生きるために?
木製の円形闘技場
私は、簡易に組まれた円形闘技場にいた。
ダグラは、私を奴隷とした日から直ぐに試合を組んでいた。
格闘興行は、庶民の娯楽であり、ストレス発散の場である。
しかし、闇雲にただ試合を組み、興行を打っても客は集まらない。
ダグラは、その辺りが上手かった。
彼は、同じ興行中間と話をつけ、街の顔役に金を渡し、そして、その街の酒場、宿場、市場等に興行の話を流した上に、周辺の村村にまで話を持っていったのである。
ダグラは、宣伝マンであり、興行主であり、悪党であった。
興行の宣伝をし、興行主として街の顔役と賭けの相場を作り、八百長をして、決して自分と顔役に損を出さないように努めていた。
そう、八百長をしていたのだ。
ダグラは、誰が勝つか分かった上で、賭けを打っているのだ。
卑怯と言えば、卑怯。
上手いと言えば、上手い。
ダグラのそういう所は、評価できる。
所詮、この世は勝った者が正義なのだ。
過程は、どうでもいい。
私も、彼の汚ない所を見習うとしよう。
勝って、生き残る!
どんなに無様でも、意地汚く勝利を手にするのだ!
だが、私が八百長のことを知ったのは、大分後のことだが。
この時の私は、初めての試合で緊張していた。
控えの間で試合に関する説明を受けていたが、半分も覚えていなかった。
それほど、緊張していたのだ。
ルールに関して、簡単に説明すると。
武器は、用意された物を使用、魔術は直接相手を攻撃する物は使えない。
決着は、相手を戦闘不能、またはギブアップで終了。
後は、細々と説明を受けたが、覚えていない。
そうこうしている内に、出番が回ってくる。
覚悟を決める時間は、いくらでも有ったのに私は、目まぐるしく変わった自分の環境の変化について行けなかった。
「ダン、出番だぞ?」
そう問われた時、誰のことを言われているのか、判断できなかった?
「お前のことだろうが?」
と、周りの連中から言われて、やっと気づく。
「あ、自分のことか?」
周りは、笑い声に包まれる。
これから殺し合いを始めるのに、緊張間の欠片も感じられない。
自分と周りの温度差を感じる。
私は、今から自分が生きるために他人を傷つける。
頭で分かっていても、まるで実感が湧かない。
呼び出しの者が、私を急かす。
私は、言われるがまま、それに応じる。
『殺し合いを、本当に、始める、自分が?』
心の中で、何度も、何度も、何度も自問する。
そして私は、気づけば、手に剣を持ち、目の前には対戦者がいた。
始まる前に考えていたことが、一瞬で無くなる。
『えっ、始まるのか?今から?』
何の覚悟も、決められない内に試合が始まる。
そう、今から殺し合いが始まる。




