第31話:強制デスゲームと、ガラケー時代の心理テスト
原作者を全選択デリートしたことで物語の枠組み(プロット)が消滅したため、世界は自由なデータ空間と化していた。しかし、そこに新たなプログラムが自動生成される。
ズゥゥゥゥン……! と空間が歪み、不気味なピエロの仮面を被った男が現れた。
「ヒャッハハハ! 待たせたな! 貴様らには今から『生存確率0.0001%の絶望のデスゲーム』に参加してもらう! 配られた能力で生き残らねば、即座に心臓が爆発する首輪を嵌めてやったぞ!」
ピエロが指を鳴らすと、ルナたちの首には冷たい金属の感触が走り、黒い首輪が装着された。
「ひっ!? 首輪が……勝手にカウントダウンを始めています! これ、もしゲームに負けたら本当に死んじゃうよぉ!」
ルナが恐怖に引きつった表情で絶叫する。
「なんて卑劣な……。この首輪、私の防衛プログラムでも解除できないわ。概念的にも呪術的にも、完全に『ゲーム』として固定されている……!」
グランド・オーダーが焦りの表情を見せる。
「くっ、デスゲームか。だが、ゲームのルールさえ分かれば攻略の道はあるはず……!」
ゼノンが剣を構えるが、首輪のカウントダウンは非情にも5分を切っていた。
ヒロイン5人が、デスゲーム特有の「強制参加・時間制限・絶対絶望」というテンプレを完璧に演じ終える。
その様子を眺めながら、俺は首輪の接続ログを視界の端で確認し、呆れたように溜め息を吐いた。
「デスゲームねえ。……おい、仮面野郎。お前が配ったその『謎の能力』の割り振りシステム、なんか見覚えがあると思ったら」
俺はピエロに近づき、その首輪のシステムを軽く指で弾いた。
「これ、俺がまだ中学生だった頃、ガラケーの掲示板で暇つぶしに作った『今日の運勢が出る心理テスト』の使い回しじゃねえか。しかも、バグで全員『大吉(最強)』が出るように調整してた奴だぞ」
「は……? バグだと? な、何を寝言を言っている! これは全宇宙の苦痛をエネルギーに変える至高のゲームシステムだぞ!」
「いいや、これは俺の黒歴史だ」
俺はピエロの問いを無視してコンソールを開き、即座に全権限を奪取した。
「隠しコマンド『全プレイヤー・ステータス解放』。書き換え実行」
ピピピッ……! 『――全プレイヤーの全ステータスを、整数値の限界値まで引き上げました。また、首輪の爆破プログラムを「花火演出(おめでとう!)」へ変更しました』
次の瞬間、ルナたちの首輪から、死のカウントダウンの代わりに「パァァァン!」という景気のいいクラッカーの音が鳴り響いた。
「えっ……? 私、今、全次元の魔力を一括で操れる……? 何これ、神様より強い力が……?」
ステラが掌を見て驚愕する。
「お兄ちゃん、これなら敵を倒すまでもなく、指を鳴らすだけでこのデスゲーム場ごと消し飛ばせるよ!」
ココアが余裕の笑みを浮かべる。
「あ……ら……? 爆発するはずの首輪が、ただのオシャレなチョーカーに書き換わってる……(❤)」
ゼノンが赤面し、ルナは「これでゲームマスター(ピエロ)を、逆にボコボコにできるってことですか!?」と満面の笑みでピエロを追い詰める。
「な、なんだと……!? デスゲームが……観光ツアー……いや、ただの無双ゲームに書き換わっただと……!?」
「ルール通り、『生き残る』って条件は達成したな。全員最強になったし、あとはお前がこの無敵のプレイヤーどもにボコられるだけの『おまけイベント』だ。……じゃあな」
俺がピエロの仮面を剥がすと、その下にはシステムの残滓がいただけだった。
強化されたヒロインたちが嬉々としてピエロを追い回し始める中、俺は静かに次のエリア(階層)へと歩を進めた。




