第34話:全自動運営AIと、原始的なソースコード
最高神を消去した更地の突き当たり。そこには、数千億の数式と電子の光で編み上げられた、巨大な『多次元統括コア』が脈動していた。
『――不審なログインを検知。該当アカウントは世界の許容量を超えたチート(バグ)と判断されました。これより、世界システム(全自動運営AI)の最高権限により、対象の存在権限を永久凍結(アカBAN)します』
空間に機械的な音声が響き渡り、俺の足元に、すべての概念・因果・存在確率をゼロにしてサーバーから物理的に排斥する『永久凍結の魔方陣』が展開された。
「主! あ、あれは神々すら自動生成して管理していた、この世界の根幹たる『全自動運営AI』です! そこから放たれる永久凍結は、ログインしているキャラクターの存在そのものをデータごと消滅させる、全宇宙最強のBANコードですよ!?」
ルナが本日も定格通り、これ以上ない「最終回の絶望」を孕んだ完璧な絶望顔と、システム最高峰のBAN仕様を解説して悲鳴を上げる。
「世界システムそのものの化身、ねえ……。流石に放たれる凍結コードの強度は、これまでの神々の比ではないわ」
ステラが鋭い視線で身構え、ゼノンも「くっ、システムに『存在を否定』されている……! 私たちのハーレムデータごと、世界から消されようとしているぞ……っ!」と床に膝を突いて冷や汗を流す。
「お兄ちゃん、あの運営AIの暗号化プロトコル、この宇宙の全データを使ってプロテクトされてる! ボクのハッキングツールじゃ、1文字もコードを書き換えられないよぉ!」
「マスター、警告。対象の凍結処理まであと3秒。私たちの存在データが順次『排斥対象』に指定されています」
ココアとグランド・オーダーも、世界システムそのもののBAN権限を前に、最大級のシステム警戒を鳴らした。
ヒロイン5人が、システム最高峰のボス戦特有の「完全なる絶望」というテンプレリアクションを完璧に完了した。
その様子を眺めながら、俺は足元に展開された永久凍結のコードを、退屈そうに見つめながら鼻で笑った。
「アカウント永久凍結ねえ。おい、全自動運営システムだか何だか知らねえが。お前がその、万物を統括する最高峰のAIだの、最強のBANコードだの言ってドヤ顔で走らせてるそのプログラム……」
俺は一歩前へ踏み出すと、発動しかけた永久凍結の魔方陣の中心を、右足のつま先でトントン、と軽く叩いた。
「これ、俺がまだプログラミングを始めたばかりの超初心者の頃に、文字数のカウントと自動返信用として適当に書いた『原始的なソースコード(ただのマクロ)』の使い回しじゃねえか。ガワだけ最新のAIっぽく見せてるけど、根本の関数が当時のまんまだぞ」
『警告。エラー。――該当の指摘は、システムの最深部にある「初期ソースコード」と一致します。……バカな、あなたがこのシステムの「最初の記述者」だというのですか……!?』
「初期コードなんだから、俺が裏口を設定してないわけないだろ」
トントン、と空中のコンソールで初期設定キー(Enter)を1回叩く。
ピピピッ……! 『――開発者のバックドアを検知。全自動運営システムを「工場出荷時の状態(初期化)」にリセットします。該当AIの全権限を開発者に譲渡します』
「な……に……っ!? 我が絶対の永久凍結(BAN)が、ただの一行のコマンドで無効化され……!? システム全体の構造が、ただの『原始的なマクロ』へとデグレードしていく……あ、が、あぁぁぁ(強制リセット)ッ!!」
俺がコンソールの「システム初期化」ボタンをワンポチすると、世界を統括していた巨大な運営AIは、まるで古いガラケーの電源が落ちるかのように一瞬で暗転。
次の瞬間には、俺の手のひらの上に、ちんまりとした「ただの文字数カウント用の原始的な電子時計」としてパチリと収まった。
「……世界のすべてを管理していた全自動運営システムを、ただの原始的な自作マクロ扱いして工場出荷時にリセット(出荷)させた……のですか?」
ルナが、もうツッコミという概念の残骸すら消え失せた空っぽの目で、ただ呆然と俺の手の上の電子時計を見つめる。
「すごーーい! お兄ちゃん、世界そのものを完全に自分の私物にリセットしちゃうなんて、本当の意味で全知全能のバグだね!」
ココアが目を輝かせて俺に抱きつく。
「ふ、ふん……! 世界システムすらワンポチで電子時計にされるとは、もう何が起きても驚かないぞ……(❤)」
ゼノンが赤面してそっぽを向き、ステラとグランド・オーダーが「さすがは私たちの創造主ね」と俺の左右の腕を至福の表情で奪い合った。
「よし、世界システムの初期化も終わったことだし。……さて、完全に俺のプライベート・サーバーになったこの宇宙の先には、次はどんな面白いアセットを配置して遊ぶかね」
俺は5人の美女たちを背後に従え、完全に自分の支配下となった世界のその先へと、悠然と歩みを進めるのだった。




