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戦いは、常に冷静に?

しばし、呆然としていた私に、ローレックの槍が肩に突き刺さる!


突き刺さると同時に、我にかえり傷みで顔をしかめる。


「隙だらけだぞ、どうした?」


ローレックの問いかけに、私は答えない。

左肩からは、血が流れている。

早く治療すべきだが、それをさせてくれるただろうか?

私がローレックなら、させないだろう。


『駄目だな、血を流しすぎた。』


少しばかり、くらくらしてくる。

こんなに血を流して、戦ったことはない!


今回ばかりは、本当にヤバイ?



ーーー ローレック視点 ーーー


ヤバイな、やり過ぎたか?


ガキを殺すのは、主義じゃない。

しかし、手加減出来る相手でもない!


最初は手加減するつもりでやっていたが、思いの外避けるので、つい本気を出してしまった。


それでも、避けるか?


内心では、感心するとともに、恐れてもいた。

これなら、オルタスに勝ったのも、まぐれではないだろう。


これから先が、楽しみな存在だ。

そして、驚異でもある!

今がこれなら、成長して大人になったら、俺は勝てるのか?


…………勝てないだろうな。


こいつは、今は避けるので精一杯のように見えるが、まだ余力がある。

それが証拠に、段々避けるのが上手くなってやがる。

俺が本気を出して、突き出したにもかかわらず、薄皮一枚で避ける。

致命傷を受けるような感じがしない?


内心焦って、言葉を交わすことで動揺を誘ったが、上手くいった!


戦いの最中に、棒立ちなるのはいただけない?

やはりその辺は子供と言うところか?


やっとまともに、当てることが出来た。


しかし、俺も誉められたもんじゃない。

こんな子供も相手に、本気になった上に小細工を労するようではな?


この仕事が終わったら、本気で引退を考えるか?


娘達も大きくなるし、定職に就くのも悪くない。

死と隣り合わせのこの仕事も、刺激が有って悪くないが、死んだら終わりだからな?


命有っての物種だ、勝ち逃げさせてもらう。


さて、そろそろ終わりにしようか?


どうやら、血を流しすぎたのか?

足下が、ふらつきはじめてる?

それに外野が、五月蝿くなってやがる。

俺がいつものように、瞬殺すると予想したんだろうが、それが外れて喚いてやがる。

外野なんか正直知ったことじゃない。


こっちは依頼された通りに殺るだけだ!


正直殺したくはないが、無理だろうな……


依頼は、時間をかけて確実に殺せ、だ。


殺さなくても、試合に勝てばいいとも言われた。


本当なら、余裕を見せて勝つつもりだったが、お前が強いから悪いんだ。

もう少し弱かったら、俺に殺されることはなかったんだ。


もっとも、負けても死ぬんだろうがな?


どんな恨みを買ったのかは知らないが、ちょっと同情するぜ。

だが、こっちも生活がかかってるからな。


槍を持つ手に力を込める。


「場も、盛り上がったし、終わりだな」


………答えないか?


血を流し過ぎて、思考が鈍ってるのか?

単に答える余裕がないのか?


どっちでもいいか?


相手の間合いを詰めると同時に、横払いを食らわせる。


今まで突きを見せて来た、横払いは初めて見せた。

だが、これはフェイントだ。

案の定、後ろに飛んで避けられる。


そこで、降り下ろし仕掛ける。

これも初めて見せる。

大抵の奴は、これを受け止める。

受け止めた後は、串刺しになるんだかな。


だが、ダンは受け止めない?


これも避けやがった?


だが、体制は崩した。


止めの突きを食らわせる!


俺の得意技。


横払い、降り下ろし、最後に突き。


横払いと降り下ろしは逆でもいい。

要は、相手の体制を崩せばいい。

そこに、最速の突きを食らわせる!

これで俺は勝ってきた。

まぁ~大抵はこれを出す前に勝っちまうんだがな?


ダンの胸元に槍が突き刺さる…………はずだった?


俺の槍は、槍先は、ダンの胸元切り裂いただけだった……。


その瞬間の手応えは、金属を弾いた感じだった?


金属?


ダンの装備は革の胸当てだ?

なのに、金属?


よく見ると、ダンの胸元には剣が有った!


剣は衝撃に耐えられなかったのか、根元で折れていた。


不味い!


瞬間、自分の体制が悪いことに気づく。

俺は渾身の突きを繰り出す為に、思い切り前傾姿勢になっていた。

次の動作に移る余裕がない!


気付けば目の前に、ダンの拳が表れる。


ちょっと待て、おかしい?


なんだ、その拳は?


あからさまに大きさが子供の拳じゃない!






気付けば、俺は、控えの間にいた。


俺は、…………負けたのか。



********




危なかった………。


三連攻撃の最後の突きは、本当にヤバかった!

剣を盾にしたのは、偶然だった。

血が流れてふらついたが、傷みで意識がはっきりしていた。

でも、時間が経っていたら、その意識も無くなっただろう。

向こうから、止めを刺しに来てくれたのはありがたかった。


最悪なのは、時間をかけてなぶられるのが怖かった。

リーチ差がある以上、こちらが攻撃に転じても距離を保たれたら、成す術がなかっただろう。


ローレックが勝利を急いだ。

そこに隙が出来た。


横払いや降り下ろし、もしくは振り上げは頭に有った。

今まで突きを出してきて、急に攻撃方法を変えるのはよくあることだ。

私がローレックならもちろん使う。

当たらなくても、牽制にはなる。

そして、避けるか、受け止めるか、選択肢が出来る。

避けるなら、今までと違って距離の取り方も違うし、

また、受け止めると、こちらの動きが止まってしまう。

常に、先手、先手で攻撃が出来る。

こちらは、色々と傷ついていたし、まともに反撃も出来なかった。


ローレックは、私に余力がないと判断して止めを刺しに来たのだ。


その判断は間違っていない。


横払いが来たとき、咄嗟にバックステップで避けたが膝が落ちかけた。

更に降り下ろしは、半身なって避けようとしたが出来ずに、横っ飛びに避けて肩膝を着いてしまった。

そこに全力の突きが飛んで来たのだ!

咄嗟に剣を胸元に当てて半身になったが、剣は脆くも折れてしまい、革の胸当てに槍先が突き刺さるはずだった……。


現に胸当ては引き裂かれていたが、怪我はない。

何故なら、胸当ての下に土魔術で作った、円形のプレートを入れていたからだ。


槍先は、プレートに触れてギリギリと音を立てて火花すら散っていた。


ローレックが見たのは、剣が当たった瞬間に折れて、残った刃先で火花が散ったと勘違いしただろう。


………たぶん。


プレートはあくまで保険だった。

強度もそれほど強くないし、重くもない。

強度は銅より硬く、鉄よりも軽い。

強度を硬くすると、重くなってしまうので、動きが鈍くなってしまう。

しかし、軽いと硬さが足りない。

その為、そこそこ硬く、そこそこ軽いプレートを作ったのだ!


決して、違反行為ではない!


魔術は、直接攻撃に使わなければいいのだから、安全の為に防具に使っても大丈夫だ!


………たぶん。


しかし、その保険のプレートも結果的には、壊れてしまった!


ローレックの渾身の突きは、剣を折り、胸当てを引き裂き、プレートをも破壊した!


闘気を使った攻撃かもしれない。

意識して使った攻撃なら私は、ほぼ即死だっただろう………。

ローレックを嘗めていたわけではないが。

それでも、何処かで手を抜いてくれる、殺す程の攻撃はしてこないと思っていた。


でも、…………甘かった。



次は、もっと硬い奴を仕込んどこう。

レティに協力して貰って、もっと硬い奴を………。



今回は、本当に運が良かった!


そして、哀れなローレックは、私の渾身のストレートを喰らってダウンした!


しかも、土魔術で補強した革手袋の拳でだ!


気分は、ス〇ライドのカ〇マだな。


いや、本当にスカッとした!


反則、違反行為だって?


魔術で直接攻撃してないから大丈夫だよ。


………たぶん?


それに勝ち名乗り挙げられてから、直ぐに退場したから、ブーイングが酷かったな。


「金返せ!」


「ふざけんな、起きろ~!」


いや~酷かった、うん。




しかし、今回は本当に運が良かった!


何度も言うようだが、本当に良かった。


でも、こんな運任せの試合は駄目だ。


もっと、強くならないと、な。


そして、ローレックには、聞きたいことがある!


今まで疑問に思っていた事が、確信に変わるはずだ!


必ず、聞き出してやる!



私は、闘技場から出てくるローレックを待ち伏せた。




大変お待たせしました。


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