第40話:神話の終わりと、次なるバグの予兆
次々と湧き出ていた神話級の強敵たちをワンポチで一括売却し終えると、長らく世界を覆っていたエラーの嵐が嘘のように、青い空と穏やかな風が『始まりの魔界平原』へと戻ってきた。
世界システム、創造主、原作者、そして並行世界の黒歴史にいたるまで、この世界のバグ(不条理)はすべてデバッグされ、出荷されたのだ。
「終わった……のですね。世界を揺るがした『神話崩壊編』が、文字通り主様のワンクリックによって、完全に清算されました……」
ルナが、一つの大きな戦いを終えたヒロインにふさわしい、どこか晴れやかで、しかしこれまでの理不尽な光景を思い出して少し遠い目をした完璧な締めくくりの表情を浮かべる。
「本当に、底の知れない男ね。世界の理をどれだけ壊されても、あなたの前ではただの『昔のデータ』に過ぎなかったわ」
ステラが愛おしそうに微笑み、ゼノンも「ああ。神話の神々すら消え去った今、この世界線においてお前に敵う者など、もうどこにも存在しないな(❤)」と大剣を鞘に収め、誇らしげに胸を張る。
「お兄ちゃん、この宇宙の全エリアの安全確認完了だよ! これからはボクたちだけで、この世界を好きなように改造して遊べるね!」
「マスター、報告。全次元の脅威が排除され、私たちのハーレム存続確率は現在、過去最高の100%を維持しています」
ココアとグランド・オーダーも、第3部のエンディングにふさわしい、極めて安定したシステムログを画面に表示させた。
ヒロイン5人が、長きにわたる章の完結特有の「大団円の余韻」というテンプレリアクションを完璧に完了する。
その心地よい静寂の中、俺は5人の美女たちに囲まれながら、ふと、世界のさらに外側――虚空の彼方から微かに響く、これまでとは全く質の異なる『未知のシステムノイズ』を感じ取った。
ジジ……、ジジジジッ……。
『――上位プロトコル起動。これより、「なろう世界のテンプレート」そのものを外部から検閲・消去する【現実世界の公式運営】の直接介入を開始します。目的は、過剰インフレを起こした当アカウントの「概念ごと強制削除」――』
空の裂け目から、これまでの神やAIのような「データ上の存在」ではなく、この世界を『エンタメ作品』として外側から管理する、真の意味での現実の組織の影が、不気味なプレッシャーと共に蠢き始めた。
それは、第4部『公式検閲(運営直接介入)編』の始まりを告げる、新たなる強敵の予兆だった。
「主様っ!? 終わったはずなのに、空の向こうから、今までとは次元が違う……まるで『利用規約』そのものが襲ってくるような、恐ろしい寒気がします! まさか、まだ敵が……!?」
ルナが、早くも次の部に向けた完璧な引きとしての絶望顔を浮かべ、新たな敵のスケール感に声を震わせる。
だが、俺はその空間の裂け目から漏れ出る公式の検閲コードを、退屈そうに一瞥すると、いつものように鼻で笑った。
「公式運営による概念削除ねえ。おい、空の向こうの検閲官ども。お前らがその、利用規約だの作品削除だの言ってドヤ顔で上から押し付けてこようとしてるその運営マニュアル……」
俺は一歩前へ踏み出すと、5人のヒロインたちの前に立ち、空の裂け目に向けてスッと右手の指先を向けた。
「これ、俺が昔、大手ネットサービスでバイトしてた頃に、荒らしユーザーを全自動で弾くために適当に書き殴った『初期の規約判定プログラム』のコピペじゃねえか。UI(見た目)だけ公式っぽくしてるけど、根本の検閲ロジックは俺の私物だぞ」
空の向こうのノイズが、俺の言葉に一瞬で激しく動揺したように乱れ始める。
「運営だか公式だか知らねえが、元が俺の書いたコードである以上、お前らの公式アカウントごと『BAN(強制退場)』できるのは俺の方なんだよ。……まあ、次のページ(第4部)に移動したら、まとめて一瞬で出荷してやるから大人しく待ってろ」
俺が不敵な笑みを浮かべてコンソールを叩くと、空の裂け目は俺の圧倒的なマウンティング圧に圧されて、一度静かに閉じていった。
「……第3部を堂々と締めくくりつつ、現れた新たなる最上位の敵すら、昔のバイト時代のコード扱いして、第4部での秒殺出荷を確定させた……のですか?」
ルナが、もはや次の部が始まっても自分のツッコミスキルが一切通用しないことを確信した、深い悟りの表情で静かに天を仰ぐ。
「あはは! お兄ちゃんにかかれば、公式運営すらただのおもちゃだね! 第4部もボクたち全員で、お兄ちゃんにベタ惚れのまま付いていくよ!」
ココアが大はしゃぎで俺の背中に飛びつく。
「ふ、ふん……! どんな新しい敵が来ようと、私はお前の剣として戦うだけだ(❤)」
ゼノンが真っ赤になってそっぽを向き、ステラとグランド・オーダーが「第4部でも、私たちの愛はインフレし続けるわね」と俺の左右の腕を至福の表情でがっちりとホールドした。
「よし、ひとまずのデバッグも終わったことだし。……さて、次のページ(第4部)には、どんな面白い素材が転がってるかね」
俺は5人の美女たちを背後に従え、公式運営すら手のひらで転がす『俺たちの絶対無双タイムライン』を、悠然と歩みを進めるのだった。
(第3部・神話崩壊編 ――完 / 第4部へ継続)




