◆【引きずられる盗賊】
◎旅路(深夜)
寝ている龍泉。
そこに忍び寄る影。
蒼空「動くな。」
剣を向ける蒼空。
影「うっ・・・。」
龍泉目を覚ます。
龍泉「どうした蒼空?」
蒼空「おそらく盗賊だ。」
龍泉「・・・なんだ盗賊か・・・。」
二度寝する龍泉。
蒼空「よく寝られるな・・・まぁいい。名を名乗れ。」
月光が盗賊と思しき影を照らす。そこには少女の姿があった。
香風「あはは、そんな怖い顔しないでよ。私は香風。見ての通りか弱い少女だよ。旅の道中腹が減ってつい魔が差したんだ。もうしないから勘弁してよ。お願い。」
蒼空「んー・・・。」
難しい顔をしてどうしようか考える蒼空。
その一瞬の隙を見て香風は笑った。思い切り蒼空の剣を蹴り上げて、宙を舞った剣を奪い、蒼空に向けた。
香風「約束通りあんた達から奪うのは今日限りで終わりだ。あんた達は今日ここで・・・死ぬ!グェッ!!」
締めあげられたカエルのような声を出して倒れる香風。その背後には花鈴が立っていた。
花鈴「大丈夫か?」
花鈴は剣を拾って柄の方を蒼空に向けて投げた。それを受け取り蒼空は剣を鞘に納めた。
蒼空「ああ、助かったよ。」
花鈴「まったく・・・なんでこいつは寝てんだよ。オラァ!」
花鈴、龍泉を蹴り上げる。
龍泉「いたっ・・・何すんだよ。」
花鈴「盗賊前にして寝てんじゃねえよ。危うく蒼空が死ぬとこだったんだぞ。」
蒼空「いや、それは俺が油断していたせいだ。」
花鈴「真面目すぎるのも考えものだな。」
そう言いながら、花鈴は香風を縄で拘束した。
◎旅路(翌朝)
目を覚ます香風。
香風「ん・・・私は・・・ん?」
香風の視界に龍泉が映る。
龍泉「よう。」
香風「お前は・・・ん?あれ?動けない!何だこれ!おいお前、こいつを解け!!」
龍泉「仲間殺そうとしたらしいからそれは無理だな。」
香風「ふざけんな!」
龍泉「おーい、目を覚ましたけどこいつ本当に置いていくのか?」
花鈴「ああ、そのうち魔物の餌にでもなるだろう。」
蒼空「んー・・・君の気持も分かるが、やはり魔物の餌にするのはやり過ぎではないだろうか?」
花鈴「だったら次の大きな町に辿り着くまでこいつを引きずって歩くか?こいつはお前を殺そうとしたんだ。その行いの意味を知るにはこうするのが一番なんだよ。」
蒼空「んー・・・確かにそうか。すまない君にばかり汚れ役を任せるところだった。こういうやり方は好きじゃないが旅の目的を考えればこれが最善策だな。」
香風「おい!正気かお前ら!嫌だ!私はまだ死にたくない!!助けてくれ!!何でもする!!」
蒼空「君は既に俺の救いの手拒んでいる。やはり同情の余地はない。」
花鈴「それじゃ行こうぜ。」
香風「やだ!やだ!!助けて!!死にたくない!!」
その場を立ち去る蒼空と花鈴。
香風、残った龍泉に気が付く。
香風「なあ、あんたは助けてくれるだろう?か弱い少女を見捨てたりしないだろう?」
龍泉「まぁ、俺は偉大な男だからな。」
香風「そうだよな!はじめて見た時からあんたは懐のデカい男だと思ってたんだよ!!ありがとう!!ありがとう!!」
◎旅路 場面変わり。
香風「いたたたたた!離せ!!離せ!!」
香風を引きずって歩く龍泉。
龍泉「おい、暴れるな。」
香風「ふざけるな!!殺す!!お前は後で殺す!!」
龍泉「魔物の餌になってもいいのか?」
香風「嫌だ!!畜生!!畜生!!」
花鈴「あー、うるさいな。」
蒼空「ま、龍泉ならこうするって分かっていたよな花鈴?」
花鈴、鼻で笑って歩く。
香風「お願いしますー!暴れないので負ぶってくださいー。暴れたら魔物の餌にしていいので助けてくださいー。」
◎廃墟になった町【染赤】
香風を肩に乗せて歩く龍泉。
香風、鼻を啜って泣いている。突然香風の腹が鳴る。
龍泉「ああ、そう言えばお前は昨日から何も食べてないのか。」
花鈴「仕方ない。食事にするか。」
食事をする一行。
龍泉、水と干し肉を持って香風に歩み寄る。
龍泉「ほら、腹が減っただろう。ん。」
干し肉を口元に差し出す。
不機嫌そうに龍泉をしばし見てから干し肉を食べる香風。
龍泉「俺の名前は龍泉、一つ提案なんだが、お前も俺たちの仲間にならないか?」
香風「は?」
龍泉「盗賊をしていても腹をすかして盗みを重ねるだけなのだろう?俺たちは魔王を倒すために旅をしている。だから形だけでも一緒に旅をしていれば俺の信安の契約でお前は飢えずに済む。どうだ?悪くない提案だろう?」
香風「なら私を信用しろ。仲間になってやるから、縄を解け。」
龍泉「よし、決まりだ。」
そう言って龍泉は香風の縄を切りにかかる。その様子を黙って観ている花鈴と蒼空。
龍泉、香風の縄を解く。その瞬間香風が龍泉の剣を抜いて距離をとる。
香風「この間抜けの大馬鹿野郎が。私を怒らせるとどうなるか、その身をもって・・・。あれ?」
香風が話している最中に剣は光を放ち消え、龍泉の手に戻った。
龍泉、剣を鞘に納めて香風を見る。
香風「怪しい術を使いやがって!クソッ!!お前なんか魔王に殺されて死ね!!」
そう言って逃げ去る香風。
龍泉「勧誘失敗か。」
花鈴「お前は最善を尽くしたよ龍泉。」
蒼空「はっはっは、君らは素晴らしいな。一緒に旅が出来て光栄だよ。」
花鈴「真面目だなお前は。」
笑い合う一行。そこへ一人の男が通りかかる。
男「はて、珍しいな、来客か?」
蒼空「もしかしてこの町の人ですか?」
男「ここを町と呼んでくれるか。はっはっは。そうさ。赤染の最後の住人さ。」
花鈴「あなたはこんなところで何を?」
男「この町はかつては芸術で栄えた町でね。私はここに残った遺物を絵に収めて赤染の芸術家達の作品を広く伝えるために一人ここで絵を描き続けているのさ。」
花鈴「そうか、寂しい話だが、あんたはいずれ人気を集めそうだな。」
男「そう言っていただけて嬉しいです。しかし、最近この辺りに恐ろしい魔物が住み着きましてね。そろそろここを発つつもりだったのです。」
龍泉「恐ろしい魔物・・・。」
◎赤染付近の森
香風「クソっ!クソっ!腹が立つ!!」
香風、龍泉の「お前も俺たちの仲間にならないか?」と言う言葉を思い出す。
香風「仲間・・・。」
魔物「仲間?・・・他にもいるのか?」
気が付くと巨大な魔物の頭が傍らに迫っていた。
香風「うわぁ!!!!」
逃げ出す香風だったが、すぐに魔物に捕らえられた。
香風「嫌だ!!離せ!!!!」
魔物「あはははは!!お前はここで死ぬ!!」
大きく口を開ける魔物
香風、蒼空を殺そうとした時の事を思い出す。
香風「嫌だ!!嫌だ!!助けて!!龍泉!!!!」
迫りくる魔物の口。
魔物「ウグッ!!」
突然魔物が悲鳴を上げる。魔物の後頭部に縄鏢が突き刺さっている。
花鈴「今だ!!」
魔物に迫りくる足音。
龍泉「オラァ!!!!」
魔物の腕に斬りかかる龍泉。
魔物の手から解き放たれ落下する香風。それを蒼空が受け止める。
香風「お前ら、何で?」
蒼空「今はここから離れるぞ。」
魔物、怒りの咆哮を轟かせる。
それに物怖じせず距離を詰める龍泉。そして龍泉の剣が炎を纏う。
龍泉「はぁぁあああああああ!!!!」
魔物を斬りつけた剣が爆炎を放つ。
魔物はあっと言う間に塵となって消えた。
香風はその様子は呆然と眺めていた。
◎旅路
花鈴「あのおっさん、もう少し長くあの町に住めそうだったな。」
蒼空「ああ、彼の役に立てたのなら俺としても誇らしい限りだ。」
龍泉「しかし、どうしたもんかな。」
花鈴「お前だろ?仲間に誘ったのは。自分で責任取れよ。」
龍泉、困ったように背後を見る。
背後には香風の姿があった。
龍泉「一緒に旅をしてくれるのか?」
香風「・・・・・・。飯を食わせてくれるってのは本当なんだろうな?」
龍泉「ああ、もちろんだ。だから一緒に行こうぜ。」
香風「旅が終わったら必ず殺す。絶対に殺すけど。それまでは我慢してやる。」
花鈴「あーあ、ようやく負担が減ったと思ったのにな。」
蒼空「はっはっは、賑やかになりそうだな。」
龍泉「よろしくな香風。」
龍泉手を差し出す。
香風、龍泉に歩み寄りその手を握らず叩いた。
香風「さっさと進め。」
龍泉「おう、それじゃ行こうみんな。」
旅はまだまだ続く。




