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フォー・ブロス・イン・アナザーワールド!〜チートなし、ハーレムなし…ただ4人のダチが自分たちだけでやっていくだけ!〜  作者: Ronin_13
第4章 — 前進して色々発見してるのに、誰からも認められない件!(※ただし、魅力的なオファーを除く)
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第21話 さらばアネステリア、こんにちはお城暮らし!(第3部)

張り詰めた空気が流れる。アンネステリアは冷や汗を流しながら俺たちから視線を逸らし、カウンターの上にそっと……ずっしりと重いヴェネス硬貨の入った革袋を、賄賂(口止め料)のように滑らせてきた。


おい、これで俺たちの口を塞ごうってのか?


「マジかよ? いくらなんでも、底辺の俺たちすらドン引きするレベルで地に落ちたな、アンタ」

イツロウが汚物を見るような目で呆れ返る。


「お願い……その話は後にしてくれないかしら? 今はほら、大切なお客様がいらしてるんだから……」


エドワードは一歩引き、大人しく定位置に座り直した。イツロウもそれに倣って隣に腰を下ろす。


なんだかんだ言って、あの裁判沙汰になった後も俺たちを拾ってくれたのはアンネステリアだけだ。散々ブラック労働でこき使われているとはいえ、この程度の義理は果たしてやってもいい。


「コホン」

領主が貴族らしく、優雅に咳払いをした。


「さて、アンネステリア殿。私がここへ参った本題に入らせていただいてもよろしいかな?」

「ええ、もちろんよろしいですわ、ナハトヴァルト卿」


男は紅茶を一口啜り、シルクのハンカチで優雅に口元を拭った。


「最近、このスディスタ村に少々風変わりな訪問者たちがやって来てね。なんでも、裁判沙汰にまでなったと聞いているのだが」


俺たち4人は、領主の非難めいた視線を避けるようにスッと下を向いた。


「私の領地の風紀を乱した罪で、当初は『処刑』してやろうかと考えていたのだよ。彼らが受ける依頼のせいで、我が領地の利益が軒並み下がっているという報告も受けていたしね」


(((ヒィッ!? 殺される!!)))

その恐ろしい宣告に、俺たちは滝のような冷や汗を流しながら、ゴクリと喉を鳴らした。


「お、お待ちください、ナハトヴァルト卿! 彼らをどうか――」


「――だがしかし。彼らはその後の目覚ましい活躍と寛大な振る舞いによって、自らの過ちを清算したと聞いた。魔王の欠片の討伐に貢献し、魔法の釜から溢れた金貨を『村人たちに全額寄付する』という慈善活動を行ったそうじゃないか。欲に溺れない、実に気高く、素晴らしい行いだよ」


その言葉を聞いた瞬間、俺たちの顔から処刑の恐怖がスッと消え去り、深い安堵……そして抑えきれない『ドヤ顔』へと変わった。

(マイクの自爆のせいで)底辺まで落ちていた俺たちの評判が、なんと美談として回復したのだ!


アンネステリアが『よくやったわね』とでも言いたげな、誇らしげな姉のような視線を向けてくる。意外にも、それは悪い気はしなかった。


「つまり、ナハトヴァルト卿はわざわざ彼らを労うためにこの村へ?」

「ええ。ですが、目的はそれだけではありません。彼らを私の領地の城へ招待し、ある仕事を『直接依頼』したいのです」


「たしかに彼らは村で大きく成長しましたし、私の書店の経営もとても助けてくれて……ちょっと待ってください、今なんと?」


領主はエドワードに羊皮紙を手渡した。残りの3人もエドワードの背後から身を乗り出し、その文面を食い入るように覗き込む。


『クエスト:スディスタ領主の娘、エリザベス・フォン・ナハトヴァルトの世話役(護衛)として城に滞在すること。高額報酬、豪華な衣食住完備』


俺たち4人は顔を見合わせ、目玉がこぼれ落ちそうになるほど目を丸くした。やがて、その唇がゆっくりと、耳まで届くほど三日月型に弧を描いていく。

嬉しさのあまり、ガチで涙が出そうだった。


この世界に来てからというもの、手紙(依頼書)といえばロクな目に遭わない絶望のフラグだった。

だが、もしこのクエストに裏がないのなら……俺たちはついに、超大当たり(ジャックポット)を引いたんだ!


一方、アンネステリアのほうは、自分の世界が音を立てて崩壊するのを感じていた(より正確に言えば、便利な『無料の労働力』が失われる音だが)。

だが、彼女はまだ諦めてはいなかった。


彼らとは(なんだかんだ言って)良い時間を過ごしてきた。たとえ領主が自分には到底出せないような好条件を提示したとしても、彼らがこんな物質的な欲求に釣られて、自分を見捨てるはずがない。心の奥底で、彼女はそう固く信じていた――。


「「「「引き受けます(即答)」」」」

俺たちは1ミリの躊躇もなく、完璧なユニゾンで即答した。


「なっ……!? ちょっと、ダメよ! そんなの絶対に許さないわ!」

「いや、全然引き受けられるけど」


「でも、あなたたちにはまだ早すぎるわ! それに、ここでの生活もそんなに悪くないじゃない! こういうおいしいクエストには、絶対に裏の罠があるって相場が決まってるのよ!?」


「マジ? まぁ、いつも通りなんとかなるっしょ。それに、城に行けば若い貴族の令嬢のお世話をするだけだしな。この本屋で俺たちを奴隷のようにこき使ってる『ブラック雇い主』よりは、よっぽど愛想がいいに決まってる」

「こき使ってなんかないわよ!!」


領主は彼らの即答にとても満足そうだった。

なぜアンネステリアがここまでこの少年たちに執着しているのかは分からなかったが、これならきっと任務も立派にこなしてくれるに違いない!


「お願い、みんな! エドワード、その依頼を断って! 断ってくれたら、私の『とっておきの秘密』を全部教えてあげるから! 私の本当の名前とか、この世界でどんなすごい地位にいるか、気にならないの!?」


アンネステリアはエドワードの両肩をガッチリと掴み、マラカスのようにおもいっきり前後に激しく揺さぶりながら必死にまくしたてた。だが、エドワードは完全に無表情(無関心)のまま揺られていた。


「……わかった。じゃあ今ここで、アンタが何者なのか全部言ってみな。そしたら少しは(1秒くらいは)考えてやるよ」


アンネステリアはついに、勝ったとばかりにドヤ顔で微笑んだ。自分の究極の切り札が通用したと確信して。


「ふふっ、それじゃあ耳の穴かっぽじってよーく聞きなさい、私の可愛い弟よ!」

「弟じゃねえよ」


「私の本名は『アンネステリア・アントワネット』! ノルディスタの貴族よ! ただちょっと、本屋の店主としての庶民の人生を楽しんでみたかっただけなの! 私の実家はノルディスタ州一帯を統治している地方貴族で、もちろんこの村もその管轄下なのよ!」


テンションMAXで身を乗り出し、後光を背負うように自らの正体を明かすアンネステリア。

対する俺たち4人は、あんぐりと口を開けたまま——。


——深海魚のような死んだ目で、完全に『虚無』になりきっていた。


「だからね! もし残ってくれるなら、うちの領地で1〜2週間、ご褒美のバカンスをプレゼントしてあげてもいいわよ! もちろん、それが終わったらまた楽しくこの本屋で働くって約束でね! ねえ、どう? これなら文句ないでしょ!?」


重苦しい、絶対零度の沈黙が降りてきた。

それを破るのは、領主が呑気に紅茶を啜るカップの「カチャッ」という音だけだ。


「……つまり」

エドワードが、地獄の底から響くような極めて冷たい声で言った。


「アンタが『超金持ちの貴族』なのに……俺たちは今までずっとタダ働き同然でこき使われて、男4人で狭いベッドに押し込まれてたってことか。金あるなら最初からちゃんとしたベッド買えよ、このドケチクソアマ」


アンネステリアの目が、取り返しのつかない絶望で限界まで見開かれた。

ちょうど領主がティーカップを置いた。これ以上、俺たちがここを去る理由を正当化する必要はどこにもなかった。


自分の失言で完全に墓穴を掘り、頭が真っ白になったアンネステリアは、目の前で繰り広げられる光景をただ無力に見つめることしかできなかった。


4人の従業員——いや、彼女の可愛い教え子たちが、光の速さで次々と私物をまとめ、未練の欠片もなく店を出て行くのだ。

彼女の目から、たまらず後悔の涙がこぼれ落ちる。それは辛い別れだったが……まあ、完全に『自業自得』である。


領主は最後に紅茶を飲み干すと、床に崩れ落ちてボロ泣きするアンネステリアに向かって、気品あふれる挨拶を残した。

そして、4人のバカたちを案内し、気品と威厳に満ちた豪華な馬車へと乗り込ませる。


いざ、ナハトヴァルト領主の館へ出発だ!

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