戦奴の少女?
「クッ、クク、ククク、ブー、ブハハハー」
ダグラの間抜けな姿を見て思わず大笑いしてしまった。
すると周りの連中も釣られて笑い始めた。
「クッ、だめだ。何だよその姿、ブハハハー、ヒー、く、苦しい」
「だめだ、もうだめ、ヒャヒャヒャヒャ、ヒー、ヒ、ヒ」
中には腹を抱えて笑い転げる程だ。
「なんだ、これは!」
遅れて護衛隊長のドッチさんがやって来た。
するとみな我に帰ったのか笑うのをやめた。
そしてドッチさんは近くいた傭兵達に事情を聞こうとしたのだが。
「えー、え~とですね。プッ、プクク、だめ、苦しい」
「ドッチさん。実は、ブッ、ブハハハー、だ、誰か、説明、説明して、ダハハハ」
ドッチさんに説明しようとした傭兵達は笑いを堪えられず吹き出してしまった。
「まったく、どういう事だ。誰か、説………」
ドッチさんは埒が開かないと思ったのか、人混みを掻き分けて中に入って唖然として固まった。
そりゃ、唖然としますわな!
なんせ雇い主が全裸で延びている姿を見せられたら。
周りは笑いを堪えるのに必死になっていた。
それは私も同じで。
「な、なんて………、ブッ、ブハハハー」
ドッチさんも笑いを堪えられなかったのか、笑い出すと周りも再び大爆笑になった。
どれぐらい笑っていただろうか。
少しずつ笑い声が収まってきたところでドッチさんが指示を出した。
「まったく。おい!お前達。団長を部屋に運べ!」
「いや、ドッチさん?団長はこのままのほうが……」
「バカを言ってないでさっさと運べ!目を冷ましたらどうなるか。分かっているのか!」
「で、ですかね。おい!なんか羽織るもん持ってこい!男の裸なんか、いつまでも見ときたくないからな」
「「「へ~い」」」
ドッチさんの指示に従って傭兵達が動き出す。
しかし、会話の内容からダグラは団員に人気がないのかな?
そんなことを思いながらすることがない私は部屋に戻ろうとしていたが、ドッチさんに呼び止められた。
「おい!ダン。お前はその少女を診てやれ!」
「はい?」
ドッチさんが私にも指示を飛ばす。
「私達は団長を部屋に運ぶ。お前はそいつに怪我が有れば治療して後で私に報告しろ!後、そいつから詳しい事情を聞いておけ」
「どうして、俺何ですか?」
なんで私が彼女の治療をしなくちゃならないのか。
他にも誰か、年長の者がいるだろうに?
最もな疑問をぶつけてみる。
「おい!この子の名前は?」
「たしか~、れ、れ、レティ、だったか?」
ドッチさんは私の疑問に答えず、彼女、レティの名前を聞き出していた。
そして、私の方を向いて。
「今この場で治癒魔術を使えるのはお前だけだ。団長は……、たぶん大丈夫だろうからその子、レティを診てやれ?それとも団長を見るか?」
「はい!わかりました!彼女、レティを診ます」
思わず敬礼をして返事をしてしまった。
ドッチさんは少し驚いた顔をした後、苦笑しながら手をヒラヒラさせて、さっさと行けと私を促す。
私はドッチさんに頭を下げてからレティの側に近づく。
「なに、何するの?」
「治療してやれって、聞こえたろ?痛いとこないか?」
レティは毛布で自分の体を隠していた。
毛布の隙間から薄手の布地が見えたので裸ではないようだ。
私が近づくと警戒したのか少し後退りする。
「そんなに警戒しなくてもいいだろ? …少し傷つく」
最後の言葉は思わず声に出していた。
「ゴメン、なさい」
レティは意外にも素直に謝った。
何だよ、意外と良い子だな。
そう思って近づくとレティの顔色が青ざめていく
「おい!どうした、大丈夫か?」
「だい、じょう………」
私が声をかけて近寄ると彼女はふらつき私の方に倒れかけてきた。
とっさに彼女が倒れるのを防ぐ。
彼女の頭が私の右肩に乗り、私の両腕は彼女を抱き締める形になっていた。
「おい!おい!返事しろ!どうした、大丈夫なのか?」
彼女から返事は帰ってこなかった。
どうやら気絶したようだ。
私はソッと彼女を抱えてベッドに横たえる。
生まれて初めてお姫様抱っこをしてしまった!
案外女の子って軽いんだな、そんな感想を思った。
彼女の顔色は青ざめたままだったが外傷はなかった。
一応、私の名誉の為に言っておくが外傷を調べたのは私ではない!
娼婦のまとめ役のセリーヌさんが視たんだよ。
断じて残念だとか、惜しいことをしたとか、自分で調べたかったとか思ってないからな。
ほんと~にないからな!
何故なら、セリーヌさんが真っ先に駆け寄って勝手に診たからだ。
私が診る隙は、まったくなかった!
「ふう~、大丈夫みたいよ。外傷はないわね?たぶん」
「そ、そうですか?」
「あら♪残念だった、ボク~」
セリーヌさんが私をからかう。
ふん、私はこれでも五十を過ぎたいい歳のオッサンだよ。
いまさら少女の裸を見て興奮等するものかね!
してないよ、ほんとだ。
「からかうのは止めてください!セリーヌさん」
「あらそう♪この子意外と」「セリーヌさん!」
まったく女の人は子供をからかうのがそんなにおもしろいもんかね?まったく。
「んん、ん、ん、んん、ところでどうして気絶したんですか?」
私はわざとらしく咳をして話題を反らす。
「あら、知らないの?」
「何がです?」
セリーヌさんは意外そうな顔で私を見る。
当然、私にはなんの事か分からなかった。
「奴隷が主に刃向かったのよ。分かるでしょ?」
「ん?いえぜんぜんわかりませんが?」
「呆れた!」
セリーヌさんは額に手を当てて私を信じられないと言う顔をして見ている。
そして私はどうしてセリーヌさんがそんな顔をしているのかまったく分からない。
「いい!あのね………」
セリーヌさんの説明を私は大人しく聞いていた。
だってセリーヌさんの顔がすげ~怖かったから。
どうも大人の女性は苦手だ。
きっとマーサのせいだな。
うん、きっとそうだ!
すみません、うそです。天国のマーサ様怒らないで!
冗談はさておき。セリーヌさんの説明を聞いて納得した。
奴隷が主を傷つけると激痛が走るのだ。
以前説明を聞いていたはずだがすっかり忘れていた!
どの程度の激痛なのかは私には分からない。
セリーヌさんが言うには激痛はしばらく続くそうで、私達が笑っていた間彼女は激痛に耐えていたことになる。
なんて我慢強いんだ!
私は顔を青ざめながら浅い呼吸を続ける彼女を見ていて思った。
でも、何で彼女は抵抗したのだろうか?
こんな状態になることが分からなかったのだろうか?
私が彼女なら……
想像して止めた!
私なら最大級の魔術を全力でお見舞いしただろう。間違いない!
彼女は間違ってない!
でも彼女は性奴隷だろうに、それなのに?
「何で彼女は抵抗したんだろう?」
独り言のつもりで呟くとセリーヌさんが意外な答えを返してくれた。
「そりゃ抵抗するわよ!だってこの子、戦奴だもの!」
「うそ、戦奴!? この子が?」
こんな美少女が、戦奴?
うそ、だろ?




