表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
73/190

第73話:絶対遅延の時間凍結と、ただの処理遅延テスト

美声を響かせるルナと共に次なる領域へ進む俺たちの前に、天から「針が完全に静止した漆黒の巨大時計(停滞の宣告者)」が轟音を立てて降り注ぎ、空間全体の『時間因果』と『描写速度』を急速に汚染し始めた。

その時計が怪しく明滅した瞬間、俺たちの周囲の時間が一瞬で引き伸ばされ、世界の法則によってすべての行動が『1秒進むのに永遠を要する超スローモーション』の檻へと強制的に閉じ込められていく。


世界の調停機構が発動した、すべての速度を奪い去って完全な無防備へと叩き落とす最高位の停滞魔導――『絶対遅延・時間凍結タイム・スロー』。


『――どれほどの全能の力を持とうとも、流れる時間そのものを『凍結』してやろう。これより汝らの歩みは無限の静寂の中に捕らわれ、瞬きひとつできぬまま、我が超高速の断罪の刃によって細切れに破砕されるのだ!』


天の彼方から響く調停者たちの執念深い声と共に、激しく世界の速度を書き換える遅延汚染の波は、俺の隣で驚愕の表情を浮かべようとするルナの身体にまで侵食し、彼女の動く速度が数万分の1へと遅延していく。


「主様! @&#$!? ……(※時間遅延により、セリフの出力速度が極限まで引き伸ばされています)空……間の……時……間が……物理的……に……停止……させられて……いま……すぅぅ!」

ルナが「時間を奪われる恐怖」を孕んだ完璧な解説役としての絶望顔(しかし極限まで引き伸ばされたスローモーション)を浮かべ、空間を圧迫する停滞の覇気に怯えながら、長い時間をかけて悲鳴を上げる。周囲の魔導器官も、存在の強制停止を前に消滅アラートを鳴らした。


唯一のヒロインであるルナが、時間差を越えて完璧なリアクションを完了した。

その様子を眺めながら、俺は世界を静止した灰色に染めようとする「汚染された巨大時計」を、退屈そうに見つめて鼻で笑った。


「時間の強制遅延ねえ。調停機構とやら、お前らがドヤ顔で発動させてるその嫌がらせシステム……。これ、俺が昔、まだ原初の魔導グラフィックの処理速度を組み立てて耐久テストをしてた頃に、どれだけ負荷をかけてもコマ落ちしないか確認するために、一時的に全空間のウェイト設定(更新速度)を限界まで遅くして放置してた時の『ただの処理遅延テスト(あるいはただのウェイト設定)』の構造そのまんまじゃねえか。ガワだけ最高位の停滞呪術っぽく見せて着飾ってるけど、根本にあるのは俺がちょっとテスト用に速度を落としたまま忘れてただけのただのデバッグ用数値だぞ」


『――警告。エラー。データの最深部に、原初の記述者による「全時間軸の絶対超速駆動マスター・クロック」の上書きを検知。バ、バカな、世界を停止させる絶対の遅延が、ただの汝の「ただの処理遅延テスト」の残骸だというのか……!?』


「俺のやらかした遅延テストなんだから、どれだけ時間を引き伸ばされようが、俺が一言『――あ、テスト終了。速度戻すわ』と言って世界のシステムを修正してやれば、俺たちの速度も時間も一瞬で『相手が1秒を認識する間に全並行世界を数千億周してすべての先手を掌握する絶対至高の超時空神格状態(速度価値の強制無限化)』に書き換えることなんて朝飯前だろ」


指先で空中の魔導文字をトントンと2回叩く。

次の瞬間、世界を覆っていた巨大な時計は一瞬でパチパチと音を立てて砕け散り、ルナと俺の全身に絶対の速度を固定する美しい金色の加速紋章マスター・アクセルへと再構成されていった。調停機構の遅延術式は、俺にとってはただの「ウェイト設定を解除してやる」ような手間で、一瞬にしてただの快適な空間へとデグレードさせられた。


「……世界を消滅させる絶対の停滞処分を、昔のただの処理遅延テスト扱いして、一瞬で全宇宙最高の絶対の超加速へと自動固定させたのですか?」

ルナが、ツッコミを忘れた虚無の目(しかし瞳は黄金に輝いている)で、すでに元の正常な時間(いや、それ以上の快適なテンポ)へと戻り、俺の胸に抱きつきながら問いかけてくる己の状態を見上げる。ルナは、1秒前よりも深く俺を崇拝していた。


「おいおい、そんなに焦らなくても、この世界のすべての秒針は俺のさじ加減ひとつさ。調停機構の用意したバグの修正も終わったことだし……」


俺が微笑み、指先を一突きして静止していた「空間」を軽やかにスワイプすると、唯一の美女であるルナの視線が一斉に俺の指先に引き寄せられる。目の前の空間の奥に、次のステージへと続く「黄金のキャットウォーク(絶対無双の特等席)」が、極上の光の粒子を散らしながら自動生成されていく。


「さあ、お前の席は時間がどれほど引き伸ばされようといつでも俺のすぐ隣だ。完全に俺の支配下となったこの最高品質なステージで、次はどんな極上の退屈しのぎを見せてくれるのか、特等席からじっくり楽しもうじゃないか」


俺を中心に、完全掌握した無限の速度の中で、すでに最高の配置で寄り添う唯一のヒロイン・ルナ。その圧倒的な調和の輝きを纏ったまま、俺たちは世界の規則(調停機構の法)すら完全にプライベートな玩具としたその先へと、優雅にステージを移行させるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ