◆【死者の光】
◎旅路(夜)
龍泉「随分と暗くなってきたな。」
花鈴「森を抜けるまで歩きたかったが、流石に無理そうだな。今日はここで寝よう。」
野宿の用意をして眠りに落ちる二人。
◎旅路(深)
花鈴「ん・・・・・・。」
花鈴、深夜に目を覚ます。視界には空中を儚げに舞う光の玉が見えた。
花鈴「光虫か・・・。」
龍泉「光虫って言うのか。」
花鈴「ああ、そうだよ。起こしたちゃった?」
龍泉「いや、起きてた。」
花鈴「寝ろよ。」
龍泉「この光に見とれてたら、寝れなくなった。」
花鈴「隣にいる女には見とれもしないくせに、嫌味な奴だな。光虫が現れる場所ってのは死後の世界と繋がっているって言う伝説があるんだ。光虫に夢中になっていると死後の世界に連れていかれるらしいぞ。」
龍泉「ふーん、死後の世界ね。そう言うおとぎ話を信じる人間だったんだなお前。」
花鈴「おとぎ話ってのはだいたい実話が根幹にあるもんだ。例えば恋人を失った旅人がいたとしよう。そんな時に光虫の光を見たらその旅人は何て考えると思う?」
龍泉「あー・・・?この光は死んだ恋人の魂かもー?みたいな?」
花鈴「光虫ってのは水辺に生息するからな。感極まって投身自殺なんて想像に難くないだろう。そういう光景をみた人間が、あれは死者に魂を持ち去られただとか、死後の世界に迷い込んでしまっただとか言い始めたってわけさ。」
龍泉「そう言うもんか。」
花鈴「ところでお前よく恋人を失った旅人の気持ちが分かったな?」
龍泉「・・・・・・。」
花鈴が龍泉を見ると静かに眠る姿があった。
花鈴、溜息をついて目を閉じた。
◎旅路(朝)
龍泉「おお、ようやく森を抜けたか。」
花鈴「長かったな。ん?」
龍泉「あれ?なんだか変な臭いがするな。」
花鈴「龍泉あれ!」
花鈴が指さす方をみると町か燃えているのが見えた。
龍泉「襲われているのか?行くぞ花鈴。」
花鈴「やっぱり行くのか。」
龍泉「怖いならここで待っていてもいいぞ。」
花鈴「あんたの危機を誰が助けてきたと思ってんのさ。」
◎襲撃された町【虎壁】
兵士「クソ、強すぎる。」
血染「まだ戦意を喪失しないとは面倒だな。お前以外の人間はもう死んだ。もう泣きわめいてもいいんだぞ?」
兵士「黙れ!!虎壁の兵士の魂は最後の一人が息絶えるまで消えることは無い!!はぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」
斬りかかる兵士だったが、血染の剣が兵士の剣を砕く。さらにそこに蹴りを入れて突き飛ばした。
血染「これで武器も失ったな。さあ泣きわめけ。命乞いをしろ。そこを斬り殺すのが好きなんだ俺は。」
兵士「・・・・・・俺は虎壁の兵士!!剣を折られ、友を失おうと、この命が尽き果てようとも!!、俺の心が折れることは無い!!俺の名は蒼空!!貴様の首、冥途の土産に持ち帰らせてもらう!!!!」
血染、無表情で空を見上げる。
血染「なるほど、では趣向を少し変えて見るとしよう。」
そう言って手を天に向けてかざすと複数の黒い影が放たれ、死んだ兵士の体に入り込んだ。
死んだ兵士はうめき声をあげて立ち上がると、よろめきながら蒼空に向かって歩み寄った。
蒼空「みんな!?」
血染「お前のくだらない言い分は十分に理解した。お前の命は虎壁の兵士の誇りによって消させてもらおう。」
蒼空「みんな・・・。」
血染「どうした?俺の首が欲しいのだろう?その死体を倒してここまで来い。」
蒼空「お前ぇぇぇぇええええ!!!!」
血染「ああ、良いことを思いついた。お前らの死体を使って近辺の町を焼き払ってやろう。お前らの誇りとやらがどれほど脆く弱いか、死後の世界で思い知るように俺が弄んでやろう。」
武器を持たない死体が蒼空にしがみついて拘束する。
剣を持った死体がよろりよろりと歩み寄る。
蒼空「くそっ・・・!」
血染「心配しなくともお前も連れて行ってやる。やれ。」
血染の言葉に反応するように死体が剣を掲げる。
しばし沈黙が流れた。
血染「ん?やれと言っている。この死体め、もう頭が腐ったのか。」
死体、掲げた剣をその場に落とす。そして血の涙を流してその場に崩れ落ちる。拘束している死体も後に続くように崩れ落ちる。
蒼空「みんな・・・。」
蒼空、死体が落とした剣を拾って、血染に向ける。
血染「役立たずが。」
血染、剣を抜く。
蒼空「うわぁぁぁぁあああああああああああ!!!!」
蒼空、剣を構えて血染に向かって走り出す。
血染「貴様一人で勝てないのは分かりきっているはずだろう、鬱陶し・・・!?」
突然雷撃が血染を貫いた。
血染「何!?」
よろめく血染。雷撃の出所を確認しようとした瞬間、足音が迫る。
血染「しまっ・・・!!」
蒼空「ハァァァァアアア!!!!!!」
蒼空の一閃で血染の首が飛んだ。
蒼空の吐息だけが響いていた。
辺りを見渡すと二人の旅人の姿が目に入った。
蒼空はそれを見て意識を失った。
◎虎壁(翌朝)
蒼空「ん・・・・・・。」
蒼空布団の中で目が覚める。
蒼空、傷だらけの手を見て溜息をつく。
蒼空「夢・・・ではないのだな。」
龍泉「おっ、目が覚めたか?」
蒼空「君か?あの雷撃を放ったのは?」
龍泉「まあ、そんなところだ。」
蒼空「血染はどうなった?」
龍泉「血染?」
蒼空「あの魔族のことだ。」
龍泉「あんたが倒したよ。」
蒼空、安心したように息を深く吐いた。
◎虎壁(数日後の朝)
墓標代わりに突き刺した剣に祈りを捧げる蒼空。
蒼空「すまなかったな。命を助けてもらった上に墓を掘るのも手伝ってもらうとは、これでは恩を返すに返せないな。」
龍泉「良いってことよ。偉大な人間はそういうのがなくても人助けをするものなんだぜ。」
蒼空「器が大きいな。これから何処へ向かうつもりだ?」
龍泉「魔王を倒して、俺が最強にだって世間が認めるまで旅をするんだ。」
蒼空「魔王を・・・。」
花鈴「まぁ、どこに魔王がいるかも分からないまま旅をしてるんだけどね。あんた何か知らないの?」
蒼空「いや・・・、それよりその旅に俺もついて行ったらダメか?」
龍泉「いいぞべつに。」
花鈴「奇妙なやつだな。せっかく命拾いしたのだから余生を平和に過ごせばいいのに。復讐なんて良いもんじゃねえぞ。」
蒼空「確かにそうだな。だが、ここで逃げては君らに恩を返せなくなるからね。虎壁の兵士としてそれは看過できない。俺の名は蒼空!よろしくな!!」
龍泉「龍泉だ。よろしく。」
花鈴「花鈴。よろしく。」
◎旅路
蒼空「ところで君たちは恋人の関係なのか?」
龍泉「おっ?花鈴に惚れたのか?」
蒼空「そう言うわけではないが。」
花鈴、龍泉の脇腹を肘で殴って、足早に二人を置いて歩いていく。
龍泉「何すんだよ。」
蒼空「なるほど。」
龍泉「何が?」
蒼空「仲良く出来そうだと思ったのさ。」
龍泉「おう、仲よくしようぜ。」
龍泉、笑顔で手を差し出し、蒼空も笑顔でそれに応じる。
旅はまだまだ続く。




