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第6話:壊された聖痕と、神をも超える奇跡の癒やし

先遣隊を文字通り一瞬で『すり潰した』日の夜。

エルフレデが淹れたコーヒーを飲み終えた俺は、彼女を自室へと呼び出した。


「デ、ディアス様……。何か御用でしょうか……?」


部屋に入ってきたエルフレデは、昼間の圧倒的な光景を目撃したせいか、すっかりおとなしく、借りてきた猫のようになっている。ドレスの裾を小さく握りしめ、上目遣いで俺の様子を伺っていた。


「エルフレデ、その服の襟を緩めろ。お前の『聖痕』を見せろ」


「……っ!?」


彼女の身体が、目に見えて強張った。

聖痕。それは彼女が『最強の聖女』たる証であり、帝国の上層部によって無理やり引き剥がされ、彼女が奴隷へと没落する原因となった、胸元の深い傷跡のことだ。


「嫌よ……これだけは、見せたくない……。今の私は、もう聖女でも何でもない、ただの薄汚れた……」


彼女は涙を浮かべ、拒絶するように両腕で我が身を抱え込んだ。かつて誇り高かった宿敵の、あまりにも痛々しい弱み(トラウマ)。

だが、今のなろう読者は、ヒロインのウジウジした悩みを長引かせる展開を嫌う。必要なのは、即座の【完全救済】だ。


「命令だ。忘れたか、お前は俺の奴隷だ」


俺が冷酷に言い放つと、隷属の紋章が淡く光り、彼女の意思に反してその手がゆっくりと襟元を開いた。

そこには、かつて神聖な輝きを放っていたはずの皮膚が、ドス黒く焼けただれ、見るも無残に抉られた傷跡が残されていた。帝国が彼女の力を奪うために行った、非道な処置の痕だ。


「……ひどいものね。笑えばいいわ。かつてあなたと並び立つと言われた聖女の成れの果てよ」


エルフレデは絶望に瞳を濁らせ、顔を背けた。


俺は無言で彼女に近づき、その焼けただれた傷跡に、静かに右手をかざした。


詠唱などしない。ただ、頭の中で権能を発動させる。


――『因果逆転・神聖再生レザレクション・ゼロ』。


「え……? あ、熱い……!? いや、これは……心地いい……?」


俺の手のひらから溢れ出た、純白の、しかし帝国の神殿など比較にならないほど濃厚な神聖魔力が、エルフレデの胸元を包み込む。

次の瞬間、抉られていた肉が急速に再生を始め、ドス黒い火傷の痕が、まるで最初から何もなかったかのように、白く透き通った美しい肌へと戻っていく。


それだけではない。奪われたはずの『聖女の力』が、以前の数十倍の出力となって彼女の体内に満ち満ちていく。


「な、何が起きたの……? 傷が消えて……魔力が、帝国にいた頃よりも溢れてくる……。あり得ないわ、壊された聖痕は、神にしか直せないはずなのに……!」


「神だと? そんな退屈な存在と俺を一緒にするな。俺にとって、お前の傷を治すなど、こぼれたコーヒーを拭き取るよりも容易いことだ」


圧倒的な、神をも見下す強者の余裕。


エルフレデは自分の綺麗な肌と、体内で唸りを上げる圧倒的な聖魔力を確かめ、そして、ゆっくりと俺の前に膝をついた。

その瞳には、昼間の恐怖や畏怖を超えた、熱烈な、そして狂信的とも言える【深い忠誠と好意】が宿っていた。


「ディアス様……。あなたに命を狙われていたあの頃、私はあなたのことが憎くて、そして誰よりも恐ろしかった。でも、今、確信しました……」


彼女は俺の衣服の裾にそっと唇を寄せ、極上の、とろけるような笑顔を浮かべた。


「私の命も、この新しく授かった聖女の力も、すべてあなたのものです。あなたを裏切ったあの愚かな国を滅ぼすためなら、私は喜んで、あなたの鋭い剣になりましょう」


かつて命を奪い合った宿敵の、完全なる精神的屈服。

これ以上の報酬(快感)はない。


(第7話へ続く)

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