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公開処刑?

「ま、参った!」


剣を突き付けられたテッドは素直に敗けを認めた。


いや~、上手くいって良かった!


散々練習したけど実戦では初めて使えた三連コンボ!

ノーマンには何度も何度もボコられながら身に付けた。成るべく相手を傷つけない勝ち方だ。


これの一番の問題は、剣の受け流し!

これが出来て初めて出来る技だ。

受け流しが上手く出来て良かった。

これは相手が剣をあまり使えない奴だから成功したとも言える。


まぁ、比べる相手がノーマンじゃ可愛そうか?


「双方、それまで! 勝者 ダン !」


審議役が試合を止め勝者を告げる。


すると観客から歓声と怒号が私達に降り注がれた。


「よくやったぞ。新人!」


「お前に賭けて良かったー!」


「ふざけんな、てめえ!ガキに負けるとか、どういう事だ!」


「金返せ!」


「散々期待させといて、あっさり負けてんじゃねえー」


最初は私に対する称賛から段々テッドに対する批難中傷になっていった。


そして、物を投げつけ始める始末に。


ど、どうしたもんか?


帰るに帰れないぞ?


そんな途方に暮れながら、審議役に退場していいのか聞こうとしたその時。


「皆さん、お静まりください」


闘技場の貴賓席から声が聞こえる。

貴賓席からの声で観客がそちらの方に注目し始める。


あれだけ騒いでいたのに静かになった。


私はその広景を見て唖然となった。


そして、なぜ静かになったか理解した。


貴賓席の周りから、わらわらと完全武装の兵士達が表れたからだ。

兵士達は手に槍と盾を持ち全身を鎧と兜に身を包み、貴賓席の周りをガードしていた。

更に周りを見ると観客席の出入口にも兵士達がいた。


そして、選手の入場口にも兵士がいた!


か、囲まれてる? な、何で?


私の疑念を余所に貴賓席から声がする。


「皆さん、皆さんの思いは分かります。ですが、結果が全て!皆さん、どうか、勝者を讃えましょう。未来ある若者を祝福しましょう!」


すると、貴賓席から拍手が聞こえてくる。

それに釣られるように観客席からも歓声と拍手の雨が私達に降り注がれる。


ほっとした。


これで安心して退場出来る、そう思っていた。


「そして、皆さん。敗者には罰を与えましょう」


すると、歓声が更に増した。そして……


「勝者に祝福を、敗者には罰を!」


「勝者に祝福を、敗者には罰を!」


「勝者に祝福を、敗者には罰を!」


観客から聞こえてくる声に、背筋が凍る。


敗者に罰をの大合唱に。


私はテッドを見ると彼は震えていた。


「敗者 テッドは、今、ここで、刑を執行する!」


貴賓席からその声が聞こえると客席からは。


「死刑、死刑、死刑」


「死刑、死刑、死刑」


一種異様な雰囲気が、いや、異常な空間を生み出していた!


私は、その場を動けずにいた。正確には足が震えていた。


この雰囲気に、飲まれていた。


そして、死刑を宣告されたテッドは。


「や、約束が違う。負けても」「 黙れ! 」


テッドが何か言っていたがいつの間にか近くに来ていた兵士に殴られた。


「刑の執行は、勝者に行って貰おう。どうかな、皆さん?」


「賛成、賛成」


「勝者に執行を、勝者に執行を」


観客の大合唱が始まった!


な、な、な、何、何をふざけた事を?


私が、な、な、何で?


「お前が、殺らないと、後でどうなるか。分からないぞ?」


私が立ち竦んでいると審議役が私の耳元に囁いた。


「覚悟を決めろ!早くしないと」


私の肩に手を置いて、尚も囁く。


私が、人を、殺す? 何で? 試合は、終わった。

終わったよな? 何で? 何で? 何で?


何で、どうしてこうなる?


私は勝者で、彼が敗者で、殺すのか?私が?


どうしてだ。私が勝者だから?


何で、どうして、おかしいよ?おかしいだろ?


何だよ、これ? 何なんだよこれは!


「早くしろでないと」


兵士達が私達を囲んでいる。


テッドは押さえつけられて頭を垂れている。


何か、言っているようだが私には聞こえない。


「誰か、支えてやれ」


「真っ直ぐ降り下ろすんだ」


「一度に出来ないだろうが、我々が支えてるから大丈夫だ」


私には聞こえない。なにも聞こえない。


ただ、周りが何か言っていた。なんて言っているんだ?わからない?


どうして、私は、ここにいる?


なんで?わからない?


「よし、もう少しだ」


「後少しだ。がんばれ」


何だよ、これ? 何なんだよ?


「皆さん、刑は執行されました!勝者に祝福を!」


闘技場は、歓声に包まれていた。



私は、人を、……殺した。


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