るのか、という根本的な問いかけも、頭の奥底で盛んにこだましている気もする。
レディさんや美鳥さんにも出来るのだから、とも思うが、しかし同時に、殺人など本来とても恐ろしい事なのでは…、という想いも湧き上がっていた。
だが…。
誠の煩悶がどこかに決着点を見つける以前に、誠達ははんぺんの内部に、するり、と滑り込んでいた。
一転して薄暗い、金属製のフレームだらけの階層だった。
中央部に巨大な円筒が、幾つも、とても数えきれないほどに並んでいる。
おそらく、と誠は思った。
これが飛行船を浮上させるガスの入っている場所だろう。
ここをレディさんの分銅が貫けば、それでこの巨大はんぺんは地表に落下する。
だが、その前に、小金井さんに核爆弾を発見してもらわなければ、誠たち全員は、東京都民1300万人と共に影も残さずに燃え去っていく。
世界から、東京が消える。
誠達は足音を忍ばせて金属製の床を歩いた。
床は無数のガス室を取り囲むように、ガス室の周りを一周しており、どうやら5階に別れている中の、誠達は3階に辿り着いていたようだ。
「敵はうちらに気ぃついてるのかなぁ」
高屋の問いに、誠は、
「影繰りなら何らかの感知が出来るかもしれませんね。
レーダーとかに写るかどうかは、僕にも判りません」
「写っても、鳥ぐらいにしか思わないんじゃないかな?
金属の反射とはずいぶん違うはずだからね」
ミオは言う。
「どうですか、小金井さん。
爆弾はありますか?」
誠の問いに小金井は、
「今のところは見つけられないな。
この飛行船は、ほぼ空に近い。
たぶんムーンライト号の何かを回収する目的で、意図的に空の状態で飛行しているんだろう。
核爆弾となると、ある程度接近しないと判別できないと思うね。
火薬がある訳ではなく、核物質も完璧に遮蔽されているはずだからね」
ふむ、とミオは考え、
「それでは僕たちダンサーチームと高屋さんは、古金井君の護衛をしながら、館内を進む。
しかしゲームのダンジョンのように手探りで辺りをうろついても時間を浪費するだけだ。
君たち3人は、美鳥をリーダーに、最上階まで上がり、独自に探査をし、随時報告を、美鳥の蝶で教えてくれ。
1分でも早く爆弾を見つけることが、東京を救うことになる」
「判ったわ」
美鳥は頷き、誠、井口と共に、軽金属性のコンパクトな階段を用心深く、登り始めた。




