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第1話:没落した宿敵を、10億ゴルドで買い叩く

まばゆいシャンデリアが照らす、秘密裏の奴隷オークション会場。

世界中の富豪や高位貴族が集まるその最前列の特等席に、俺――ディアスは座っていた。


かつてこの国のために命を捧げ、最後は「無能」の烙印を押されて追放された元・宮廷魔术師。

だが、今の俺は違う。

隠された古代魔術の権能を完全覚醒させ、裏の世界の富と権力を全て手に入れた、絶対的な強者だ。


「さあ、本日の目玉商品の登場です!」


オークショニアの下品な声と共に、ステージ上に重い鉄格子の檻が運び込まれる。

中にいたのは、ボロボロの衣服をまとわされ、魔力を封じる手枷をはめられた一人の女だった。


会場から、下俗な嘲笑とどよめきが沸き起こる。


「おい、まさかあれは……!」

「帝国の誇る、あの最強の聖女エルフレデか!?」

「あの傲慢な女が、まさかこんなところで競り落とされる奴隷に成り下がるとはな!」


エルフレデ。

かつて戦場で俺と互角に渡り合い、互いに憎しみ合い、互いの命を狙い合ってきた、俺の生涯の『宿敵』。


その彼女が、国(帝国)の無能な上層部と新しい勇者にハメられ、力を奪われてここに売られたのだ。

かつての凛とした美しさは影を潜め、プライドをズタズタに引き裂かれた彼女は、絶望に満ちた目で地面を見つめていた。


だが。

ふと、エルフレデの視線が最前列に座る俺と交差した。


「……っ!?」


彼女の紫色の瞳が、驚愕で大きく見開かれる。

声にならない悲鳴が、彼女の唇から漏れた。


(なぜ……なぜ、あなたがここにいるの……ディアス……!?)


かつて自分が追放に追い込んだ(と彼女が思わされている)男が、今や誰もが畏怖するVIP席に君臨している。その圧倒的な現実を前に、彼女の身体が小刻みに震え始めた。


「さあ、入札開始です! スタートは1,000万ゴルドから!」


貴族たちが、ニヤニヤしながら次々と手を挙げる。


「2,000万ゴルドだ!」

「我が家のおもちゃにしてくれる、5,000万!」

「1億ゴルド!」


価格が跳ね上がる。エルフレデは屈辱に唇を噛み締め、血をにじませていた。


俺は、退屈そうに頬杖をついたまま、静かに片手を挙げた。


「10億ゴルド」


俺の声が、会場の喧騒を文字通り「一瞬で」消し去った。


「じゅ、10億……!?」

「バカな、国家予算レベルの金額を、一瞬で……!?」


オークショニアの手から木槌が滑り落ちる。

他の貴族たちは顔を青ざめさせ、一言も発することができない。

圧倒的な財力の暴力。誰も追随することすら許されない、絶対的な格の違い。


「……落札ッ! 10億ゴルドで、ディアス様!」


ステージの上のエルフレデは、信じられないものを見る目で俺を凝視していた。



楽屋裏の引き渡し室。

重い鉄の扉が閉まり、室内には俺と、鎖に繋がれたエルフレデの二人だけになった。


エルフレデは床に膝をついたまま、鋭い眼光で俺を睨みつけてきた。ズタズタになっても、まだその眼光だけは宿敵のままだ。


「……ふん、哀れみのつもり? 買い取って、私に恩でも売る気かしら。そんなことをされるくらいなら、いっそここで殺しなさいよ、ディアス!」


俺は冷笑を浮かべ、彼女の顎をクイと指で持ち上げた。


「勘違いするなよ、エルフレデ」


冷たい声で、彼女の耳元に囁く。


「俺はお前を救ったわけじゃない。ただ、10億ゴルドで『買い叩いた』だけだ。今日からお前は、俺の所有物。俺の命令に逆らう権利などない、ただの奴隷だ」


パチ、と不気味な音が響き、エルフレデの鎖骨のあたりに、絶対的な主従関係を示す『隷属の紋章』が焼き付けられる。


「あ……く、あ……っ!」


彼女の身体から力が抜け、俺の足元に崩れ落ちた。

かつて世界を揺るがした最強の宿敵が、完全に俺の支配下に置かれた瞬間だった。


その時、引き渡し室の扉が乱暴に開いた。

入ってきたのは、エルフレデを追放した国――帝国の使者だった。

使者は俺の正体を知らぬまま、傲慢な態度で言い放った。


「おい、そこの買い手! その女は帝国の元重要人物だ。買い取ったのはいいが、我が国の新しい勇者様のために、今すぐその所有権をこちらに譲渡してもらおうか。もちろん、相応の圧力は覚悟してもらうがな」


絵に描いたような無能のセリフ。

これだから、あの国は終わっているのだ。


俺はエルフレデの髪を優しく、しかし逃がさないように掴んだまま、使者を冷たい目で見据えた。


「今さら戻ってきてくれ、か。無能な奴らめ」


俺の周囲に、部屋全体を押し潰さんばかりの漆黒の魔力が膨れ上がる。使者はそのプレッシャーだけで呼吸を忘れ、ガタガタと震え出した。


「使者、お前の国に持ち帰って伝えておけ」


俺は、極上の笑みを浮かべた。


「『今さら遅い。お前たちをクビにした無能な国ごと、俺の魔術で完全にすり潰してやる』、とな」


(第2話へ続く)

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