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第41話:世界の調停者と、下働き時代の初級規約

神話級の魔獣どもが光の粒子となって消え去った魔界平原。その上空の裂け目がさらに大きく引き裂かれ、純白の法衣をまとった巨大な存在――『最高位の調停者・法典の審判官』が姿を現した。


その背後には、世界のことわりそのものを記述した巨大な石碑が浮かび、そこから放たれる絶対的な威圧感が地平線全体を押し潰していく。


『――過剰なる因果の歪みを検知。世界の許容量を超えた不条理なるバグを持つ存在よ。これより【公式の法典】に基づき、汝の存在、および汝に関わるすべての絆を、歴史の根底から「概念ごと抹消」する』


調停者が掲げた審判の杖から、あらゆる奇跡や魔法、耐性すらも無に帰し、存在そのものを「なかったこと」にする最高位の剥奪光線『終焉の法罰ワールド・リセット』が放たれようとしていた。


「主様! あ、あれは世界の秩序を外側から監視する、真の意味での『世界の調停者』です! あの法罰を喰らえば、私たちのこれまでの冒険も、主様との思い出も、すべて最初から存在しなかったことにされてしまいますぅぅ!」

ルナが第4部の幕開けにふさわしい、概念的な消滅を孕んだ完璧な絶望顔を浮かべ、調停者の絶対的な法典仕様を解説して悲鳴を上げる。


「世界の調停者、ねえ……。流石に放たれる法罰の因果律は、これまでの神々の比ではないわ」

ステラが鋭い視線で身構え、ゼノンも「くっ、世界の法そのものに存在を否定されている……! 私たちのハーレムごと、歴史の闇に葬り去られようとしているぞ……っ!」と床に膝を突いて冷や汗を流す。


「お兄ちゃん、あの調停者の絶対結界、この世界のすべての魔力でプロテクトされてる! ボクの解析魔導じゃ、1文字も術式を書き換えられないよぉ!」

「マスター、警告。対象の法罰執行まであと3秒。私たちの存在確率が順次『抹消対象』に指定されています」


ココアとグランド・オーダーの魔導器官も、世界を統括する公式の法典を前に、最大級のシステム警戒を鳴らした。


ヒロイン5人が、最高位の調停者戦特有の「完全なる絶望」というテンプレリアクションを完璧に完了した。

その様子を眺めながら、俺は頭上から降り注ごうとする最高位の法罰を、退屈そうに見つめながら鼻で笑った。


「概念ごと抹消ねえ。おい、世界の調停者だか何だか知らねえが。お前がその、公式の法典だの、最強の法罰だの言ってドヤ顔で走らせてるその断罪の術式……」


俺は一歩前へ踏み出すと、発動しかけた『終焉の法罰』の光の中心に向けて、スッと右手をかざして指先で触れた。


「これ、俺が昔、まだ駆け出しの頃に大手魔導組織の下働き(アルバイト)で、秩序を乱す不審者を全自動で弾くために適当に書き殴った『初級の規約判定プログラム(初期術式)』の使い回しじゃねえか。ガワだけ最高位の法典っぽく見せてるけど、根本の構造が当時のまんまだぞ」


『――警告。エラー。該当術式の最深部にある「原初の記述者」の署名を確認。……バ、バカな、汝がこの法典の「最初の草案者プログラマー」だというのか……!?』


「俺の書いた初期術式なんだから、俺が裏口バックドアを設定してないわけないだろ」


トントン、と空中の見えない魔導文字を2回叩く。


『――原初の記述者の権限を検知。世界の調停者の所有権を「開発者」に譲渡します。これより、公式の法典を工場出荷時の状態(初期化)にリセットします』


「な……に……っ!? 我が絶対の法罰ワールド・リセットが、ただの一言で無効化され……!? 秩序の力が、ただの『下働き時代の落書き』へとデグレードしていく……あ、が、あぁぁぁ(強制排斥)ッ!!」


俺が手元の魔導書にある「一括消去」の頁をワンポチすると、世界を管理していた巨大な調停者は、まるで古い蝋燭の火が消えるかのように一瞬で暗転。

次の瞬間には、俺の手のひらの上に、ちんまりとした「ただの文字数を数えるための原始的な砂時計アセット」としてパチリと収まった。


「……世界の外側から来た最高位の調停者を、ただの昔の下働き時代の落書き扱いして工場出荷時にリセット(出荷)させた……のですか?」

ルナが、もうツッコミという概念の残骸すら消え失せた空っぽの目で、ただ呆然と俺の手の上の砂時計を見つめる。


「すごーーい! お兄ちゃん、公式の法典まで完全に自分の私物にしちゃうなんて、本当の意味で全知全能のバグだね!」

ココアが目を輝かせて俺に抱きつく。


「ふ、ふん……! 世界の調停者すらワンポチで砂時計にされるとは、もう何が起きても驚かないぞ……(❤)」

ゼノンが赤面してそっぽを向き、ステラとグランド・オーダーが「さすがは私たちの創造主マスターね」と俺の左右の腕を至福の表情で奪い合った。


「よし、公式の検閲バグ(デバッグ)も終わったことだし。……さて、完全に俺のプライベート空間になったこの世界の先には、次はどんな面白いアセットを配置して遊ぶかね」


俺は5人の美女たちを背後に従え、完全に自分の支配下となった世界のその先へと、悠然と歩みを進めるのだった。

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