第20話 等価交換…良いものと良いもの~残念ながら (第3部)
悪戯好きのレプラコーンが一歩前に出ると、残された三人はピッタリと息を合わせて一歩後ろへ下がる……。
「おや! 僕の小さなトリックと戦う気はなくなっちゃったのかな?」
「どこがトリック(魔法)だよ! ただの物理(暴力)で吹っ飛ばしただけじゃねえか!」とエドワードが叫ぶ。
ズドォォォン……!
「今の音、あっちからだ! 絶対マイクが地面に墜落した音だぞ!」
サンズが音のした方へ急いで向かおうとしたが、すぐにビドゥイユに立ち塞がられた。
「これ以上先へ行けると思わないことだね! 友達のところへ行きたいんだろ? 残念だけど、まずは僕の悪戯を突破しなきゃならないよ!」
サンズは、向かっていった時と全く同じ猛スピードで後ずさりした(ムーンウォークのように)。
「くそっ。エドワード、お前の出番だ! いつものとっておきの作戦を出してくれ!」サンズが泣きそうになりながらすがりつく。
「そんな簡単に言うなよ!? いつでも都合よく奇跡の作戦を思いつけるわけねえだろ!」
イツロウが、世界の命運を背負った主人公のように深刻で悲痛な面持ちでエドワードに近づいた。
「実を言うと、一つだけ手はある」
「一つだけ手がある? 本気か?」
「ああ、大マジだ」
「でもそれやったら、二度と鏡で自分の顔を見られなくなる(男としてのプライドが完全に死ぬ)ぞ。分かってんのか?」
「ああ、背に腹は代えられない」
この息を呑むようなドラマチックな最後のやり取りの後。
イツロウの口から放たれたのは、たった二つの単語だった。自分の耳を疑うレプラコーンの目の前で。
「『ゲイン・スピード(速度上昇)』!!」
三人の悪友は、文字通り脱兎のごとく逃げ出した。彼らが立っていた場所には、漫画のように三人のシルエットの形をした砂埃だけが残されていた。
最もシンプルな戦略は、往々にして最も効果的である。イツロウの速度バフのおかげで、彼らは一瞬にしてその場から逃亡することに成功したのだ。
――遠く離れた場所で、マイクはちょうど地面のクレーターの中で意識を取り戻し、来た道を引き返しているところだった。彼が目にできたのは、完全に混乱して立ち尽くすレプラコーンと……霧の中へ卑怯にも猛スピードで消えていく親友たちの後ろ姿だけだった。
「あのクソ裏切り者どもぉぉぉっ!!」マイクの血を吐くような絶叫が、森に響き渡った。
――その日の終わり。
三人の裏切り者は酒場にいた……友人を置き去りにした罪悪感に(ほんの数パーセントだけ)苛まれながら。彼らはその深い悲しみを……ピッチャーで頼んだ『無料のただの水』で紛らわせていた。
バーーーーン!!
勢いよく酒場の扉が開け放たれる。酒場に一瞬の静寂が降りた……が、それはすぐに割れんばかりの歓声へと変わった!
「信じられねえ! 金貨がパンパンに詰まった袋を持ってるぞ!」
「本屋のドスケベ小僧じゃないか!? 五体満足で生還した上に、大金持ちになって帰ってきたぞ!」
「クエスト達成だな、若き冒険者よ! お前らのパーティーが三人だけで手ぶらで帰ってきたから、てっきり死んだものかと――」
「あとの三人はどこだ」マイクが、凄みのある冷たい声で言葉を遮った。
女将はその氷のようなトーンに首を傾げたが、彼がしっかり報酬を持ち帰ってきたのを見て、それ以上は追求しなかった。
「あそこよ」
彼女が指差した先、店の奥のテーブル。そこには、ただの水をすすっている三人の臆病者が身を寄せ合って座っていた。
マイクは彼らのテーブルへツカツカと歩み寄り、下からテーブルをドンッ!と蹴り上げて注意を引いた。
「このクソ野郎ども! 俺を見捨てやがって!!」
サンズが顔を上げる。その表情は数秒のフリーズを経て、わざとらしい1000ワットの満面の笑みへとパァッと明るくなった。
「みんな! マイクが帰ってきたぞ!」
エドワードはマイクの肩にガシッと手を置き、嘘くさい感動の涙を浮かべた。
「よく無事に逃げ延びたな……しかも、こんなどデカい報酬まで持ち帰ってくるとは。お前は本当に、このグループで一番義理堅い最高の親友だよ」
挙句の果てに、イツロウはただの水が入ったグラスを高く掲げ、まるで戦友の帰還を祝うかのように、酔っ払いの歌を陽気に歌い始めた。
「どんだけ図太い神経してんだ! てめえらの薄汚い魂胆は見え透いてんだよ!」マイクが唸る。
「魂胆ってなんだよ? 俺たちには選択肢がなかったんだ! 分かってくれよマイク、俺たちはお前みたいに強くも頑丈でもないんだ……」エドワードが必死に被害者面をして弁解する。
サンズは悪代官のように両手をこすり合わせ、金袋をじっと見つめながらうっすらと涎を垂らし始めた。
「なあ、マイク……許してくれよ。あんな風に逃げちまったこと、本当に反省してるんだ。出発前に約束した通り、お前の生還をささやかなご馳走で祝おうぜ!」
エドワードとイツロウも、神妙な面持ちで深く頷いた(目は完全に金袋に釘付けだったが)。
「……そうだな。お前らを許さないなんて、俺にはできないよ……」マイクがゆっくりと口を開いた。「それに、このまま俺が報酬を持ってたら、お前らがその綺麗な言葉で俺を言いくるめて、金を巻き上げようとしてくるリスクが常にあることも分かってる。俺は頭が悪いから、お前らの詐欺には勝てない」
マイクは一拍置き、金貨の入った袋を高く掲げ、大きく息を吸い込んだ。
「だからこそ! 俺がまだ怒りで我を忘れている今のうちに……俺たち四人が過去にこの村で起こしたすべての迷惑行為を許してもらうため、この報酬の【全額】を村の基金に寄付する!!」
マイクはそう絶叫し、酒場のフロアのど真ん中へ、金貨の袋を思い切りぶん投げた!
「「「やめろぉぉぉっ! 報酬だけはぁぁっ!!」」」
サンズ、イツロウ、エドワードの三人が、目から血の涙を流し、この世の終わりのような完璧なコーラスで絶叫した。
しかし、酒場の客たちはマイクの突然の気前の良さを大絶賛していた。
「なんだ、お前ら結局そんなに悪い奴らじゃなかったんだな!」
「真の英雄だ! なんて純粋な心の持ち主なんだ、若者よ!」
「私と結婚して、マイク!」
マイクにとって、これはほんの仕返しに過ぎなかった。彼は自分から金を奪おうとする三人の心を完璧にへし折り、最高の復讐を遂げたのだ。
一方の三人にとっては……たしかに友人のこの行動のおかげで、村での最悪な評判(村八分の危機)は挽回できたものの……。
それは、口の中がカラカラになるほど、ひどく敗北の味がする勝利だった。
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