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31話 

 

『プレイヤーの皆様に集めて頂くドロップアイテムは『コイン』となっております。なお、このコインは通常エンカウントするスカイギルからはドロップせず、この島でのみドロップするよう調整してあります。他のフィールドで同名のモンスターを倒してもコインはドロップしませんのでご注意ください』


 世界に響き渡る男性の声が言う。


 その声が一旦説明を止めると千春たちプレイヤーの眼前に集めるコインのホログラムが表示された。


『魚のシルエットが彫刻された銀のコインです。レア種のドロップは金のコインとなります』


 表面には運営の男性が言うように魚のシルエットが描かれている。


 くるくると回っているコインの裏側には星座のうお座が描かれているようだった。


『すでに事前にメールでお伝えしてある通り、今回のイベントは『最終日までに他プレイヤーよりも多くのコインを所持していたプレイヤーの勝ち』とします。もちろん個人で参戦するのも自由です。しかしパーティで参加するとパーティで所持している合計数となりますので、どちらが有利かは言うまでもありませんね。ただしパーティで参加する場合はパーティ内の報酬の分け前は事前にしっかりと話し合っておく事をお勧め致します』


 参加するプレイヤーはほぼパーティを組んでいるようで、仲間同士、顔を見合わせて頷き合ったりしている。


 その中には即席パーティも多いようだった。


 千春たちも仲間同士で顔を見合わせ、


「報酬って何が貰えるんですか?」


 と今さらな千春の質問にケイとルシが古典的な反応として前のめりに躓いてみせる。


「まずはお金ですね。順位で差はありますが1位だと確か今回は300万Gでしたか」


「さんっ!!?」


「5位から10位の間でも100万Gは貰えるはずです」


 今の千春にとっては想像もできないほどの大金である。


 使い道だって多くは浮かばない。


 否、浮かんだ。


「まあお金はおまけみたいなものなんですけどね。本命は上位入賞パーティに一つだけ貰える『スキルの果実』です。なんとこれは食べた人に好きなスキルを生えさせられる超希少アイテムなんです、って千春さん? あの千春さん?」


「聞いてねえよ、とっくに」


「のんちゃんが1位になれば300万G貰えるって言ったあたりから、ちーちゃん完全トリップしてたみたいだよ~」


 少しだけ悲しいノエルだった。


 その悲しみを吹き飛ばしてくれるのも元凶(千春)だったのだけれど。


 ノエルの手は小さくて暖かい千春の手に強く握り締められる。


「千春さん!?」


「わたし、優勝できるように頑張りすから! だから待っていて下さいね、ノエルさん!」


「え? え? は、はい。千春さんが言うならずっと待ってます」


 言われている意味をノエル自身は理解していない。


 しかし、もちろんノエルは千春の手を強く握り返した。


「百合百合してるとまた注目を集めちゃうよ~?」


「声ちっさ」


「そっかな~? ルシの気のせいじゃな~い?」


 明らかに小声でのケイの注意が届くはずもなく、イベント開始の瞬間まで二人は手を繋ぎ続けていた。


 ノエル曰く、エンドワールドを始めてから約4か月。


 最高に幸せな瞬間だったらしい。



  ▼  ▼  ▼



「さあ行きましょう!」


「おう! まあ、こうなるよな」


 現在、千春たちはプレイヤーで溢れ返っている無人島内を、スカイギルを探して歩き回り続けていた。


 その隊列はルシ、千春、ノエル、ケイである。


 そして戦闘となれば千春は一目散に最後尾へと移動する事が求められている。


 攻撃をすれば転び、モンスターに無防備な背中を見せる千春を戦わせるつもりはない。


 千春の役目は戦闘後にあるのだから。


「お出ましだ!」


 ルシの声で身構える四人。


 その千春たちの前に高空からゆっくりと高度を下げて現れるスカイギル。


 角ばった頭部はシルエットで見たそのままで、むしろ実際に見る方が平面的な顔面をしている。


 そして全身が空色に鈍く輝いていた。


 一言でスカイギルを表すのであれば、


「………………顔の潰れたオジサン」


「「「ぶふっ」」」


 千春が第一印象を口にし、それによりノエルたちにもスカイギルは『顔の潰れたオジサン』にしか見えなくなった。


 平面的な顔を持ちながら何故かたらこ唇なのが顔面のバランスを崩壊させているのだろうか。


 とにかくデザイナーの悪意を感じるモンスターだった。


「こ、【鋼体】! それに【水絶の盾】!」


 ルシは自身の職業により発現したスキルと、装備により使えるようになったスキルを発動する。


 水絶の盾は水属性に類する物理・魔法攻撃を軽減するスキルである。


 効果は装備者の耐性により左右される。


 つまりアクエリアを装備しているルシが使えば99%軽減されると言う事。


 そしてそこに、


「【清流の加護・Ⅱ】」


 ノエルが水属性耐性+効果のあるスキルを発動させルシへと使えば、その効果は水属性119%の耐性付与となる。


 守りが完成した所にスカイギルの特殊攻撃【水鉄砲】が放たれる。


 たらこ唇を突き出して水を噴いただけなのだが。


 まともに受ければプレイヤーを吹き飛ばす程度はできそうな威力である。


 だがそれも愛用の巨盾さえ構えていない、ただ無防備に、堂々と仁王立ちしているだけのルシに軽く弾かれているため強そうな攻撃には見えないし感じられないのだけれど。


「行け、ケイ!」


「はいさ~!」


 ケイが肩に担いでいるのは両手剣。


 ただし彼女の所有する中で最強を誇る『オウガロッソ』ではなく、普通にNPCの店で買える両手剣。


 オウガロッソは確かに強力だが、その分、使用制限がある。


 普段使いには向かない、ここぞの一番に使う『オウガロッソ(とっておき)』なのだ。


 それに防御を考えなくていいため、例え店売りの量産品であろうと全力で振り下ろせれば威力はそれなりのものが得られる。


「躱されても問題ない戦闘って楽だよね~」


 しみじみ呟いてしまうほど、実際にケイの攻撃命中率は低い。


 命中率45%ほどである。


 当たればデカい、けれどミスも多い。


 ギャンブル性の高いアタッカーなのであった。


 その攻撃も今回はしっかりと命中した。


「ぶいっ!」


「っし! 戦闘終わりっと!」


「千春さん、怪我はありませんか?」


「わたしは何もしてませんから大丈夫です、ノエルさん。それよりもルシさんは大丈夫ですか?」


「おう! 全然なあんも問題ねえよ!」


 ぶっつけ本番ではなく、しっかりと効果をテストしてから挑んでいるけれど、ああまで無防備に攻撃を受け止められると千春としては不安になる。


 それだけ千春の作った装備を信頼してくれていると思えば嬉しくないとは言えないのだけれど。


「さあ、今のヤツはアイテム落とさなかったからな! 次いくぞ次ッ!」


 ガンガン進んでいくルシを千春たちは追いかける。



  ▼  ▼  ▼



「おい、今の見たか?」


「ああ」


「スカイギルの攻撃、完全に無効化してたよな?」


「もしかして水耐性100%の防具とか?」


「防具単品でか? それはないだろ、たぶん……」


「防具に水耐性が付与されてるのは確定だろうね。あとはバフ積みで100%近くまで伸ばしてるんじゃないかな」


「だろうな。それでも完全無効化って事は少なくとも防具だけで50%以上の耐性積んでるんだろうけど」


「……お前、どれくらいの耐性値の防具用意した? ちなみに俺は32%」


「勝った。俺は35%」


「マジで? お前ら頑張りすぎじゃね? 俺17%」


「「「お前はもっと頑張れ」」」


 

 一般的なプレイヤーが用意した防具の水属性耐性値は平均30%という所。


 水の魔石を無駄にしたくなかった以上に、ミスリル鉱石がまだ貴重なため。


 一般プレイヤーは精錬したミスリルインゴットと水の魔石を精錬し直さずに(、、、、、、、)防具を錬成しました。


 その差が明確に結果に表れてます。


 以上、補足でした。


 

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