残酷な宣告?
私の目の前にいる人物。
バラス-セルラス伯
噂に違わぬ人物だ。
一言で言うと、武人という感じだ。
その厳つい顔で、私を見ている。
ちょうど、書類整理をしていたのか、机の上は、紙で溢れていた。
私を見ている顔が怖い!
「貴様が、ノーマン-アスバールの息子か?」
「はい」
素直に答える。
「ここに呼ばれた訳が解るか?」
「いえ、解りません」
これまた素直に答える。
「そうか」
どう答えればいいか、判断に迷う?
それに、まだまともに自己紹介をしていない。
これは貴族にとって、というか、目上の人に対して失礼にあたる。
だから、先ずは改めて自己紹介だ!
「セルラス伯、私は「挨拶なら不用だ」
くっ、また先制された。
「要件を伝える」
「はい」
貴族らしい挨拶は抜きに、さっそく要件から、
話が早くていいか?
「先の戦で、ノーマンが死んだ。戦死だ」
「死んだ?ノー、ノーマンが死んだ?」
「奴は、ミスを犯した。奴のせいで、死ななくていい人間が多く死んだ。アスバール家は貴族から除名する。廃絶だ!」
バラス伯が、ノーマンの死とアスバール家の廃絶を宣告した。
予想はしていた。
していたが、改めて聞かされると、頭の中が、一瞬真っ白になってしまった。
そして、慌てて聞き返す。
「ア、アスバール家は無くなるの、ですか?」
「聞こえなかったか?廃絶だ」
「訳を、お聞き、しても、そ、それに父がミスを犯したとは、ど、どういう、こと、ですか?」
あー、口の中が乾いて、上手く話せない。
それに、体から血の気が引いていく。
足下が震えている。
立っている感じがしない。
「そのままの意味だ。奴はミスをした。そして、それに巻き込まれて人が多く死んだ。貴族なら、その責任を取らねばならん! お前も貴族の息子なら分かるだろう?」
「そ、それは」
「あー、忘れていた。貴様の処遇だが」
「私、ですか?」
唐突に、私のことを話す。
「そうだ。貴様の処遇だが、貴様は、戦奴だ!」
「戦、奴?」
「そうだ。奴隷だ。仕方なかろう?そうでもしなければ、戦死者や、遺族に責任の取りようがない」
この世界では、親の罪は子に及ぶ。
まして貴族であれば、尚更だ!
バラス伯の言うように、ノーマンが罪を犯し死んだなら、その罪を償う為、子が責任を負うのだ。
この場合、私がまだ成人前である為、死罪ではなく奴隷にすることで、遺族に納得させようというのだ。
「わかり、ました。それで、ローダン村の人達は?」
「全滅だ。当然だな、ノーマンが死んだのだから、その下に付いていた者達が、生きているわけがなかろう?」
聞きたくない話がポンポン出てくる。
何で、こんな?
「そう、ですか。遺品は、有りますか?」
「下に集めさせている。後で、確かめろ」
「はい」
全滅?エルクや村の人達が全滅?信じられない?
ノーマンが死んだのも、エルク達が死んだのも、そんなこと?
ベス達に、何て言えばいいんだ!
頭の中に、ベス達や、村の人達の顔が思い浮かぶ。
悲しみより、怒りがこみ上げてくる。
自分のことはいい。
いざという時、一人で生きられるように、準備してきた。でも?こんなことが実際にあるなんて。
「アスバール家の私財は没収する。帰って私財を纏めておけ。二、三日程で、私財の受け取りに誰か向かわせる。その時に、貴様は奴隷商に受け渡す。逃げようと思うな!逃げれば、貴様の代わりに村の者達を、奴隷にする。いいな!逃げるな、貴様も貴族なら、貴族の責任を果たせ!」
「はい、承りました」
おそらく、最初で、最後の命令を受けた。
逃げるだと!
誰が逃げるものか!
こんなこと、前世でも似たような目に在ったのだ。
だから、奴隷になるのも平気だ。
平気じゃないのは、これで私は、天涯孤独になったことか?
前世では、早く一人に為りたいと思い、一生懸命に働き借金を返した。
ようやく、一人になれたと思ったら、呆気なく死んでしまった。
改めて、一人になると思うと?
「要件は、以上だ!二度と会うこともあるまい。さらばだ」
バラス-セルラスは立ち上がると、そう言って窓際に立ち、私に背を向けた。
「失礼します」
私も、一礼すると足早に、部屋を後にした。
一時も速く、この場を立ち去りたかった。




