25話
23話の後書きに対してお返事を頂きありがとうございました。
本当にすごく励まされました!
今後もお付き合いさせて頂けますよう、よろしくお願いします!
「ちーちゃん! イベントだよ! イベントがきたよ!」
千春がログインした早々、テンション最高潮のケイが飛びついてきた。
ケイは安全な拠点の中でもお気に入りの『グリフォンの軽装鎧』を装備しているので、抱き着かれると硬い金属部分が当たって痛いのだが。
けれどそれだけ気に入ってくれているんだと思えば、苦言も喉の奥に引っ込んでしまう。
苦言を口にしない代わりに千春が口にしたのは当然の疑問。
「イベント?」
「そう! イベント! 楽しみだよね~! 今回のイベントはモンスター討伐系だって!」
千春が何かを聞く前にケイは自分から全部説明してくれた。
今回のイベントは異常繁殖したモンスターの討伐。
討伐対象のモンスターは一種類。
けれど稀にレアモンスターが出る。
競うのは討伐対象モンスターが今回のイベント限定でドロップするアイテムの所持数。
レア種の場合ドロップアイテムも少し異なる。
ただし討伐対象モンスターを倒せば確実にアイテムをドロップするわけではない事に注意。
イベント開始は十日後。
開催期間は十日間。
最終日に一番多くアイテムを所有していたパーティ、ソロプレイヤーが優勝となる。
所持数が同数の場合、レアドロップの多い方を上位とする。
「それにあたしらもパーティで参加しようぜって話だな」
ケイの説明中にログインしてきたノエルとルシもイベントの事は知っていたらしい。
ちょっと仲間外れにされた気分だった。
「でもモンスター討伐系かあ……」
「千春さんにとっては苦手な分野ですね」
「はい」
戦えない事はないと千春は思う。
だが、きっとイベントとなれば多くのプレイヤーが参加するだろう。
しかも『エンドワールド』のプレイヤー男女比は7:3ほどだと言われている。
異性がいっぱいの場所で普段通り行動できるとはとても思えない。
ノエルたち三人の前でも、戦闘となれば未だに緊張するのにだ。
だけれど千春もイベントには参加したいと思っている。
四人で何かをするのは楽しいと知ったから。
「戦闘では役に立てそうにないですけど、わたしはわたしにできる事で貢献したいです」
むんっ、と。
なだらかな胸の前で拳を握る千春。
力んだ際、無意識にMPがウサミミに流れてピコッと動いた。
千春の気合いと連動するように。
すると悟りを開いたような穏やかな表情で、ノエルがソファに座るように倒れた。
そして一言。
「私ね、思うんです。千春さんって本当は最強なんじゃないでしょうか?」
「お前にとってはな」
??? と首を傾げる千春。
その際にもピコッとウサミミが動いた。
「……いや、ノエルの気持ちもわかるけどな、マジで。これは確かにあたしでも可愛いと思うもんよ」
「あざとさが爆発してるもんね。まあ、ちーちゃんの場合、あれ、完全に素だからね~。だから私らにも効果的なんだけど~」
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千春にもできる事。
考えるまでもなく、それは鍛冶しかない。
というわけで彼女はイベント情報をインターネットの『エンドワールド』掲示板で探し始める。
「討伐モンスターの情報がほしいなあ」
いくつかの板を巡り、日付が今日から明日へと変わった後。
「あった!」
その情報はエンドワールド公式サイトで発表されていた。
「えっと『スカイギル』っていうモンスターが討伐対象なんだ。シルエットしか公開されてないけど、これって明らかに魚だよね?」
そのシルエットは魚類の形をしていた。
頭部が妙に角ばった形をしているけれど、尾びれなどはしっかりと魚類の形をしている。
そして親切にもスカイギルは水属性の攻撃を得意とする、と明記されていた。
「なるほどなるほど。と言う事は……、あ! 属性の関係性も調べておかないと!」
忙しい夜はこうして更けていった。
▼ ▼ ▼
「あの! みんなに付き合ってほしい場所があるんです!」
「わかりました。すぐに行きましょう」
「え!? まだわたし何処に何をしに行くのかも伝えてませんけど!?」
「千春さんのお願いなんですよ? それが何であれ私の答えは『Yes』に決まっています」
「ちょっと待て、そこの百合バカ。せめて何をしたいのかだけでも聞いてから行動しろ。その方が千春のために動けるってもんだろ?」
「……ルシの言う通りですね。わかりました。では千春さん、お願いします。それからルシ。さっき私を百合と呼称した事については後でゆっくり話し合いましょう」
「は、はい」
「お、おう」
最初のノエルさんと今のノエルさんと印象が違うような……、何かに勘付き始めた千春だった。
それはともかく。
「あの、わたし『エルベ湖畔』に行きたいんです!」
「なるほど。千春さんの目的は『水の魔石』ですか」
「あ、やっぱりわかっちゃいますか?」
「当然です。エルベ湖畔は現在唯一、水の魔石の採れる場所ですから。それに昨日の今日ですしね」
昨日イベントの話をして、昨日イベント情報が解禁され水属性攻撃を主な攻撃手段として使用してくるモンスターが対象となると発表されているのだ。
気付けないはずもない。
それに、あそこにある採取ポイントでは今の所、水の魔石しか確認されていないのも大きい。
フィールドとしては出現モンスターも強くもなく、したがって経験値も美味しくなく、ドロップアイテムもしょぼい。
だけれど景色は綺麗で今では女性プレイヤーの憩いの場。
もしくはゲーム内カップルのデートスポットである。
「わたしにできる事なんて鍛冶くらいですから。せめて皆さんの身を守れる武器とか防具を用意したいなあと思もいまして」
照れて頬をかきつつ言う千春に、ノエルは当然のようにノックダウンした。
緊急措置として彼女のダイブギアが緊急ログアウトを敢行。
ノエルは一瞬で姿を消した。
全ては千春が照れで俯いている瞬間の出来事だった。
「…………あれ? ノエルさんは?」
「ちーちゃんは気にしないでいいよ」
「ああ、ほっとけほっとけ」
それよりも、と言ってルシはソファから立ち上がり千春の前に立つ。
身長差が凄かった。
千春の目線を上げるも、屈強で豊満なルシの胸のせいで顔が見えない。
感情が死んでしまいそうだった。
むしろ愛憎反転しかねなかった。
実際に感情が反転しそうになった時、
「あたしらのためにありがとな、千春」
がしがしっ! と強く、ともすれば乱暴に思える手つきで頭を撫でられた。
いや、かき回されたの方が的確か。
「私たちのためにありがと、ちーちゃん!」
撫でる手が増えた。
恥ずかしいけれど嬉しくて、その手を千春は受け入れた。
そして戻ってきたノエルを含めた四人一緒にエルベ湖畔へと向けて拠点を出発した。
ちなみに二人が千春を心行くまで撫でていた事は、ノエルには内緒である。




