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21-1

 最終試験2日目。


 受験者たちは身支度を整え、一昨日ゴーレムと戦った施設に集合した。



「今日も、頑張りましょうね。ティナさん!」

「う、うん」

 フランカは、いつも通りだ。いつも通りの穏やかな笑みと、丁寧な口調。昨日の食堂に現れた、あの子はどこにもいない。


 リュシーに、荒っぽい口調で喧嘩を売ったあの子は。


 未だに、あれがフランカだとは信じられない。あんなの、レオーネが見たら卒倒するよ。

 私だって、結構ショックだったし。

 あの目、あの顔、あの言葉遣い。どれをとっても、私の知ってるフランカじゃなかった。


「……」

 まさか、フランカってキレるとすっごい怖いんじゃあ……。あ、そういえば、レオーネには結構キツめに当たってたっけ。う~ん……。


「どうかされました? ティナさん」

「!」

 気づけば、目と鼻の先にフランカの不思議そうな顔が。


 私は驚いて、「なっななな、なんでもないよぉ」と、ぶんぶん首と手を振って見せた。

 それを見たフランカは、「そうですかぁ?」と訝しげに首を傾げたけど、すぐに表情を戻して別の話を始める。


「地面、きれいになってますね」

「ん? ……ああ、そういえば」

 最終試験の舞台たる広大な草原は、一昨日の試験でゴーレムの死体まみれになり、でこぼこの泥まみれになっていたはず。


 だけど、もうそれらはすっかり掃除され、ところどころ緑は失われているものの、きれいにならされていた。

 協会員たちが、一生懸命きれいにしたんだろう。


「おーい、集合だー! 今日の試験の説明をするぞー!」

 草原をぐるりと見回していると、試験官のよく通る声が耳朶を打った。


「行きましょ。ティナさん」

「うん」

 私たちは、早歩きで試験官のもとへ向かった。




 今日の試験の説明をしている試験官は、一昨日の試験官とは違う人だ。

 1日ずつ、担当が違うのかな。まぁ、それはさておき。


「今日の君たちの相手は、Eランク傭兵が仕事で戦うレベルのファミリアだ。一昨日戦ったゴーレムと同程度の強さだが、今回は一種類ではない。様々な種類のファミリアたちが、群れを成して君たちを襲う」


 Eランクっていうと、傭兵としては最下級。傭兵になって間もない新人が戦うようなファミリアってことか。

 ゴーレムと同じくらいの強さなら、なんとかなりそうだな。


「いいか? いくら弱いファミリアだからといって、油断はするなよ。種類も複数いれば、戦い方も様々だ。対峙するファミリアに合わせて、臨機応変に戦術を考えながら戦わなくちゃならない。ちなみに、用意したファミリアは全部で10種類。1種類につきおよそ100体いるから、全部で約1000体だ。この点は、一昨日のゴーレム戦と同じだな」


 その1000体のファミリアを、私たち35人の受験者が奪い合う。その辺りの説明は、1日目と同じだ。


 だけど、ファミリアの種類以外にもう一つ、1日目とは異なることを、試験官が説明し始めた。


「今回は、試験を始める前に2人組を作ってもらう。仲の良い者同士でもなんでもいい。1人余ると思うから、どこか一つは3人組を作ってくれ」

 2人組? なんでそんなもの……。


「最終試験では、誰かとちゃんと協力関係を築けるかどうかもチェックする。そのための組分けだ。さぁ、すぐに作ってくれ」

 なるほど、協力関係か。傭兵同士協力して仕事をすることもあるみたいだし、こういうのも当然、審査の対象になるよね。


「あ、じゃあ……」

 2人組を作るっていったら、やっぱりフランカとでしょ。隣を見ると、フランカはすでに私の方を見ていた。


「ティナさん。私――」

「おう、あんた。あたしと組みな!」

 私がフランカに手を差し出すと同時に、その声が響く。


 突如横から現れた手が、フランカの肩をがっちりと掴んで抱いた。


「えっ」

 現れたのは、不敵な笑みを浮かべたリュシー。驚く私に、彼女は「いいよなぁ?」と威嚇するように声を低くする。


「……い、いいわけないでしょ? フランカさんは私と組むの! その手を離して!」

 慌ててリュシーの手をフランカから引き剥がそうとするけど、「うっせぇ!」と突き飛ばされてしまう。


「誰と組もうが自由なはずだぜ? あんたは別の奴と組んどけや」

「どうしてフランカさんなの? あなたには、テッサさんがいるでしょ!」

 するとリュシーは、「へっ」と笑って、詰め寄ってくる。


「だったらあんたが、テッサと組めよ。ほれ」

「痛っ」

 またしても突き飛ばされる。が、私の身体はすぐに受け止められた。振り返ると、そこにいたのはテッサ。


「そいつが、あんたと組みたいってよ、テッサ」

 にやにやしながら言うリュシーに、私は「そんなこと言ってない!」と苛立つ。


「……フランカさんだって、そんな奴なんかと組みたくないでしょ?」

 そうだ。まだ、フランカの意思を聞いてない。


 リュシーは、「ひでぇ言われようだぜ」と笑みを深くする。

 その横で、しかし、そういえばさっきから、彼女は一言も言葉を発していない。


 なんで?


「フランカさん?」

「ごめんなさい、ティナさん」

「え……?」


 戸惑いながらも何かを決意した。そんな真剣な瞳で、フランカは私を見ている。


「私は、リュシーさんと組みます」

「そんな……!」

 リュシーが、「だってよ!」と楽しそうに笑う。


「どうして? どうしてなの、フランカさん!」

 手を伸ばす私に、しかしフランカは、冷たいとさえ言える瞳を向けるばかりだ。


「私、まだパートナーが決まってないの。私と組みましょう、ティナさん」

 そんなテッサの言葉も、耳に入るばかりで意識には届かない。



 結局、フランカは一言も喋ることなく、リュシーと共に私に背を向け、離れていった。

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