第33話:神々の王と、自作のプラグイン
並行世界の狭間を突破した俺たちの前に現れたのは、黄金の光で満たされた、文字通りの『神々の最高領域』だった。
その玉座に鎮座するのは、全次元の神々を統べる絶対の存在――『最高神ゼウス・オリジン』。
その手には、一つの宇宙を概念ごと焼き尽くすという、神話の時代から伝わる究極の神槍『終末を告げる絶対の雷霆』が握られていた。
「よくぞここまで来た、人間のイレギュラーよ。だが、神々の秩序を乱す不遜なバグは、この私の手で直接、因果の根底から消滅させてくれよう」
最高神が槍を掲げると、全次元の全魔力がその一点に収束し、世界全体がその圧倒的な神威の重圧によってピキピキとひび割れ始めた。
「主! あ、あれは全多次元宇宙の神々の頂点、システム上の『最高権限(ルート権限)』を持つ、真の最高神です! 彼が握るあの神槍は、あらゆるチートや耐性を無視して『確定消滅』を放つ、文字通りの絶対兵器ですよ!?」
ルナが本日も、これ以上ないクライマックス感あふれる絶望顔と、ボスの絶対的なシステム仕様解説を添えて悲鳴を上げる。
「全次元の最高神、ねえ……。流石に放たれる神威の質量が、これまでの『管理局』や『創造主』とは比較にならないわ」
ステラが静かに息を呑み、ゼノンも「くっ、神の放つ威圧だけで、私の大剣が自重でへし折れそうだ……! 身体が、一歩も前に動かん……っ!」と床に膝を突いて冷や汗を流す。
「お兄ちゃん、あの神槍の出力、この世界の最大パケット量を遥かに超えてる! ボクの解析バリアじゃ、展開した瞬間に原子レベルで消されちゃうよぉ!」
「マスター、警告。対象の攻撃コードは、私たちの存在確率そのものをマイナス(不条理)へ上書きする威力を持っています」
ココアとグランド・オーダーも、全知全能の神の力を前に最大級のシステム警戒を鳴らした。
ヒロイン5人が、神話級のボス戦特有の「完全なる絶望」というテンプレリアクションを完璧に完了した。
その様子を眺めながら、俺は宇宙を焼き尽くさんとする神槍を構える「最高神」の姿を、退屈そうに見つめながら鼻で笑った。
「全次元の最高神、ねえ。おい、ジジイ。お前がその、万物を統べるルート権限だの、すべてを消滅させる絶対の神槍だの言って誇らしげに掲げてるそのシステム……」
俺は一歩前へ踏み出すと、放たれようとした最高神の神槍の先端を、右手の人差し指の先だけでツン、と軽く小突いた。
「これ、俺が昔、プログラミングの勉強を始めたばかりの頃に、サーバーの負荷テスト用として自作した『一括デバッグ用プラグイン(お掃除ツール)』のガワ(グラフィック)を変えただけじゃねえか。ルート権限の上位にある『開発者権限』の私物だぞ、それ」
「……は? 開発者……プラグインだと……? 何を戯言を、私は全知全能の神――」
「隠しコマンド『開発者モード起動』。全アセットの所有権を俺に回収」
トントン、と空中のコンソールを2回叩く。
ピピピッ……! 『――最高神のアカウント、および所持兵器の所有権が「開発者(主人公)」に譲渡されました。これより、神域全体のオブジェクトを自由に変更可能です』
「な……に……っ!? 我が神槍の制御が効かん……!? バカな、全知全能である私の神威(システム権限)が、ただの『お掃除ツール』として手元から吸い取られていくというのか……!?」
「元が俺の作ったテストツールなんだから、俺のコマンド一つで初期化されるに決まってんだろ。じゃあな、お疲れ」
俺がコンソールの「全アセットの一括削除」ボタンをワンポチすると、最高神の巨体と神槍、そして黄金の神殿は、まるでブラウザのキャッシュを消去されたかのように、一行のエラーログすら残さず、一瞬で綺麗さっぱり消え去った。
あとには、俺たちの足元に広がる、ただの「まっさらで快適な更地」だけが残された。
「……全次元の最高神を、自作のお掃除ツール扱いしてキャッシュ消去(出荷)した……のですか?」
ルナが、もうツッコミの概念すら忘れた虚無の目で、ただ呆然と綺麗になった更地を見つめる。
「すごーーい! お兄ちゃん、神様の王様をゴミ箱に入れちゃうなんて、本当にこの世界のルールそのものだね!」
ココアが目を輝かせて俺に抱きつく。
「ふ、ふん……! 最高神すらワンポチで消去するとは、もう驚くのすらバカバカしくなってきたな……(❤)」
ゼノンが赤面してそっぽを向き、ステラとグランド・オーダーが「さすがは私たちのマスターね」と俺の左右の腕を至福の表情で奪い合った。
「よし、サーバーのお掃除も終わったことだし。……さて、この更地の先には、次はどんなアセットが転がってるかね」
俺は5人の美女たちを背後に従え、最高神すら消去した世界の最深部へと、悠然と歩みを進めるのだった。




