第22話 ナハトヴァルト領に到着! 楽な金稼ぎ!(の予定)(第3部)
「こちらがエドワード坊っちゃんのお部屋でございます」
「すみません、もう一回言ってもらえます?」
「はい?」
「その『エドワード坊っちゃん』ってやつ、もう一回お願いします」
豪華な個室を与えられただけでなく、「坊っちゃん」という甘美な称号まで手に入れたエドワード。この丁重に扱われている(見下されていない)感覚は、彼の肥大したプライドにとって決して悪い気はしなかった。
メイドは恭しく一礼して立ち去り、エドワードは広々とした自室に一人残された。
彼はまるで、ホテルのサービスが完璧かどうか粗探しをする口うるさい旅行客のように、部屋中をねっとりと物色し始めた。もっとも、仮に不満があったとしても、この強大な宿主に文句を言う度胸など彼には1ミリもないのだが。
その時、棚の奥で何かがキラリと光り、彼の目を引いた。わずかな光だったが、彼の強欲な好奇心を刺激するには十分だった。
「うおっ……すげえ。ちょっとくらい試着しても怒られないよな?」
他の三人も、エドワードと同じような豪華な部屋を割り当てられていた。彼らは同じ廊下に並ぶ隣人同士で、部屋はなぜか『背の低い順から高い順』に並んでいた(エドワードにとっては地味な嫌がらせである)。
コンコンコン。
「エドワード坊っちゃん。エリザベス様がお呼びです。お入りしてもよろしいでしょうか?」
返事はない。ただ、ドアの向こうからガシャン、ドスンと、重い金属の足音だけが響いてくる。
「イツロウ坊っちゃん、どうかドアを開けてください……」
「マイク坊っちゃん、いらっしゃいますか? 入りますよ」
どうやら、サンズだけはメイドに呼び出される手間を省いていたようだ。彼はすでに部屋を出て、一足先にエリザベスの元へと向かっていたのだ。
応接室では、サンズとエリザベスが向かい合って座っていた。サンズは相変わらず、彼女の存在が鬱陶しいと言わんばかりの険しい(中二病全開の)目を向けている。
エリザベスは、これから始まる会話に少し身構えるように、華奢な肩を揺らした……。
「ええと……サンズ、でしたわよね?」
「ああ。お前は俺のことを『サンズさん』と呼べ」
「そう。あなたのお友達が来る前に、ここでいくつか『ルール』を決めておきましょうか」
次の瞬間。
エリザベスは音もなく立ち上がり、サンズの髪を乱暴に鷲掴みにし、ソファの背もたれに強引に押さえつけた。彼女の美しすぎる顔が、サンズの顔からわずか数センチの距離に迫る。
(な、何しやがる!? こいつ、さっきまでの聖母スマイルはどこ行った!? 目が完全に『ガチでヤバい奴』のそれじゃねえか!)
サンズの脳内で、警報がガンガンと鳴り響く。
「よくお聞き、底辺のクソガキ。二度は言わないわよ。あなた達には、私が満足するまでたっぷり道化を演じてもらうわ。他の三人はまだ犬のように従順そうだけど、あなたには少しばかり『教育』が必要みたいね」
(こえーよ! 髪引っ張る力がガチすぎて頭皮ちぎれそうで泣きそうだわ!!)
「まずは、その汚い口から『アンネステリア』という名前を出すのをやめなさい。あの能無し女が私に勝てる要素なんて、この世に一つもないのよ。分かった?」
サンズは純粋な恐怖とパニックから、ぶんぶんと必死に首を縦に振った。
(こんな巨大な女に殺されてたまるか! 俺の身長160センチそこらなのに、こいつ絶対175センチ、いやそれ以上あるだろ! 勝てるわけねえ!)
「いい子ね。それじゃあサンズ、これから仲良くしましょうね? もちろん、今のお話は私とあなただけの『可愛い秘密』よ」
エリザベスがパッと手を離し、元の席に優雅に座り直したちょうどその時、残りのメンバーが応接室にやって来た。
なんと彼らの体には、ごつごつした鋼の鎧のパーツがくっついている。部屋にあった観賞用の騎士の鎧を試着したいという誘惑に負けたらしい。
メイドたちが必死に脱がせるのに手こずったのか、彼らの肩当てと膝当てだけが外れずに残された、何とも間抜けで滑稽な姿だった。
エリザベスは、ようやく彼らに会えて嬉しいとでも言うように、見事な天使の微笑みを浮かべた。
「……おい、サンズ。お前ションベン漏らしてね? ズボン濡れてんぞ」
鎧姿のイツロウが、怪訝な顔で指摘した。
あまりの恐怖と屈辱に、サンズは孤独な一筋の涙を必死にこらえながら震えていた。
そう、彼は先ほどの『教育』で、完全にちびっていたのである。
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