表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
77/250

第77話:栄光の国内杯と、ただの大会クリアフラグ

リオの巨大スタジアム。超満員の観客の地鳴りのような大歓声の中、俺はブラジル国内杯の頂点に立ち、燦然と輝く優勝トロフィーを片手で気だるげに掲げていた。魔導など使う価値もない。ただ、俺の戦術と圧倒的な個の力が、このサッカー王国の全土を平伏させたのだ。


「主様、流石です。ブラジル全土の猛者たちを文字通り一人で蹴散らし、国家最高峰の栄冠を掴み取ってしまうなんて……。マネージャーとして主様を支える私の解説能力も、この熱気の前にはただ勝利を称えるだけの拡声器にされてしまいそうです! ……あ、いえ、取り乱しました」

ルナはいつもの大騒ぎを完璧に抑え、優勝の紙吹雪が舞い散るピッチの上で、俺の隣で誇らしげに胸を張った。


だが、歓喜に沸くスタジアムの時間が、唐突に重く静止する。

VIP席の奥から、さらなる高み、欧州最高峰と謳われる「超有名メガクラブの総責任者」が、漆黒の移籍オファー書を携えて厳かに姿を現したのだ。


世界の調停機構が送り込んできた、次なる格式の壁。


『――国内杯の優勝、実に見事だ。だが、世界の真の頂点である我が欧州メガクラブへの移籍を拒めば、君の栄光はここで止まる。世界規模の「絶対的な格の差」の前に、如何なる地方王者の天才もひれ伏すのだ!』


世界の理が弾き出した、実績をさらに上の権威で値踏みし、支配下に置こうとする術式。


だが、差し出された世界最高峰の移籍オファーを前にして、俺はただ退屈そうに金メダルを指先で弄んだ。


「有名なクラブがスカウトねえ。調停機構とやら、国内杯の優勝に合わせて、随分と律儀に次のイベントを用意してきたもんだ。これ、俺が昔、まだ原初のスポーツシミュレーションの進行ルートを設計してた頃に、国内の大会をクリアした瞬間に自動で上位リーグのスカウトが迎えにくるように設定してた『ただの大会クリアフラグ(あるいはただの進行ルート確認)』の構造そのまんまじゃねえか。ガワだけ世界規模の格の差っぽく見せてるけど、根本にあるのは俺が組んだただの自動イベントだぞ」


『――警告。データの最深部から、記述者による「全欧州メガクラブの絶対統治」を検知。な、何だと……世界の頂点たる我がスカウトオファーが、ただの「クリアフラグ」の残骸だというのか……!?』


「俺のやらかしたクリアフラグなんだから、どれだけ上の格とやらで威張られようが、俺が一言『――あ、その欧州リーグの連盟ごと丸ごと買い取っておくわ』とシステムを書き換えてやれば、この瞬間に『一介の移籍選手ではなく、欧州サッカー界のすべてのルール、すべての興行権を完全に支配する絶対至高の最高総裁状態』に書き換えることなんて、朝飯前だろ」


指先で空中の魔導文字をトントンと2回――いや、スッと軽やかにフリックする。

次の瞬間、男が持っていた漆黒のオファー書は一瞬で砕け散り、俺に世界のスポーツ界の絶対支配権を固定する美しい金色の総裁紋章マスター・プレジデントへと再構成されていった。調停機構の仕掛けたメガクラブイベントは、俺にとってはただの「リーグの総資産を自分の財布に入れてやる」ような手間で、一瞬にしてただの快適な俺の支配地へとデグレードさせられた。


「……世界最高峰のスカウトを、昔のただのクリアフラグ扱いして、一瞬で世界のサッカー界の頂点そのものを自動固定させたのですか?」

ルナが、ツッコミを忘れた虚無の目(しかし瞳は黄金に輝いている)で、いつの間にか欧州の総責任者が俺の前に膝を突き、「我がリーグの絶対総裁!」と平伏している己の前の光景を見上げる。ルナは、1秒前よりも深く俺を崇拝していた。


「おいおい、そんなに焦らなくても、この世界のすべての栄冠は俺のさじ加減ひとつさ。調停機構の用意したバグの修正も終わったことだし……」


俺が微笑み、足元のトロフィーを軽くスワイプすると、ルナの視線が俺の指先に引き寄せられる。スタジアムのピッチの奥に、次なるステージへと続く「黄金のキャットウォーク(絶対無双の特等席)」が、極上の光の粒子を散らしながら自動生成されていく。


「さあ、お前の席は世界のどこへ行こうともいつでも俺のすぐ隣だ。完全に俺の支配下となったこの最高品質なブラジルのステージで、次はどんな極上の退屈しのぎを見せてくれるのか、特等席からじっくり楽しもうじゃないか」


俺を中心に、完全掌握した優勝スタジアムにして、すでに最高の配置で寄り添う唯一のヒロイン・ルナ。その圧倒的な調和の輝きを纏ったまま、俺たちは世界の規則(調停機構の法)すら完全にプライベートな玩具としたその先へと、優雅にステージを移行させるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ