第19話 狡猾な暗殺者たちの帰還!(第2部)
「気を取り直して聞くが! お前ら二人、どうやってあの厳重な刑務所から抜け出したんだ? 脱獄したんだろ、この悪党ども!」
「違うわよ。私たちは今、手厚い『更生プログラム』を受けているの。まだ16歳だから、政府も未来ある若者をそう簡単には実刑にしないのよ」とエレナが誇らしげに言った。
「お前ら二人、16歳(同年代)なのか!? お前の兄貴、無駄にガタイがデカすぎるだろ! 年齢と見た目が全く合ってないぞ!」
「あなたがただ単に、悲しいほどチビなだけだと思うけど」
「違う!! 俺はまだ絶賛成長期(という名の停滞期)なんだよ!」
数分後。警戒心をむき出しにする俺たちは、犯罪を犯した二人の悪党の、この「つましい」邸宅へと招き入れられた。
内装はとてつもなく豪華だった。きっと彼らの暗殺という名の「勤労」によって「苦労して」稼いだ血塗られた金で買ったに違いない。それに引き換え、世界を救うために戦っている俺は、むさ苦しい男3人と一緒に狭い部屋の安ベッドに押し込められているというのに。
(クソったれ! なんで俺はちょっとした問題を起こしただけで、最悪の下働きを押し付けられ、狂犬病だの変態だの変な二つ名をつけられ、グループの功績にもかかわらず評判を地に落とされてるんだ!
それなのに、こいつらは自他共に認めるプロの暗殺者・犯罪者なのに、こんな豪邸で優雅に人生エンジョイしてやがる!!)
「で、あんたたちはこのボロ屋(豪邸)に住んでるってわけか?」俺は精一杯の強がりで皮肉を言った。
「ええ、その通りだ」と、ゾルネリウスが優雅に答えた。
「まあ悪くないが、もっとマシな場所にも住めたんじゃないのか(ギリギリ)」
ゾルネリウスの額にはすでに青筋がピキッと浮かんでいた。
「お元気そうで何よりです、ゾルネリウス卿、エレナ様。ですが、私たちはもともとクエストの荷物をお届けに参りましたので」と、アンネステリアが丁寧なお辞儀と共に割って入った。
「お察しいたします、アンネステリア嬢。エレナ、彼らの報酬を持ってきてくれ」
「ええ、もちろんよ、お兄様」
(信じられない。この人殺しのチンピラ二人が『様』や『卿』呼ばわりされてるなんて。きっと温室育ちの楽な人生を送ってきたんだろうな。俺たちなんて、はした金と皆無の承認欲求、そしてゼロに等しいリスペクトのために毎日犬みたいに泥水すすって苦労してるってのに!)
「よし、急ごうぜアンネステリア、とっととズラかるぞ。これ以上の理不尽な光景には耐えられない」
「あんたの好きにしなさい、エドワード」
ゾルネリウスが妙な目で俺を観察していた……待てよ、あいつ、俺を見下してやがる!
「さて、若きエドワードよ。君たちの武勇伝は耳にしているぞ。老魔導師マクスウェルが『魔王の欠片』を撃退するのを手助けしたそうだな。まあ、君のその細腕が何かの役に立ったとは到底思えないが、その無謀な勇気には感心したと言っておこう。あの恐ろしい戦いに『参加した』という事実だけで、人は見かけによらないということが見事に証明されたよ」
「いや、俺が個人的に全部の仕事(タリスマンの魔力供給と立案)をやったんだが」
豪邸の客間に、重苦しい沈黙が落ちた。気まずい……。
ゾルネリウスは嘲笑するような、哀れむような表情でフッと顔を背けた。(待て、あいつ、俺の言葉を1ミリも信じてないのか?)
「もちろんよ、エドワード! あんたの言う通り、本当によくやったわ。でも一番大事なのは『参加すること』に意義があるってことよ!」と、アンネステリアが幼稚園児を慰めるように声を張り上げた。
「やめろ、そんな同情の目で俺を見るな! 俺は本当のことを言ってるだけだ!」
ゾルネリウスはさらにクスクスと上品に笑った。俺の信憑性はまたしても無惨に踏みにじられた。
少しして、兄との短いヒソヒソ話の後、エレナがクエスト報酬の入った重い袋と、湯気を立てる高級な紅茶をトレイに乗せて持ってきた。
彼女もまたクスクスと笑っていた!(あいつ、俺が名を売るためにくだらない嘘をついたと吹き込みやがったな、このクソ詐欺師め!)
「紅茶ですか? 頼んでいませんが」とアンネステリアが尋ねる。
「ええ。でも、せっかくわざわざお越しいただいたのだから、お茶くらいお出ししようと思いまして」とエレナは嫌味のない優しい笑顔で答えた。
「へえ、少なくとも他人に対するおもてなしの基本は知ってるみたいだな。元チンピラにしては上出来だ」
暗殺者兄妹の額に再び青筋がピキッと浮かんだ……。
(……ちょっと待てよ?)
俺の天才的な脳裏に、ある恐ろしい仮説が閃いた。
「どうしたの、エドワード? 紅茶がお気に召さない?」
「アンネステリア、今すぐそのティーカップを置け」
(気づくべきだった。こいつらはプロの暗殺者だ!
ダンジョンでの屈辱を晴らすため、絶対にこの紅茶に『致死毒』を盛ったに違いない。
だが不運だったな、俺のようなIQ200の若き天才の目は、そう簡単には誤魔化せないぜ。)
「危うく騙されるところだったぜ、この卑劣で陰湿なクソ悪党どもめ……!」
エレナとゾルネリウスは同時に眉をひそめた。(わけがわからないフリをする奴らの典型的な三流リアクションだ。)
「私の紅茶がどうかしたのかい、被害妄想の小僧?」
「妹がわざわざ高級な茶葉で淹れてあげたのに、私たちを侮辱する気!?」
ガシャァァァッ!!!
俺はハリウッド映画の英雄のようにテーブルを蹴り上げ、ティーポットと熱々の紅茶が入ったカップを奴らの顔面に直接ぶちまけてやった!
「きゃああっ! 熱いっ!」
「め、目がぁぁっ! グアアアッ! なぜいつも俺の目ばかり狙うんだ貴様は!!」
よし、これで奴らの無力化に成功した!
「エドワード、何すんのよ!? お茶を出してくれた人にする態度じゃないでしょ!」
「相変わらずナイーブだな、アンネステリア」
「はあ!?」
「こいつらは暗殺者だぞ! 見え見えだろ。俺に屈辱を味わわされた腹いせに、お茶に毒を盛ったに決まってる。だが残念だったな、俺には奴らの浅はかな策略などお見通しだ!」
エレナは紅茶でずぶ濡れになり、ゾルネリウスは両目を押さえて痛みにのたうち回っている。今こそ、奴らに自らの毒を飲ませる時だ!
俺はよけておいた自分のティーカップを手に取り、床に倒れ込んでいるエレナにズカズカと近づいた!
ゾルネリウスは自分のくだらないプライドのせいで、大事な妹を失うことになるんだ! 思い知れ!
俺は怯える妹の顎を掴み、無理やり紅茶を飲ませた!
「この恐るべきエドワード・ニシムラに逆らって、タダで済むと思うなよ! フーハハハハハ!」
(数秒後には、泡を吹いて毒が効いてくるはずだ。)
アンネステリアは、ゴミを見るような心底軽蔑したジト目で俺を見ていた。
(……もう30秒経ったぞ……遅効性の毒に違いない。1分後には確実に効果が出るはずだ……。)
エレナは顔を真っ赤にして俺を見上げていた……。熱い紅茶をかぶったせいで、ただでさえ薄着のパジャマが肌にピタリと張り付き、完全に透けてしまっている胸元を両手で必死に隠そうとしている。(……あれ? 泣いてるのか?)
(おい、毒は? いつ血を吐くんだ?)
「……この、最低のド変態(鬼畜)」とアンネステリアが氷点下の声でポツリと呟いた。
「な、何ィ?」
背後で殺気が膨れ上がり、目を真っ赤に充血させたゾルネリウスが立ち上がり、俺の肩に岩のように重い手を置いた。
「彼女は言ったぞ。『濡れたパジャマ姿の妹に無理やり液体を飲ませて喜んでいる、汚らわしい小児性愛者(ロリコン変態野郎)』とな!!」
ああ、それが俺の聞いた最後の言葉だった……。
その後、視界が暗転し、病気で寝込んでいる友人たちの隣にゴミ袋のように放り込まれたってわけだ。まあ、病気の友人たちと言っても、彼らは一晩ですぐに全快したが。
対照的に、俺は激怒したゾルネリウスにボコボコにされ、全身打撲の重傷を負っただけだ。そして苦労して手に入れたはずのクエストの報酬は、割れた高級ティーポットと磁器のカップの弁償代として、全額(むしろ赤字で)消え去った……。
アンネステリアは「自業自得よ」と吐き捨てて、初歩的な回復魔法すら俺にかけるのを拒否した。彼女はこの完全に俺が不利な状況を悪用して、俺を絶対服従の「可愛い弟」扱いすることを楽しんでいた。そして結局のところ、今回ばかりは俺もそれで妥協する(甘んじて受け入れる)しかなかった。
この世界では、過去の経歴(元暗殺者)だけで人を判断するのはあまり良いことではないらしい。
特に、家主からの贈り物やおもてなし(紅茶)は、余計な勘繰りをせずに素直に受け取るのが賢明だ。
またしても、俺のファンタジー世界に対するテンプレ知識と偏見が高くついた。
一番最悪なのは、この大失敗をやらかしたのがあのアホのサンズではなく、この『天才の俺自身』だということだ!
自業自得としか言いようがない……。
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