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シャドーダンス2 東京炎上作戦  作者: 六青ゆーせー
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107/166

107陰遁

高屋と井口が誠に落とされたのは、薄暗い廊下に沢山の配管が走る設備通路だった。


「小田切の奴、ちょっと落とし方が雑なんじゃないか!」


井口は頬を膨らませるが、高屋は、


「いや、よー考えてるよ、ボンは。

ここなら井口君は、カラスで敵の動きを探れるはずや。


ウチはボールになって高速移動できるから、上手く戦えば、敵の裏をかけるはずやねん!

井口君、敵を見つけてきて」


「ん、判ったよ!」


井口は、通路にカラスを飛ばした。


三羽のカラスの視界が、井口の頭の中で三方向に広がっていく。廊下前方、廊下後方、そして廊下の奥だ。


煤けて暗い設備通路は、天井は低い。

2メートルあるかどうか、と言うところか。

平均的な日本家屋は、ほぼ2メートル40センチほどなので、ここでは背の高い男性が大きな荷物を担いだりしたら、天井に擦ることもありそうだ。


幅は5メートルと言うところで、直線に続いているが、所々に脇道があり、三差路になっている。

井口の頭の中に、凄い速度で立体マップが出来上がっていく。

こうして立体マップを作るのが井口の感知能力だった。


どうやら井口と高屋が落ちたのは設備通路の東側面であるらしい。

そこから三方向、南、西、北にカラスが飛んでいくが、南側は二本の側道を超えたところで行き止まりになっていた。


「行き止まりか…」


井口は解せないように呟いた。


設備通路は通常、エレベーターの止まらない、存在しない地下抗だ。

地下特有の湧き水や、施設特有の諸事情により、一々床や天井を開けて作業するのが煩雑だと推測される場合に設計される、0・5階なのだ。

最初から作業効率を考えて設計されることが普通の施設なので、行き止まりの路地、などは普通作らない気がするが、井口も建築のプロではないので、詳しくは判らない。


カラスを南端の直線に戻らせ、西に向かって飛行させる。


数分で井口の頭にマップが出来上がったのだが…。


「おかしいよ高井さん。

敵の姿が見えないんだ…。

小田切の奴、別の場所にノコギリ男を落としたのかな?」


「ボンの性格上、そんなミスはしそうにないんやけど…」


「そう言ってもいないんだよ…。

一緒に歩いてみる?」


井口は南に向かって歩いた。

設備通路はその性質上、碁盤の目のように作られている。

マップの南1西1と言えば、誰でも場所の見当がつくわけだ。


「この先は何?」


「行き止まりなんだよ」


井口は西に折れた。


確かに南東端から歩いて西に歩くと、通路が薄暗いとはいえ、影繰りの視力でならすべては見渡せるが、敵の姿は見当たらなかった。


「脇道に隠れてるん違うの?」


「俺、結構ちゃんと見たぜ。

それにカラスの視力は人間と違うから、見落とすなんて考えられないんだよ」


鳥の視力、特に動体視力は人間をはるかに勝る。

井口のカラスも、そこは同じであり、普通の人間が、たとえ物に隠れたとしても、ほんの微かな呼吸の揺らぎもカラスの目は察知する。

だからこそ井口の索敵能力は桁外れの精度を誇っているのだ。


高屋と井口は視線を絡ませた。

誠が間違えたのなら、別にそれでも構わない。

戦闘状態が続いており、正直、少々疲れてもいた。

一息つけるだけでも、それはそれで有難い。


だが…。


もし、敵が影の力で身を隠しているとしたら、感知できないのは、死んだも同じことだった。


クモの巣に乗っているのに、それにすら気がつかない哀れな虫。


居心地悪げに、2人は辺りを見回した。




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