試合、そして……?
木製の円形闘技場内に、対戦者達の名乗りが挙げられる。
「東、新星 ダン 、西、死刑囚 テッド 」
死刑囚? 今、死刑囚と言ったか?
私は、言われるがまま闘技場内に進み、名乗りを聞き、相手のことを知った。
目の前の男は、こちらを見て、一瞬驚いた顔を見せるが、直ぐに凄い形相で私を睨んでいた。
おそらく自分の相手が、子供だと知らなかったのだろう?
そして、それは私も同じことだ。
私は自分の相手が、死刑囚だと思っていなかった?
てっきり、同じ奴隷か?はたまた、職業剣闘士だと思っていたからだ。
私は、試合が始められる前の少しの間に、相手を観察していた。
『いいか?初めて戦う相手の場合は、先ず、相手を良く観察するんだ。
どんな相手も、初めは良く見る?いいな?』
頭の中で、ノーマンの教えを思い出す。
ノーマンは普段、ぬけてる人だが戦闘に関しては違う。
生前は、いろいろとアドバイスを貰ったものだ。
事、戦闘に関してはノーマンの教えに間違いはなかった。
今回も、ノーマンの教えに習うとしよう。
ノーマンは、対人戦闘は先手必勝とは言っていなかった。
先ず、戦う前に相手を見る。
相手の体格、得物、そして、仕草や目線を見るように教えてくれた。
対人戦闘を重ねれば見ただけで、相手の力量が分かると豪語するノーマンであるが、決して相手を舐めて掛かるな、と教えてくれた。
『どんな相手だろうと、油断すれば足元を掬われる。
特に、女性や子供、老人等、見た目で判断するな!
酷い目に会うぞ!』
『酷い目に会ったんですね?』
『ああ……、あれは、本当に見た目に騙された!
てっきり大人の女性だと思ったんだが、いざ、事に及ぼうとした時に、年齢を聞かされたんだ。
酷い目に合った、ほんとに』
『それ、詳しく知りたいわ? ノ ー マ ン ?』
その後の、ノーマンを私は知らない。
いかん、いかん、今は集中しろ!集中!
そして、私は相手を見る。
その立ち姿からは、何かしらの戦闘技術を持っているようには見えなかった。
ノーマンや、エルクからは、他流派の構え等も触り程度は教えて貰ったが?
見た限りでは、どの流派にも当てはまらない?
いや、素人同然だと感じる。
強いて言えば、リリがこんな感じだったか?
リリは構え等せずに、いきなり襲い掛かって来るからな?
ただ、リリと今の私の相手との違いは、目付きだろうか?
リリは興奮して目を輝かせていたように見えたが、私の今の相手、テッドと言ったか?
テッドの目は、かなり厳しい目をしている。
あれが、殺気立っている目なのだろう?
いままで、見たことの無い目付きだ!
テッドは見た目、二十代後半から三十代前半ぐらいに見える。
着ている服は、囚人服だろうか?
みすぼらしい服で節々が、ささくれて見える。
手には私と同じ、ロングソードか?
ブロードソードを持っているようだ。
剣は、所々欠けている。
私の剣も、所々が欠けている。
奴隷が使う物だから、手入れ等されないのだろうと思ったが?
相手も同じか?
武器は、ハンデ無し。
体格は、向こうが上。
力押しで来られると不利かな?
後は………
「それでは、始め!」
ちょっ、待って!
まだ、考えがまとまって、な、い。




