第15話 最初のボスとバトル? いや、パスで。(第2部)
突然、遠くからガチャガチャと金属が触れ合う大きな騒音が聞こえてきた。
「早くしろ、急げ!」
4人はキャンプの準備の手を止め、騒音が響く遠くの方へと身をかがめて進んでいった。
蹄の音や、大勢の重装備の男たちの足音が聞こえる。彼らは生い茂る茂みの中から、その光景を息を殺して観察した。
「これほどの事態に備えるのは、久しぶりじゃのう……」
そのしわがれ声、エドワードには千人の中からでも聞き分けられた。あの忌々しい老魔術師、マクスウェル・ヴァネステリアだ!
3500万ヴェンヌの報酬を合法的に横取りし、彼らが今直面している極貧生活のすべての元凶となった張本人を前にして、エドワードの額に青筋がピキッと浮かび、頭の中にはただ一つ「どうやって落とし前をつけさせるか」ということしかなかった。
「頼りにしているぞ、マクスウェル殿。もし我々が失敗すれば、この世界の終わりになるやもしれん……」
「ご心配なく、隊長殿……最近、私はとても運がいいのです(他人の報酬を奪ったおかげでな)。この敵が噂の『ナンバー7』でさえなければ、脅威を退けることは十分に可能でしょう。そして当然、報酬はありがたく頂戴するつもりです」
その老人の最後の一言(報酬)に、4人の耳は犬のように大きくピクッと動いた。彼らの目に、一瞬にしてギラギラとした強欲さが満ちる。
「それに、魔力が不足した場合は、このマナ転送の護符を使って補充すればいい。我々の隊には、膨大な魔力を持つエルフが何人もおりますからな!」
「その通りです、隊長」
4人は茂みの奥で頭を寄せ合い、円陣を組んでこれからどうするかをヒソヒソと話し合った。
選択肢はいくらでもある。この戦いにコバンザメのように参加すれば大金のおこぼれが手に入るかもしれないし、運が良ければただの普通のモンスターで、魔王の魂の欠片ではないかもしれない。
それとも、自分たちだけで報酬を独り占めしようとするか? さらに言えば、世界からの名誉を挽回するか?
「よし、引き返したい奴は?」とエドワードが真顔で尋ねた。
「俺」
「俺」
「俺」
「完璧だ。行こうぜ」
一切の躊躇もない見事なシンクロ率。そして確かな足取りで、グループはクルッと180度踵を返し、勝つ見込みが高そうだが命の危険があり、おそらく自分たちには1ヴェンヌも入らないであろう報酬のための戦いから、大急ぎで離れていった。
――しかし、振り返った彼らの目の前には、悪魔の角と長い黒髪を持つ女が静かに立っていた。
彼女は絶望的なほど美しく、そして恐ろしかった。その漆黒の瞳は、まるで無力な獲物を前にした捕食者の目でグループを値踏みしていた。
彼女は、息を呑むような邪悪なオーラを放っていた。彼女が歩みを進めるたび、周囲にあるすべてのものが死に絶え、生命力を失っていくようだった。
木々は急速に樹液を失って枯れ木となり、足元の可憐な花は見る間にどす黒く変色して灰となる。まるで、彼女の周囲には絶対的な「死」だけが偏在しているかのようだ。
「なんて甘美な匂いかしら……これは私への恐怖? それとも、称賛かしら?」
ラスボスにふさわしい威厳を纏い、彼女がゆっくりとグループに近づくにつれ、グループは顔面を蒼白にしてジリジリと後ずさりした……。
「ねえ、人間に近い魔力ポテンシャルを持ったドワーフ(小人)なんて、今まで会ったことないわ。なんだか、あなたたちからは何の魔力も感じないのだけれど」
グループはもう一度大きく後ずさりした。悪魔の女の声は、その堂々たる歩みとは裏腹に、急に自信がなくなっていた。
「ちょっと、私から逃げても無駄だって分かってるでしょ? だから、せめて自己紹介くらいはさせてちょうだい。ちょっと! 私が話しかけてるんだから聞きなさいよ! せめて集中しなさい、私は魔王の魂の欠片なのよ! 私こそがナンバー7! それとも、私の他の数ある恐ろしい呼び名で呼んでほし——ちょっと! 走っても無駄だって言ってるでしょ! 無視すんな!!」
友人グループは、このガチャゲーの絶望的なラスボスから、一目散に反対方向へと猛ダッシュで逃げ出した。せっかくのボスの登場シーンは完全に台無しである。
少なくとも……3人は逃げ出した。
「お前ら、逃げろ! 俺がこいつを食い止める!」
「やめろ! マイク!!」
マイクは自分の唯一の命綱である『青銅の盾』を未練もなく放り出し、この女に正面から抱きつくために身を投げ出していた。仲間が逃げる時間を稼ぐための、尊い自己犠牲……のように見えた。
残りの3人は急ブレーキをかけて立ち止まった。悪魔の女の反応は早かったが、彼女は両腕を広げ、無防備に自分を引き留めようとするこの少年の行動に完全に驚愕していた。
「おいマイク、戻ってこい! あいつの周りに死が広がってるのが見えないのか! 頼むから戻ってこい!」
サンズが本物の涙を流しながら叫んだ。
マイクは、悪魔の細くて信じられないほど柔らかい腰へのホールドを、さらにギューッと強めた。
「俺のことは置いていけ、俺がこいつをガッチリ押さえてるから……ハァ、ハァ……ふぅむ、なんてすべすべの肌だぁ~……たまんねぇ……」
「な、何!?」
悪魔の女は驚愕し、完全にフリーズした。
彼女は顔を真っ赤にして赤面し始め、この密着した体勢と、マイクの異常なほどのしがみつき方(と荒い鼻息)に激しく戸惑っていた。ラスボスの威厳はもはやゼロである。
(ちょっと待て……あいつ……)
「マイク、頼むから持ちこたえてくれ! 今すぐ助けを呼んでくる!!」
親友の変態的行動に全く気付いていない純粋なサンズは、戦闘準備をしている兵士たちを見つけるため、涙を振り乱しながら茂みの奥へと全力で走っていった。
「は、離しなさいよ! この変態小僧っ、女性に対してこんなふうに抱きつくなんて……ヒィッ! どこ触ってんのよ!」
二人は揉み合いの末、結局、非常に際どい(アウトな)体勢で地面に倒れ込んだ……。マイクの息遣いがどんどん荒くなる一方で、悪魔の女は死のオーラを出すのも忘れ、恥ずかしさのあまり嬌声を漏らしてジタバタと暴れていた。
(とんだ便乗野郎だな……)エドワードが、深海魚のような死んだ目で呟いた。
(自分の命を天秤にかけてまで女に触りたいか。マジで恥知らずだぜ……)イツロウが呆れ果てて付け加えた。
その瞬間。
「みんな、待たせたな!!」
サンズが、老マクスウェル、そして完全武装の魔術師やエルフたちを引き連れて、ヒーローのように戻ってきた!
最悪のタイミングでの、最悪の構図。
戦い(とマイクの社会的な死)は、まだ始まったばかりである。
ぜひページ一番下の【☆☆☆☆☆】から星評価やブックマークでの応援をお願いいたします!
皆様の応援が執筆の原動力になります!




