第2話:元・聖女のプライドをへし折り、無能な使者を一撃で消し去る
「ひ、ひぃ……っ!?」
俺から放たれる圧倒的な漆黒の魔圧を前に、帝国の使者は完全に腰を抜かしていた。
部屋の床がみしり、と音を立ててひび割れる。
「な、なんだこの魔力は……! お前、ただの金持ちの商人ではないのか……!?」
「言ったはずだ。俺はお前たちに『無能』と罵られ、国を追われた元・宮廷魔術師、ディアスだ」
「デ、ディアス……!? 馬鹿な、あの時の無能が、なぜこんな……!」
使者の顔が恐怖で土気色に変わる。
その横で、床に伏せっていたエルフレデもまた、信じられないというように目を見開いていた。
(嘘……。かつてのディアスは、確かに強かったけれど、これほど禍々しく、底の見えない魔力なんて持っていなかったはず……! この数ヶ月で、一体彼に何があったの……!?)
かつての宿敵が、俺の「成長スピード」と「規格外の強さ」に心底怯え、驚愕している。
この読者の脳髄を刺激する極上のスパイス(驚愕描写)を、さらに畳みかける。
「おい、使者。お前の主である無能な新勇者に伝えておけ。近いうち、俺直々に挨拶に行ってやる、とな」
「く、来るな! 衛兵、衛兵ーーッ!」
使者が狂ったように叫ぶと、廊下から武装した帝国の精鋭衛兵たちが5人、一斉に部屋へ飛び込んできた。
全員がレベル50を超える、常人なら太刀打ちできない手練れだ。
「ディアス、危ない……!」
エルフレデが思わず叫ぶ。かつて戦い合ったからこそ、彼女は帝国の衛兵の強さを知っている。魔力を封じられた今の彼女には、助ける術はない。
だが、俺は一歩も動かない。ただ、パチンと指を一つ鳴らした。
――『極大消滅魔術』。
「え――?」
使者と衛兵たちが、声をあげる暇さえなかった。
次の瞬間、彼らの足元から立ち上った漆黒の光柱が、その身体を、武器を、鎧を、文字通り『一瞬で』塵一つ残さず消滅させたのだ。
後に残ったのは、綺麗にくり抜かれた床の穴だけ。
修行も、詠唱も、事前の準備もいらない。ただ指を鳴らすだけで、国家の精鋭が消える。徹底的な不労所得型の無双だ。
「……あ、ありえない……」
エルフレデがガタガタと 身体を震わせる。
かつてあれほど死闘を繰り広げた宿敵が、今や自分とは次元の違う神のような存在になってしまった現実を、彼女は脳髄に刻み込まれた。
俺はゆっくりと彼女の前に歩み寄り、冷たい目で見下ろした。
「見たか、エルフレデ。これが今の俺の力だ。お前をハメたあの国など、俺にとってはいつでも踏み潰せる虫ケラに過ぎない」
エルフレデは、屈辱と、恐怖と、そして抗えない圧倒的な強者への畏怖で、涙をボロボロとこぼしながら、ついにその頭を床に擦り付けた。
「……私の、負けよ……ディアス。私はもう、あなたの奴隷。どんな命令でも……従います。だから、どうか……」
かつて世界最強と謳われた聖女が、完全に折れた瞬間だった。
「よろしい。では、まずは俺の邸宅へ行くぞ。お前には、俺の身の回りの世話をしてもらう」
俺は彼女の鎖を引き、部屋を後にした。
まずは、自分を裏切った国をじわじわと絶望の底へ叩き落とすための、最初のチェスピースを手に入れたのだ。
(第3話へ続く)




