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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
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125/166

125決断

永田に連絡すると、話をつけておくからムーンライト号まで急げ、という指令だった。


誠は影の手を伸ばし、浜松町から隅田川沿いを北上し、銀座を横切って、佃大橋の手前で座礁状態のムーンライト号に直行した。

最短距離を、新幹線を追い抜くような速度で進むため、数分で未だ開橋したままの勝鬨橋上空を飛び抜けていた。


ムーンライト号の甲板には、前園真理恵博士の指揮により外された電磁波爆弾の部品の山がうず高く積み上げられていた。


遠目には判らなかったが、様々に分類、解体された幾つもの部品の山の間にアクトレスは立っていて、隣に小柄なブレザー姿の人物が立っていた。


「あれ、小金井さんって高校生だったんですか?」


プ、と高屋は噴き出し、


「あれで嫁さんも子供もおるんやよ。

じぇったい30代には見えない、なんて言ったらあかんよ」


話す間に、誠の影の手はムーンライト号を掴んでいて、甲板に着陸した。


「空飛ぶ影繰りもいるとは聞いていたが、自分の眼で見ることになろうとはね」


アクトレスはウエットスーツ姿で呆れたように言った。


「僕の場合、飛んでるんじゃなくて、手を伸ばしているだけですけどね」


誠は笑った。


アクトレスは小柄な中学三年生、小田切誠の頭をゴシゴシ擦ったが、その髪は、今日一日の戦いの連続で戦塵に塗れ、ごわごわだった。


「誠、彼が小金井だ。

ただな、こいつの影能力は警察犬の数十倍の範囲と精度で物を見極める能力、井口と同じ探査班だが、力はSクラスで、絶対に日本はこいつを失う訳にはいかないんだ。

軍事的、政治的、検疫的、内調的、科学的、その他あらゆる意味でだ。

原子炉の検査から疫病発生国からの空港検疫、敵国の動向、全てをこいつが担っている。


だから小金井を貸し出す条件は、常にダンサーチームと高屋で小金井を守る事、決して最前線には立たせないこと。

判ったな」


あのぅ…、と井口が小さく手を上げる。


「俺も一応、探査班なんですが…」


井口も、見れば剥き出しで防弾チョッキを被り、上に内調のナイロンジャンパーを被っただけだった。

アクトレスの嗅覚ならば、頭から血を被ったのも見て取れる。


「よくやったようだね井口。

お前が嫌なら、別の者を彼らにつけるが、どうする。

お前も知らない話じゃあ、無いんだろ?」


「まぁ、影繰りを殺すほど影繰りは強くなる、って話ですよね?

でも、俺、別に強くなった気はしないですけど…」


「そういうのは、いきなりは判らないのさ。

少しづつ、上がっていくものなんだ」


アクトレスは南の空を見た。


「連中、そろそろお出ましの様子だよ。

すぐ決断しな、井口」


晴れ渡った上空では、今も原爆云々と喧伝しながら、白く眩しく輝く真四角の飛行体が、車の徐行に近い速度でムーンライト号まで接近を続けていた。


戦闘要員か…。


井口は迷った。


確かにある程度の奴ならば、俺のトンビが引き裂けない訳ではないが、しかし血なまぐさい世界だ。

実際、内調の中でも死亡率が断トツに高い職場だった。


だが、と井口は誠と美鳥を見た。


こいつらだけに背負わせるには酷な戦闘になるだろうな…。


美鳥も戦い慣れているとはいえ、小柄な少女だ。

誠に至っては影繰りになって2か月の中学生だった。


井口は迷った。


自分より強い人が行った方が良いのではないか、という迷いと、自分がどこまで戦えるのか、という迷いだ。

瞬間逡巡し、井口は、


「あの…、銃弾を余分にもらえますか?」


迷いながら、喋っていた。



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