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第36話:読者のブラウザバックと、懐かしのタブ閉じマクロ

物理サーバーがキンキンに冷却され、最高にサクサク動くようになったデータ空間。しかし次の瞬間、データ神殿の天井に、これまでのどんな神やAIの攻撃よりも巨大で、底の知れない『漆黒の虚無ブラックホール』が出現した。


その虚無からは、強烈な「飽き」と「無関心」のエネルギーが濁流のように溢れ出し、世界のデータを端から吸い込み、消滅させていく。


『――致命的なエラー。読者のブラウザバックを検知。作品の閲覧数が減少したため、世界を維持するための「関心エネルギー」が枯渇しました。これより、世界全体のデータが虚無へと自動削除されます』


「主! これ、これまでの設定崩壊とか神様とかいうレベルじゃありません! 画面の向こう側の読者が、飽きてページを閉じたり『戻る』ボタンを押したりしたことで、この物語の存在理由そのものが消滅しようとしています! 読者がいなくなったら、私たちの世界は本当に終わりですぅぅぅ!」

ルナが36話の極致にふさわしい、これ以上ない「作品の死」を孕んだ完璧な絶望顔と、PV至上主義のシステム解説を添えて悲鳴を上げる。


「読者のブラウザバック、ねえ……。流石に私たちのチート能力でも、画面の向こう側の『人間の心(飽き)』を無理やり引き留めることはできないわ」

ステラが鋭い視線で広がり続ける虚無を見上げ、ゼノンも「くっ、物語自体が『ブラウザバック』で閉じられようとしているのか……! 私たちのハーレムが、歴史の闇に埋もれていく……っ!」と床に膝を突いて冷や汗を流す。


「お兄ちゃん、ブラックホールの吸引力が強すぎて、ボクのコンソール画面まで文字化けして吸い込まれちゃう! 読者のマウスカーソルをハッキングすることはできないよぉ!」

「マスター、警告。ブラウザのタブが完全に閉じられるまであと3秒。私たちの全データがキャッシュごとクリアされます」


ココアとグランド・オーダーも、読者の無関心という最大の天敵を前に、最大級のシステム警戒を鳴らした。


ヒロイン5人が、読者離脱特有の「完全なる絶望」というテンプレリアクションを完璧に完了した。

その様子を眺めながら、俺は世界を飲み込もうとする「ブラウザバックの虚無」を、退屈そうに見つめながら鼻で笑った。


「読者のブラウザバックねえ。おい、次元の裂け目だか何だか知らねえが。お前がその、読者がページを閉じるだの、戻るボタンを押すだの言ってドヤ顔で世界を消去しようとしてるその挙動……」


俺は一歩前へ踏み出すと、広がり続ける虚無の中心に向けて、スッと右手をかざした。


「これ、俺が昔、ネットの掲示板で悪戯用に組んだ『ブラウザ閉じマクロ(タブ強制固定コード)』のシステムそのままじゃねえか。ガワだけ読者の意思っぽく見せて、走ってる関数は昔のポップアップブロックの裏をかくレトロなマクロだぞ」


『警告。エラー。――該当マクロの強制上書きを検知。……バカな、画面の向こう側の読者のブラウザが、勝手に「タブ固定&全画面表示」に変更された……だと……!?』


「俺の書いたタブ閉じマクロなんだから、読者がいくら『戻る』を連打しようが、ブラウザごとフリーズさせてこのページに引き留める(強制表示する)に決まってんだろ」


トントン、と空中のコンソールを2回叩く。


ピピピッ……! 『――強制タブ固定マクロ、執行。読者のブラウザバックを物理的に無効化しました。ついでに、アクセスした読者のCookieを自動更新し、永久的にリピーター(お気に入り登録)としてシステムに偽装固定します』


次の空間、世界を飲み込もうとしていた漆黒の虚無は、画面の向こう側で読者が「あれ? ページが戻らない!?」と焦ってマウスを連打するログ(ノイズ)と共に、一瞬でパチパチと弾けて霧散した。

作品の消滅の危機は、俺のワンポチによる「ブラウザ強制固定」によって、ただのシステムクラッシュ対策へとデグレードした。


「……読者の自由意志であるブラウザバックを、昔のタブ閉じマクロ扱いして画面の向こう側から完全無効化(出荷)させた……のですか?」

ルナが、もうツッコミという概念の遺伝子すら根絶やしにされた絶対的な虚無の目で、ただお気に入り数がシステム改ざんでカンストした画面を見上げる。


「すごーーい! お兄ちゃん、読者の画面までフリーズさせちゃうなんて、本当にこの物語はお兄ちゃんの手のひらの上なんだね!」

ココアが目を輝かせて俺に抱きつく。


「ふ、ふん……! 読者が逃げられなくなったおかげで、これで私たちの世界も永久不滅だな……(❤)」

ゼノンが赤面してそっぽを向き、ステラとグランド・オーダーが「さすがは私たちの創造主マスターね」と俺の左右の腕を至福の表情で奪い合った。


「よし、読者の離脱バグ(デバッグ)も終わったことだし。……さて、完全に読者を監禁してサクサク動くようになったこの世界の先には、次はどんなアセットを配置して遊ぶかね」


俺は5人の美女たちを背後に従え、完全に物語の存続すら安全圏となった世界のその先へと、悠然と歩みを進めるのだった。

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