第26話:全次元管理局と、立ち入り禁止のデコピン
外宇宙の支配者『終焉王』を消滅させ、ひとまずの平穏が訪れた次元の狭間。
俺はルナ、ステラ、ゼノン、ココアの4人に囲まれながら、「次はどこのサーバー(世界)に行くか」などと、のんびり話し合っていた。
だが、その平穏は、突如として空間を引き裂いて現れた『黄金の巨大光体』によって破られる。
バリバリバリィィィィィン……ッ!!!
空間がハチの巣のように割れ、そこから姿を現したのは、神界の神殿や外宇宙の要塞すら比較にならない、全長数十キロメートルに及ぶ白金に輝く超巨大艦――時空超越戦艦『エクス・マキナ』だった。
さらにその甲板から、幾重もの光輪を背負った、厳かな白い法衣に身を包む男女が数名、傲然とした態度で見下ろしてきた。
「全次元の因果を乱すバグ分子よ、そこまでだ! 我らはあらゆる並行世界と多次元宇宙を統括する『全次元管理局』の最高幹部、時空審判官である!」
リーダー格の男が、全宇宙に響き渡るような声で宣告する。
「お前は世界の階層秩序を破壊しすぎた。これ以上の暴挙は看過できん。この、全次元に一隻しか存在しない究極の超時空抹消兵器によって、お前の存在を因果律ごと――」
「主、あれはダメです! 全次元管理局なんて、神話の時代にすら都市伝説とされていた、世界の本当のトップ組織ですよ……!?」
ルナがプロの解説役として、本日も完璧な絶望顔を見せる。
「まさか、あの管理局が直接動くなんてね……。流石に次元のスケールが違いすぎるわ」
ステラが身構え、ゼノンも「あの戦艦から放たれるプレッシャー……近づくだけで魂が消滅しそうだぞ……っ!」と息を呑む。
「お兄ちゃん、あの戦艦の動力源、多次元宇宙のエネルギーをそのまま絞り出してる! ボクたちの技術じゃ、かすり傷一つつけられないよ!」
ココアもゴーグルをガタガタと震わせた。
ヒロインたちが新章の圧倒的な敵に戦慄する中、俺はただ一人、その白金の超巨大戦艦を退屈そうに見上げ、ぽつりと呟いた。
「おい、お前ら」
「ふん、命乞いなら今のうちに――」
「そこ、俺たちの散歩コースだから、駐停車禁止(立ち入り禁止)なんだけど」
俺は一歩前へ踏み出すと、数十キロメートル先にある時空超越戦艦の先端に向けて、軽く右手の指を曲げた。
――パチン。
本日一発目の、ただのデコピン。
だが、指先から放たれたのは、次元の壁そのものを歪ませて圧縮する、質量と因果の超暴走だった。
ドゴォォォォォォォォォン……ッ!!!!!
「な……がはあぁぁぁぁぁぁッ!?」
全次元に一隻しかないはずの、因果律すら無効化する究極の時空超越戦艦『エクス・マキナ』は、俺のデコピンの風圧(衝撃波)が触れた瞬間、まるで「水に浸した10円ハゲの豆腐」のようにグシャリと真ん中からへし折れ、光の塵となって大爆発を起こした。
動力源だった多次元エネルギーは暴走することすら許されず、俺のデコピンの慣性に押し潰されて、ただの綺麗な花火のように宇宙の彼方へ消え去っていった。
「ひ、ヒエッ……あ、あわわわわ……っ!?」
甲板から放り出され、バリアも消えて虚空に放り出された最高幹部(時空審判官)たちは、ついさっきまでの厳かな態度を完全に忘れて、全員がガタガタと歯を鳴らして震え出した。
世界を統括するトップエリートたちが、一瞬にしてただの「命乞いすら忘れた哀れなモブ」に成り下がっている。
「さて……戦艦は壊しちまったけど。管理局の本部とやらは、どっちの方角にあるんだ?」
俺が拳を軽くポキポキと鳴らしながら微笑むと、幹部たちは顔を真っ青にして「あ、あちらですぅぅぅ!」と、一斉に涙目で同じ方向を指差すのだった。
「主……新章に入って、敵のスケールが神から全次元になったのに、ワンポチで終わる速度が上がってませんか……?」
ルナのツッコミ(呆れ)をBGMに、第3部『神話崩壊編』のコンベアは、本日も狂いなく最高速度で回転を始めるのだった。




