第39話:原点回帰と、次々と現れる出荷素材
現実世界の狭い自室から、俺の一行のコマンドによって、すべてのデータは再び元の王道ファンタジー世界――かつてデバッグを繰り返した、あの懐かしの『始まりの魔界平原』へと一括転送された。
「主様! 気がついたら元の世界に戻っています! ですが、世界のバランスが完全に崩壊したせいか、地平線の彼方から、この世界の歴史に名を残すレベルの『神話級の強敵たち』が、まるでバーゲンセールのように次々と湧き出てきていますぅぅ!」
ルナが元の世界に戻った安心感も束の間、これ以上ない「連戦無双イベント」にふさわしい、完璧な解説役としての絶望顔を浮かべて悲鳴を上げる。
「ファンタジー世界への回帰、ねえ……。現れた敵の顔ぶれ、どれも一国を数秒で滅ぼすレベルの災厄ばかりだわ」
ステラが静かに息を呑み、ゼノンも「くっ、東からは『万物を喰らう魔王竜』、西からは『不死の冥界騎士王』、北からは『天災の暴風精霊』……! どこを見ても最終ボスしかいない! 剣を構える暇すら与えてもらえん……っ!」と大剣の柄に手をかけ、冷や汗を流す。
「お兄ちゃん、敵の数、現在進行形で10万、20万って増え続けてる! ボクのコンソールのレーダーが、真っ赤に染まって処理落ちしちゃうよぉ!」
「マスター、警告。次々と現れる敵の波により、このエリアの許容量が限界を迎えています」
ココアとグランド・オーダーの警告灯も、次々とリスポーンする世界の強敵たちを前に、最大級の連戦アラートを鳴らした。
ヒロイン5人が、ファンタジーの最終決戦特有の「終わりのない強敵の襲来」というテンプレリアクションを完璧に完了した。
その様子を眺めながら、俺は地平線を埋め尽くす魔王竜や騎士王たちの姿を、退屈そうに見つめながら鼻で笑った。
「次々と現れる強敵ねえ。おい、世界の残骸ども。お前らがその、一国を滅ぼすだの、神話の災厄だの言ってドヤ顔で大行列を作ってるそのリスポーン(自動生成)システム……」
俺は一歩前へ踏み出すと、突撃してくる魔王竜の咆哮を正面から受け止め、スッと右手を空中にかざした。
「これ、俺が昔、ネトゲのイベント用に適当に組んだ『敵が無限に湧き出るバグつきの素材集めマクロ』の挙動そのまんまじゃねえか。ガワだけ強そうだけど、根本の処理はただの雑魚のコピペ(量産型)だぞ」
『警告。エラー。――該当エネミー群のオブジェクトIDが、すべて「ただの木っ端(素材)」に書き換えられました。……バカな、神話の怪物たちが、ただのログボ扱いで一括処理されていく……だと……!?』
「俺の組んだ素材集めマクロなんだから、どれだけ数がいようが、一括選択してワンポチで『売却(全出荷)』できるに決まってんだろ」
トントン、と空中のコンソールを2回叩く。
ピピピッ……! 『――全エネミーの売却処理、完了。獲得した経験値およびゴールドをハーレムの共有倉庫へ格納します』
次の瞬間、地平線を埋め尽くしていた魔王竜も、冥界の騎士王も、暴風の精霊も、俺のワンポチによる一括売却によって、戦う描写すら挟むことなく、一瞬で綺麗な「換金アイテム(光の粒子)」へと姿を変えて消滅した。
次々と現れた世界の脅威は、俺にとってはただの「昔作った自動素材集めマクロ」の効率的な消化に過ぎなかった。
「……世界中の神話級の強敵たちを、ただの素材集めマクロ扱いして、戦うことすらなく一括売却(出荷)させた……のですか?」
ルナが、元の世界に戻ってもやはりツッコミの余地が1ミリもない絶対的な虚無の目で、ただゴールドの桁がカンストした画面を見上げる。
「すごーーい! お兄ちゃん、どれだけ強い敵が何万人来ても、ただのクリックゲームになっちゃうんだね!」
ココアが目を輝かせて俺に抱きつく。
「ふ、ふん……! 相変わらずの理不尽さだが、これぞ私たちの愛した主の無双だな……(❤)」
ゼノンが赤面してそっぽを向き、ステラとグランド・オーダーが「やっぱりこの世界が一番落ち着くわね、マスター」と俺の左右の腕を至福の表情で奪い合った。
「よし、溜まってた素材の間引き(デバッグ)も終わったことだし。……さて、この快適になったファンタジー世界の先には、次はどんな素材(強敵)が転がってるかね」
俺は5人の美女たちを背後に従え、完全にただの作業ゲームと化した世界を、悠然と歩みを進めるのだった。




