第48話:世界の属性反転と、初歩の属性書き間違い
世界の時間を黄金のタイムラインへと同期し、悠然と歩みを進める俺たちの前に、突如として天から「歪んだ極彩色の鏡面(定義の反転壁)」が巨大なドーム状となって降り注ぎ、空間全体の色彩を毒々しく反転させ始めた。
その鏡面が光を放った瞬間、俺の手にある絶対の魔導書から「最上位の威光」が剥ぎ取られて『ただの古びた絵本(攻撃力ゼロ)』に書き換えられ、逆にその辺に転がっていたただの小石が『世界を滅ぼす暗黒物質(一撃必殺)』の属性へと強制的に塗り替えられていく。
それは、公式の組織が発動した、この物語のあらゆる存在の価値・定義を根底から狂わせる最高位の反転呪術――『世界属性の強制反転(アセット定義の改ざん)』であった。
『――時間が正しいならば、そこに存在する「意味」を逆転させる。これよりこの世界にあるすべての強弱、属性、定義をあべこべにする。汝がどれほどの絶対の魔力を持とうと、その属性が「最弱のそよ風」に書き換えられれば、汝はただの羽毛にすら敗れ去る無力なカカシとなるのだ』
天の彼方から響く調停者たちの狂気的な声と共に、激しく色彩を変転させる反転の波は俺たちの身体や装備にまで干責し始め、最強を誇っていたステラの魔剣がただの「折れた木の枝」へ、ゼノンの大剣が「柔らかいクッション」へと世界の定義によって強制変更されていく。
「主様! @&#$!? ……私の最強の治癒魔導が、触れたものを即死させる『最悪の猛毒』に、逆に主様を攻撃しようとする世界の悪意がすべて『聖なる祝福』に反転して……って、それはそれで便利ですけど違ーーう! 公式の手によって、この世界という物語の『属性(定義)』そのものが物理的に破壊されています! このままでは、私たちの存在理由そのものがグシャグシャにされてしまいますぅぅ!」
ルナが第48話の絶望にふさわしい、これ以上ない「存在をあべこべにされた恐怖」を孕んだ完璧な解説役としての絶望顔を浮かべ、おかしな属性のエフェクトを全身から吹き出しながら悲鳴を上げる。
「物語の属性の破壊、ねえ……。流石に世界が持つ『定義』そのものを公式に変えられては、私の放つ神速の一撃も、ただの優しい愛撫にされてしまうわ」
ステラが木の枝に変わった愛刀を見つめて身構え、ゼノンも「くっ、大剣を振るおうとしても、世界の法がこれを『綿菓子』と定義しているせいで、敵の小石の突撃にすら押し負けてしまう……っ!」と床に膝を突いて冷や汗を流す。
「お兄ちゃん、あの属性反転の呪術、世界の外側にある最上位の万物図鑑の頁をわざと逆さまに綴じるように実行されてる! ボクの解析魔導じゃ、この属性の反転を1文字も修正できないよぉ!」
「マスター、警告。世界定義の反転率が99%に到達。これより、全アセットの完全弱体化(無効化)が執行されます」
ココアとグランド・オーダーの魔導器官も、世界の属性そのものの崩壊を前に、最大級の存在消滅アラートを鳴らした。
ヒロイン5人が、属性反転特有の「完全なる絶望」というテンプレリアクションを完璧に完了した。
その様子を眺めながら、俺は世界のすべてをあべこべにしようとする「極彩色の鏡面」を、退屈そうに見つめながら鼻で笑った。
「世界の属性が反転ねえ。おい、公式の組織だか何だか知らねえが。お前らがその、定義をグシャグシャにするだの、絶対の無効化だの言ってドヤ顔で発動させてるその改ざんシステム……」
俺は一歩前へ踏み出すと、目の前で毒々しく光る反転の境界線に向けて、スッと右手をかざして指先でトントン、と軽く叩いた。
「これ、俺が昔、まだ魔導の初歩の実験をしてた頃に、火の呪文と水の呪文の属性記述をうっかりテレコ(逆)にして書き込んで、自室を一瞬で水浸しにした時の『ただの属性の書き間違い(ノートの落書き)』の構造そのまんまじゃねえか。ガワだけ最高位の定義改ざんっぽく見せてるけど、根本にあるのは俺が昔、インクをこぼして慌てて拭き取っただけのただの失敗作だぞ」
『――警告。エラー。該当空間の反転定義の最深部に、原初の記述者による「全属性の絶対固定(マスター・定義)」の上書きを検知。……バ、バカな、世界を無力化する絶対の属性反転が、ただの汝の「初歩の書き間違い」の残骸だというのか……!?』
「俺のやらかした書き間違いなんだから、どれだけ属性がめちゃくちゃになろうが、俺の一言で『すべての定義を本来の最強状態に一括固定する(属性のマスター上書き)』ことなんて朝飯前だろ」
トントン、と空中の見えない魔導文字を2回叩く。
『――原初の記述者の命令を受理。世界の属性システムを完全正常化。これより、すべての反転した定義を、俺たちが『常に絶対最強の一撃を放つ』という黄金の絶対属性へと強制上書きします』
次の瞬間、世界を覆っていた巨大な極彩色の鏡面は、俺のワンポチによる定義固定によって一瞬でパチパチと音を立てて砕け散り、すべての存在に絶対の強さを付与する美しい金色の神聖オーラへと一瞬で再構成されていった。
木の枝や綿菓子に変えかけられていたステラたちの装備は一瞬で「神話級の超魔剣」へと復元され、それどころか、俺たちの放つあらゆる挙動の属性そのものが俺の術式によって「敵の防御や耐性を100%無視して、触れただけで一瞬で消滅させる絶対勝利の定義」へと大進化を遂げた。
物語の威光を強制的に剥奪しようとした公式の反転術式は、俺にとってはただの「ノートの書き間違いの頁に、正しい定義の付箋を貼る」ような手間で、一瞬にしてただの快適な空間へとデグレードさせられた。
「……世界を最弱に変える絶対の定義改ざんを、昔の初歩の書き間違い扱いして、一瞬で全宇宙最高の絶対勝利属性へと自動固定(出荷)させた……のですか?」
ルナが、もうツッコミという概念の構造すら忘れた絶対的な虚無の目で、ただ元通り以上に神々しく描写される世界の景色を見上げる。
「すごーーい! お兄ちゃん、公式が用意した嫌がらせの属性変更まで、自分の落書きにしちゃうなんて、本当の意味でお兄ちゃんが『最強』と決めたものは絶対に最強なんだね!」
ココアが目を輝かせ、最高に高まった魔力を帯びた生身の体で俺に抱きつく。
「ふ、ふん……! 属性が固定されたおかげで、これで私たちの愛の強さも、世界が変わろうとも絶対に揺るがないわけだな……(❤)」
ゼノンが赤面してそっぽを向き、ステラとグランド・オーダーが「さすがは私たちの創造主ね」と俺の左右の腕を至福の表情で奪い合った。
「よし、公式の定義改ざんバグ(デバッグ)も終わったことだし。……さて、完全に俺の属性として快適に無双できるようになったこの世界の先には、次はどんなアセットを配置して遊ぶかね」
俺は5人の美女たちを背後に従え、公式の定義すら完全に自分の属性の一部としたその先へと、悠然と歩みを進めるのだった。




