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24話 

 

 ここはリシュティナ。


 グリフォンの生息地であり、前回、四人揃ってリスポーンさせられた地。


「いきます! 【プロテクション】【ウィンドガード】」


 ノエルの魔法が発動する。


 これにより盾役のルシえはVITに+補正が入り、同時に風の耐性を得る。


「よっしゃ! 任せな! 【鋼体】!」


 さらに盾職として覚えたスキルでさらにVIT値を上乗せする。


 そしてルシは漆黒の巨盾を地面に突き立てる。


 剛力を誇るルシでも持ったまま移動する事の出来ない超重量級の盾。


 裏面には構えた盾から顔を覗かせている可愛らしいメイド兎が彫刻されていた。


 これはルシが頼み込んで彫刻の場所を変えてもらった千春から贈られた黒鋼の盾である。


 構えた直後、その巨盾『悪魔の盾』に衝撃が加わり、その衝撃はルシの手にも伝わる。


 しかしその衝撃は想像していたよりも小さい。


「はっ! なかなかのもんじゃねえか!」


 視界は遮られるものの使い心地としては悪くない。


 何よりもルシの巨躯を完全に隠せるだけの大きさがいい。


 その大きさ故に悪魔の盾などという千春としては認めたくない不名誉な名称が着いてしまったのだけれど。


「えいやー!」


 気の抜ける声で一撃を繰り出すのはケイ。


 彼女の手にも友人に贈られた血の様に紅い両手剣が握られている。


 けれどケイの一撃は地面を強く打ち付けただけでモンスターには届いていない。


「ごっめーん! 避けられた!」


 ケイの視線を追って上空を見る。


 枝葉の錯綜する頭上の隙間から大きく翼を広げる獣のシルエットが確認できる。


 かなりの巨躯だと地上から見上げるだけで判った。


 それに翼はあるものの四足歩行の獣のシルエットをしている。


 獅子の体躯に翼を持つモンスター。


 グリフォンである。


 悪魔の盾をいつでも構えられるよう警戒しつつ、ルシも頭上を見上げる。


「警戒されたかもな」


 そうなると面倒な事になる。


 警戒中のモンスターは、警戒対象を追いかけてくる。


 そして隙あらば奇襲を仕掛け、もしくは他のモンスターとの戦闘に乱入してくる。


 いつ警戒を解いてくれるかはランダム時間なので確実な事は言えない。


「問題ありません」


 言いながらノエルはスティレットを腰から抜く。


 自在剣と命名されたそれはノエルの魔法により真価を発揮する。


「【サイコキネシス】」


 自在剣がノエルの視線の動きに従い、自在に宙を舞う。


 そしてノエルはグリフォンに狙いを定め、命令する。


「貫きなさい!」


 直後、自在剣はサイコキネシスの力により高速で射出された。


 イモータルオブジェクトである頭上を錯綜する枝葉を、ノエルの針の穴を通すような精密な魔力操作で突き抜け、そして自在剣はグリフォンの翼を貫いた。


 ギュオオオオッ!!? という濁ったような獣の鳴き声が響き、けれどそれで終わりではない。


 続け様、ノエルは逆側の翼をも貫き、グリフォンの飛行能力を殺す。


 なれば当然グリフォンは落下。


 ドゴンッ!! という墜落音を響かせ、グリフォンはただの地を這う獣に成り下がる。


「今です!」


「まっかせて!」


 嬉々と飛び出したケイ。


 両手で握るのは総ミスリル製の両手剣。


 耐久値5という低さ故に実現した超絶破壊兵器。


 魔力を込めれば込めるだけ破壊力が増すという、なぜそうなったのか千春も首を傾げた一品である。


 その代わりなのか、本来であれば得られる全属性効果は一切持っていない。


 完全なる無属性。


 ミスリルという希少金属の塊。


 純ミスリル製だと蒼銀色になるはずが、なぜか禍々しい真紅に色彩を変えているのも謎だった。


 詳細を語れば、これは1%未満の確率で発生する『失敗作』である。


 敵味方問わず攻撃すれば回復効果を与える剣なども失敗作の一種として存在する。


 ただ得てしてそういう形での(、、、、、、、)失敗作は強力な効果を持つ装備になる事が多い。


「いっくよーっ!!!」


 ケイはMP全てを両手剣『オウガロッソ』に流し込んだ。


 刀身に彫られた可愛らしいメイド兎が紅蓮に輝く。


 まるでここが自身の見せ場だと勘付いているかのように。


 しかし、


「ケイちゃん! 待って!」


「へ?」


 振りかぶられたオウガロッソが振り下ろされる事はなかった。


「ごめんね。少しだけ試したいことがあるの」


 そう言って千春がグリフォンに歩み寄る。


 気絶状態にあるとはいえ危険である事に変わりはない。


 千春さん!? とノエルが狂乱しかねない声音で叫び、追いかけてくるのを、千春は振り返って見せた笑顔で制止する。


 そして千春はグリフォンの前に立つ。


 大きい。


 特に背の低い千春と比する形になると、そのグリフォンは寝そべっているのに背伸びをしても一番高い所に手が届かないほどだった。


 その巨魁を前に千春は軽く逡巡する。


(これだけ大きくても普通に倒すだけだと一匹につきドロップアイテムは一個しかもらえない)


 ケイがどのように改造してほしいのか千春はまだ聞いていない。


 けれど少なくともグリフォンの羽1枚で十分という事だけはないだろう。


 となれば、この後もグリフォンを狩り続けなければいけなくなる。


 それがゲームの醍醐味ではあるのかもしれないけれど、戦闘が苦手な千春にとっては正直、避けたいと考えさせられる。


 だから考え、そして思いついた。


「【採掘】」


 つるはしを構え、グリフォンの羽の部分に振り下ろす。


 コロンッ、とキューブが3つ落ちた。


 それを見ていたゲーム的常識人であったノエル、ケイ、ルシは唖然呆然で絶句。


 千春はキューブをストレージに入れてアイテム名を確認。


 そこには確かに『グリフォンの羽』と記載されていた。


「えへへっ。本当に採れちゃいました」


「「「……………………………」」」


 無言で視線を交わし合う三人。


 そして同時に首肯し、


「「採りまくれええええっ!!!」」


「採りまくりますっっっ!!!」


 採掘、採取しまくった。



  ▼  ▼  ▼



 体を採掘されすぎてエフェクトに包まれ消えたグリフォン。


 後にはドロップアイテムであるキューブが落ちていた。


 グリフォンの翼に突き刺さっていた自在剣は、ふよふよと重力に逆らうように風に舞っている。


 ノエルはサイコキネシスで自在剣を操作して手元に戻し、鞘に納めた。


「お疲れさま~!!」


「おう! お疲れさん!」


「お疲れさまでした」


「お疲れさまでした!」


 ケイ、ルシ、ノエル、千春でリベンジ成功のハイタッチを交わす。


 否、これはグリフォンの羽大量獲得の成功を祝うハイタッチかもしれない。


 実際にグリフォンの羽はドロップ品も合わせて三桁を超え、総数104枚採れた。


 十分すぎる収穫に四人はホクホク顔である。


 そして「あ」と思い出したように千春は声を上げた。


 もう一つの結果を聞くために。


「武器の使い心地はどうでした? 何か気付いた改善点とかありました?」


「ねえな。使いやすかったぜ!」


 ルシは満足そうに笑顔で伝える。


「魔力を込めた時、剣がビリビリ震えるの! あれは気持ちよさそうだった……。次は使わせてね?」


「ごめんなさい、ケイちゃん」


 使わせてあげられなかった事を千春は謝罪する。


 けれど対価として大量のグリフォンの羽を手に入れられたのだ。


 ケイに文句はない。


 そしてメイド兎に関してはもう諦めている。


 それから千春は今回一番気になっていたノエルに目を向ける。


 つぃっ、と逸らされた。


「え!? 何か問題点があったんですか!? 今のわたしに可能な限り不純物を取り除いた浮遊石で作ったつもりだったんですけど……」


「いえ、自在剣に問題は何もありません」


「??? じゃあ何に問題が?」


 問い返すもノエルは口を噤んだ。


 けれどその代わりにケイが行動と口頭で教えてくれた。


 千春の頭部の一部に触れながら。


「これのせいだよね~。ちーちゃん可愛い!」


 千春の頭にはウサミミが生えている。


 もちろん作り物ではあるけれど、千春が魂を込めて作り上げた至高の逸品である。


 魔力を流せばピコピコ動くこだわり具合。


 しかもただの飾りではなく聴覚に補助効果がある。


 少しだけ耳が良くなるという特に高くもない普通にNPCの店でも販売されている装飾品だ。


「ああ、可愛いですよね、うさみみ! ノエルさんの分も今度作りましょうか?」


 ペアルック!!? と想像して思わず「よろしくお願いします」と頼みそうになってしまったノエル。


 けれどノエルは自分で装備したいわけではない。


 単純に可愛い千春がさらに可愛くなって戦闘中に視界に入ると集中できなくなっただけだ。


 そして面白がっているケイが千春に耳打ちする。


「ちーちゃん、耳、動かしてあげて」


「??? いいですよ」


 小首を傾げたままウサミミをピコピコする千春。


「………………ぐふっ」


「え? きゃああああっ!? の、ノエルさん!? どうしたんですか!? ノエルさん!!」


 とてもいい笑顔で彼女は崩れ落ち、そして駆け寄ってきて体を支えてくれる千春に対してノエルは親指を立てる。


 千春さんは最高よ、と。



  ▼  ▼  ▼



 リシュティナの大森林地帯でグリフォンを狩り、拠点に帰ってきた千春は、さっそく鍛冶工房へ。


 普段であれば千春の背中を追いかけてくるノエルも、今はある意味で昇天しているため千春は一人で工房に入った。


 千春の手にはケイの一張羅である部分的に金属を使用した軽装鎧がある。


 これにグリフォンの羽をつけて! と頼まれたのだ。


「さて」


 どうすればいいんだろう、と千春は悩まし気に腕を組む。


 装備品の改造はプレイヤーであれば当たり前の事だ。


 それは不正行為にはならない。


 むしろ個人差を出すためにと運営が装備品の改造を推奨しているほどだ。


 運営もプレイヤーの改造装備を見てアイデアを頂戴する場合もあったりなかったり。


「金槌で叩けばいいの?」


 あいにく千春は裁縫に関するスキルは持っていない。


 金属製の肩当に羽を縫い付けられるのかという疑問は別にして。


 ケイに当たり前のように渡され、当然のようにお願いされて受け取ったけれど、本当に鍛冶スキルでどうにかできるんだろうか? と千春は不安なのである。


「とりあえずやってみよう」


 決めて、千春は金床にケイの軽装鎧とグリフォンの羽を重ねて置いた。


 置く場所は肩のあたりにしておく。


 取り付ける場所はここがいいとケイにリクエストされていた場所である。


「えいっ!」


 カーンッ!! と金属と金属がぶつかる音が数回した。



  ▼  ▼  ▼



「どうぞ、ケイちゃん」


「ああ! ありがとう、ちーちゃん!」


 わーい! と子供のように全身で喜を表現してくれるケイを嬉し気に千春は見つめる。


(何で金槌で叩いただけで金属と羽が同化したんだろう?)


 ケイの軽装鎧はほぼ皮製で、要所要所を金属で補強するタイプの鎧。


 肩当の部分は金属製だった。


 そこにグリフォンの羽を取り付けた。


 せっかく100枚以上も取れたのだ。


 贅沢に使おうと、そう決めて肩から二の腕辺りまで覆うようにイメージしてグリフォンの羽を金槌で同化させていった。


 千春としては付け過ぎたかもしれないと思っていたのだけれど、ケイは「ゴージャスだ~!」と本気で喜んでいたので結果オーライである。


 ちなみに改造の結果、VIT値も上がり、風属性に対する耐性も15%ほど付与された。


 

補足。


グリフォンから採取できたのは仕様です。


グリフォンから採掘できたのはバグです。


他の特定のモンスターからも採取、採掘でドロップアイテムを獲得する事が可能な場合もあります。


そして採取、採掘でもモンスターには一定の固定ダメージが入ります。


これは最大HPを削られるため回復魔法などでモンスターのHPを回復させても効果は得られません。


本編で語れるか分からなかったのでこちらで補足させて頂きます。


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