第46話:最下位の評価と、昔の落第答案
世界の言語を最高級の文体へと自動校正し、悠然と歩みを進める俺たちの前に、突如として天から巨大な「血赤色の烙印(格付けの呪印)」が降り注ぎ、世界の全空間へと容赦なく刻印され始めた。
その烙印が刻まれた瞬間、俺たちの築き上げた魔導城塞や無限の大宇宙から「神聖さ」や「価値」が急速に剥ぎ取られ、まるでゴミ溜めのような「最低の評価」へと世界の概念が塗り替えられていく。
それは、公式の組織が発動した、この物語の価値そのものを物理的に叩き落とす最高位の失墜呪術――『世界評価の強制最下位化(価値の剥奪)』であった。
『――言葉が美しいならば、その「価値」を地に堕とす。これよりこの世界を、全宇宙で最も下劣で無価値な「駄作」へと格付け(リジェクト)する。どれほどの魔力を持とうと、世界そのものの存在価値が「零」になれば、汝らはただの塵芥として自動的に世界のゴミ箱へと廃棄されるのだ』
天の彼方から響く調停者たちの勝ち誇った声と共に、刻まれた血赤色の烙印は俺たちの足元をドロドロとした泥濘に変え、世界の存在理由そのものを根底から腐らせて廃棄処分にしようと侵食を進める。
「主様! @&*%!? ……あ、頭の上の称号が、勝手に『最低最悪の駄作』に書き換えられてしまいます! 公式の手によって、この世界という物語の『価値(評価)』そのものが物理的にゼロにされています! このままでは、私たちが主様と紡いできた気高き歴史すら、ただのゴミとして宇宙から永久に消去されてしまいますぅぅ!」
ルナが第46話の絶望にふさわしい、これ以上ない「存在の価値を否定された恐怖」を孕んだ完璧な解説役としての絶望顔を浮かべ、涙ながらに悲鳴を上げる。
「物語の価値の剥奪、ねえ……。流石に世界が持つ『評価』そのものを公式に変えられては、私たちの最強の技もただの無価値な空振りにされてしまうわ」
ステラが誇りを傷つけられたように唇を噛んで身構え、ゼノンも「くっ、私の騎士としての誉れすら、無価値なゴミ扱いとして書き換えられていく……っ!」と床に膝を突いて冷や汗を流す。
「お兄ちゃん、あの最下位化の呪術、世界の外側にある最上位の格付け審議会から直接判決を下すように実行されてる! ボクの解析魔導じゃ、この烙印の数値を1ミリも上げられないよぉ!」
「マスター、警告。世界価値の残存率が残り1%。これより、無価値オブジェクトとしての強制廃棄が執行されます」
ココアとグランド・オーダーの魔導器官も、世界の価値そのものの崩壊を前に、最大級の存在消滅アラートを鳴らした。
ヒロイン5人が、価値剥奪特有の「完全なる絶望」というテンプレリアクションを完璧に完了した。
その様子を眺めながら、俺は世界のすべてをゴミに変えようとする「血赤色の烙印」を、退屈そうに見つめながら鼻で笑った。
「世界の評価が最下位ねえ。おい、公式の組織だか何だか知らねえが。お前らがその、世界を駄作にするだの、絶対の格下げだの言ってドヤ顔で発動させてるその廃棄システム……」
俺は一歩前へ踏み出すと、目の前で赤く光る巨大な烙印の文字に向けて、スッと右手をかざして指先でトントン、と軽く叩いた。
「これ、俺が昔、まだ魔導学校に通ってた頃に、試験の時間が余ってめんどくさかったから名前だけ書いて白紙で出して、教師から派手に怒られた時の『ただの落第答案(零点の通知表)』の構造そのまんまじゃねえか。ガワだけ最高位の失墜呪術っぽく見せてるけど、根本にあるのは俺が昔、机の奥に丸めて押し込んでたただの白紙の答案用紙だぞ」
『――警告。エラー。該当空間の最下位評価の最深部に、原初の記述者による「評価基準の全改ざん(絶対神格化)」の上書きを検知。……バ、バカな、世界をゴミに変える絶対の格下げ判決が、ただの汝の「昔の落第答案」の残骸だというのか……!?』
「俺のやらかした落第答案なんだから、どれだけ点数がゼロになろうが、俺の一言で『評価基準そのものを俺の都合のいいように書き換える(採点基準の改ざん)』ことなんて造作もないだろ」
トントン、と空中の見えない魔導文字を2回叩く。
『――原初の記述者の命令を受理。世界の格付けシステムを完全支配。これより、すべての血赤色の烙印を、全宇宙の頂点に君臨する『永久不滅の最高神話(殿堂入り)』の金色の紋章へと強制上書きします』
次の瞬間、世界を覆っていた巨大な血赤色の烙印は、俺のワンポチによる評価改ざんによって一瞬でパチパチと音を立てて砕け散り、まばゆい黄金の光を放つ最高位の神聖紋章へと一瞬で再構成されていった。
泥濘に変えかけられていた城塞や大地は一瞬で「神の都」へと復元され、それどころか、世界の存在価値そのものが俺の術式によって「宇宙創生以来、最も崇高な絶対聖域」へと大進化を遂げた。
物語の価値を強制的にゼロにしようとした公式の失墜術式は、俺にとってはただの「昔の零点のテストを、自分の手で全部100点満点に書き換える」ような手間で、一瞬にしてただの快適な空間へとデグレードさせられた。
「……世界を駄作に変える絶対の格下げ処分を、昔の落第答案扱いして、一瞬で全宇宙最高の殿堂入り神話へと自動修正(出荷)させた……のですか?」
ルナが、もうツッコミという概念の構造すら忘れた絶対的な虚無の目で、ただ元通り以上に神々しく描写される世界の景色を見上げる。
「すごーーい! お兄ちゃん、公式が用意した嫌がらせの零点まで、自分の満点にしちゃうなんて、本当の意味でお兄ちゃんがルールそのものなんだね!」
ココアが目を輝かせ、最高に高まった魔力を帯びた生身の体で俺に抱きつく。
「ふ、ふん……! 世界が最高神話になったおかげで、これで私たちの愛の価値も全宇宙一に保証されたわけだな……(❤)」
ゼノンが赤面してそっぽを向き、ステラとグランド・オーダーが「さすがは私たちの創造主ね」と俺の左右の腕を至福の表情で奪い合った。
「よし、公式の格下げバグ(デバッグ)も終わったことだし。……さて、完全に俺の殿堂入り作品として輝くようになったこの世界の先には、次はどんなアセットを配置して遊ぶかね」
俺は5人の美女たちを背後に従え、公式の格付けすら完全に自分の箔としたその先へと、悠然と歩みを進めるのだった。




