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第23話 美女とポンコツ(第1部)

皆さんご存知、俺はサンズ・クジラ。このグループにおける、不遇なる真の主人公(ヒーロー)だ。だが、今回のミッションにおいて、俺は紛れもない地獄を生きている。


一体どうすれば、俺はこの窮地を脱し、仲間たちをあのサディスティックな悪魔の魔の手から救い出せるのだろうか?


なぜかは分からないが、俺の研ぎ澄まされた生存本能がこう叫んでいるのだ。『もし他の奴らに警告すれば、俺たちは寝首を掻かれて全滅する』と。


だからこそ、俺は悲劇のヒーローとして、己の身を犠牲にしている。ここ一週間、俺はただ静かに、エリザベス嬢のサディスティックな『ゲーム(お遊戯)』に耐え忍んできた。


自称天才のエドワードは、俺が必死に送ったSOSのサインにもかかわらず、未だに彼女の裏の顔に気づいていない!

この前なんか、助けを求めて必死に目で『モールス信号』を送ったのに、「なんだそのふざけたウインクは! 俺を馬鹿にしてんのか!」とキレられる始末だ。


あいつはどうして、彼女とのいかがわしいゲームに平気で参加できるんだ? 何のために? 確かに報酬はデカいが、俺たちの尊厳(プライド)と引き換えにする価値があるのか!?


尊厳といえば、マイクの奴は……このゲームを明らかに楽しみすぎている。あの巨大な令嬢に踏みつけられるたび、あいつは恍惚としただらしない笑みを浮かべているのだ。


あの哀れな魂は、あの魔女の鎖から逃れることをとっくに諦めてしまったのだろう! 令嬢の『ペットのおもちゃ』としての役を、あまりにも完璧に演じきっている。


そしてイツロウ……理由は分からないが、あの逃げ足の早いチキン野郎だけは、いつもエリザベスとのゲームをうまく回避している。一体どうやってあの包囲網をくぐり抜けているんだ……。


俺は、この先生き残れるかどうか分からない。


――絶望の記録(ログ)、第0007号。終了。


俺は自室の薄暗いランプの灯りの下で、この耐え難い苦痛を綴った手記を書いていた。


タイトルは『俺の恐怖(マイ・フィアー)』。

まあ、特にインスピレーションも湧かなかったので、今の正直な感情をそのままタイトルにしただけだ。


確かなことは、エリザベスの裏の顔を知っているのは俺だけだということ。だからこそ、彼女は他の3人とは違い、俺にだけそのサディスティックな本性を完全に爆発させている。


彼女は俺に、とんでもなく恐ろしく、屈辱的なことを強要してくるのだ! 俺の髪と目がピンク色だからという狂った理由だけで、フリフリの『女の子の服』を着せられたり!


髪を可愛くセットされて、少女のように『おままごと(ティーパーティ)』をやらされたりするんだぞ!


そして一番の地獄は、俺が愛するもの……つまり『仲間たち』を守るため、この屈辱的な秘密を一人で抱え込まなければならないということだ!


仲間として俺たちは助け合ってきた。助け合いこそが希望を繋ぐのだ!


コン、コン、コン……。


「サンズ? 私ですわ、エリザベスよ。入るわね」


ドアがゆっくりと開き、俺の心臓は危うく止まりかけた。こんな夜更けだというのに。まあ、彼女にとっては自分の家なのだから関係ないのだろうが。


「私のかわいいサンズ。今夜も『最高(スーパー)』な夜を過ごす準備はできていて?」


彼女は極めて邪悪な意図を孕んだセリフを、あくまで天使のようなトーンで言い放ち、俺のデスクへと近づいてきた。


俺には分かっていた。これから何が起こるのか……。


「あらサンズ、本なんて書いているの? 私の可愛い『おもちゃ』が、自分に似合わない高尚な趣味を持っているなんて思わなかったわ」


彼女の声は冷酷な皮肉に満ちていて、その言葉は俺の心を深く抉った。しかし、悲劇を背負った真のヒーローとして、俺は静かに椅子から立ち上がり……そして、ベッドのど真ん中に仰向けに寝転がった。


「さあ……早く済ませてくれ……」

「……は?」

「焦らすなよ、エリザベス様(マスター)。あなたが俺に何を求めているのかは分かってる……。俺より圧倒的にデカくて強いその暴力的な力で、俺の身体(すべて)を蹂躙する気なんだろ? もうこの屈辱を胸に秘めておくのは限界だ……さあ、やるならやれよ!」


「な、何言ってるの!? ちょっとあなた、頭おかしいんじゃ——」


彼女の完璧な仮面が一瞬ひび割れたが、すぐに持ち直した。


「——ま、待ちなさい! さては、私をからかおうとする姑息な罠ね、サンズ? 私が行動に移せないとでも思っているの? あなたは私の『おもちゃ』よ、その身にしっかり分からせてあげるわ!」


そうだ、俺は彼女のおもちゃだ。彼女はこの運命の日を迎えるまで、俺をじわじわといたぶることを楽しんでいたはず。それなのに、ついに今夜、俺の『純潔』を奪う気になったというのか……。


俺は最高にドラマチックな悲壮な顔を作り、静かに目を閉じた。


「俺は覚悟ができてる」

「ほ、本当にするわよ……? っていうか、なんでいつもより声が弱々しくて……いや、妙に気持ち悪い声出してるのよ!?」

「あなたの歪んだ欲望に身を捧げると、完全に諦めたからですよ、エリザベス様」


そうだ、彼女はずっと前からこの瞬間を計画していたに違いない。


しかし、一つだけ疑問があった。普段の彼女なら、自分の行動をいちいち躊躇(ためら)ったりしないはずだ。それなのに、なぜ今、彼女は行動を遅らせている? なぜ、その自信に満ちた笑顔の下で、かすかに震えているじゃないか?


なるほど……理解した。これは間違いなく、新たな『心理的拷問』のテクニックだ!


実際に事に及ぶ前に、わざとらしく怯えた無垢な少女のフリをして見せているのだ……。なんて恐ろしいサディストなんだ!


「……う、うっ! あ、あなた運がいいわね、サンズ! 今夜は特別に見逃してあげるわ! 決して私が日和ったわけじゃないわよ、他に遊ぶおもちゃがいっぱいあるから、後回しにしてあげるだけなんだからねっ!」


ガチャッ、バタンッ!!


彼女は顔を真っ赤にしてそう叫ぶと、踵を返し、逃げるように部屋を飛び出していった。


へぇ、あの女が諦めるなんて? 彼女らしくないな……。


ああ、なるほど! これは俺に油断させるための高度なタクティクス(戦術)というわけか。俺が一番気を抜いた瞬間に、奇襲をかけるつもりなのだ。


恐ろしい強敵だ……。だが、このサンズ・クジラは騙されないぞ!

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