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鋼鉄の防護シャッターをへし曲げる力だ。
まともに殴り合うことは出来ない。
誠は、影の体を自分の体に重ねた。
こうしたところで、影繰りとしては精々中の下、いや海外で何年も戦っていた蒼井と比べれば下の中ぐらいの戦闘力かもしれなかった。
蒼井は誠より頭一つほど背が高く、瘦せ型だが、よく見ると中々に筋肉質の肉体を持っていた。
ニヤッと笑い、蒼井は鋭いジャブを誠に浴びせかける。
その手からは、例のどす黒いスライムのような謎物質が伸びてくるので、パワーのせいだけではなく、まさに微かに触れることも誠の敗北を意味していた。
誠は、軋むように自分の肉体限界を超えて、影の体を使って自分の体を動かし、蒼井のジャブを顔横に交わした。
だが蒼井も、この室内を好きに動けるわけではない。
美鳥の蝶が、どんどんと数を増やしているからだ。
しかし蒼井は、その事はさほど気にならないのか、逃げる誠をピッタリマークして再びジャブを撃ってきた。
「小田切君、君は確かに一瞬で人を殺せる影繰りだ。
だけど、この基地では迂闊に君の得意な透過を使えない。
うっかり落とせばマザーコンピューターなのだからね。
だから、君はこの場所では弱い」
なるほど、だから自分に攻撃を仕掛けているのか、と誠は理解した。
誠にしてみれば、相手はとても打ち合えるパワーではないので、出来る限り回避しようとしているが、蒼井は速度も尋常ではないので振り切れない。
だが、そうしているうちに美鳥の蝶が蒼井を覆い始めていた。
ペタペタと蒼井の体に貼り付いて、動きを阻害していく。
誠は瞬間、蒼井の足を透過した。
ガクン、と蒼井は階段を踏み外したようにバランスを崩した。
そこに美鳥の蝶が殺到した。
蒼井は、真っ黒い塊になった。
やったか?
誠は思うが。
ギリギリ、と蒼井が、黒々と蝶に貼り付かれたままで、少しずつ動いていく。
凄いパワーだ!
誠がコンクリートに埋めた足が、泥にはまった足を引き抜くように、ぬるっ、と地面から抜け出した。
同時に。
べちゃり…。
美鳥の蝶が、塊になって、蒼井の体から落ちてきた。
「どうだい。
面白いだろ?」
蒼井は、全身から、あの黒いスライムを発生させたらしい。
それで自分の皮膚を覆う事で、コンクリートに埋まっても、美鳥の蝶に貼り付かれても、軽々と抜け出してしまうようだ。
唖然とした誠は、一瞬、動きを止めていた。
その瞬きするほどの時間で、蒼井は誠の目の前まで走り、ボディに鋭いパンチを撃ち込んでいた。




