第25話:自爆のカウントダウンと、マイナスの世界
「おのれ、おのれぇぇぇ……! 盾のみならず、我が誇りまでをもゴミクズで踏みにじるとは……!」
床に這いつくばった終焉王が、狂気に満ちた目で俺を睨みつける。
その胸の奥で、禍々しい漆黒のコアが、激しい明滅とともに異常なまでのエネルギーを放出し始めた。
「ならば、この宇宙ごと消えてなくなれ! 我が命を糧に、すべての因果を反転させて爆発する『全次元崩壊コード(宇宙消滅のカウントダウン)』を起動した! あと十秒で、お前たちも、この世界も、すべて塵すら残さず消滅するのだ! ハハハ、ハーーーハハハ!!」
空間が激しく歪み、終わりを告げる警告音が次元の狭間に鳴り響く。
「な、何ですかこのエネルギーは!? 世界のシステム自体が消去されようとしています!」
ルナが悲鳴を上げ、ゼノンも「くっ、私の剣では概念の暴走を止められん……!」と大剣を握りしめて震える。
「あらあら……流石にこれは私も防ぎきれないわね」
「お兄ちゃん! このコード、外宇宙の基礎言語が暴走させられてる! ボクの演算速度じゃ、解除にあと一万年はかかるよぉ!」
ステラとココアすらも、迫る世界の終焉を前に絶望の色を隠せない。
『カウントダウン、開始。――10、9、8……』
全宇宙の破滅まで、残り数秒。
しかし、俺はその暴走するコアのコード配列を、欠伸を噛み殺しながら一瞥した。
「全次元崩壊コードねえ……。おい終焉王、お前がドヤ顔で使ってるその外宇宙の基礎言語、よく見たら俺が昔、暇つぶしにネットに放流した『フリー素材のゴミ暗号』がベースになってるぞ?」
「……は?」
『5、4、3……』
「つまり、俺の作ったシステム(コード)の上で、お前はおままごとをしてるだけだ」
俺は右手を伸ばし、空中に現れた文字の羅列に向けて、人差し指でトントン、と軽くキーボードを叩くように触れた。
――『管理者権限・システム改変』。
『カウントダウン――2、1……エラー。数値を再設定します。――マイナス10、マイナス100、マイナス無限大……』
「な……に……っ!? カウントダウンが……戻っていく……!? バカな、我が命を賭した絶対の自爆プログラムが、指先一つで書き換えられたというのか……!?」
「マイナスまで引き下げておいたから、お前の存在だけが逆流して消滅する仕様に変えといたぞ。じゃあな、お疲れ」
「そんな……あり得ぬ……! 我は外宇宙の支配者……世界の、王、なのだ……あ、が、あぁぁぁぁぁッ!!」
終焉王の叫びは、自らが放ったはずの次元エネルギーの逆流によって完全に掻き消された。
爆発の衝撃波すら起こらず、彼の肉体と魂は、ただの「デバッグされたバグデータ」のように、シュン……と無音のまま世界の理から完全に消去されたのだった。
「……終わった、のですか?」
ルナが呆然と呟く。
「ええ。あの圧倒的な爆発のエネルギーが、綺麗にマイナスの彼方へ消え去ってしまったわ……」
ステラが感嘆の息を漏らし、ゼノンは「神界の王のみならず、外宇宙の支配者まで指先一つ……。私はとんでもない男についてきてしまったな」と顔を紅潮させて俺を見つめる。
「お兄ちゃん、やっぱり神様なんかよりずっとすごいよ! ボク、一生お兄ちゃんのコードを研究する!」
ココアが嬉しそうに俺の腕に抱きついた。
「よし、邪魔者はいなくなったな。……さて、次はどこの世界を散歩しに行くか」
俺は4人の美女たちを背後に従え、新たな次元の扉を開くべく、悠然と歩みを進めるのだった――。
(第2部・外宇宙侵略編 完)




