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第11話 野郎ども VS ゾルネリウス(第1部)

二人は息を殺していたが、石壁に反響する彼らの狂乱したヒソヒソ声は、ゾルネリウスの耳にしっかり届いていた。


「やれやれ。恐怖で震え上がっているのか? まあ、これから死ぬのだから無理もないが、もう少し歯応えというものが欲しかったね」


柱の裏から聞こえるヒソヒソ声が、さらに大きくなった。


ゾルネリウスはついに痺れを切らした。コツン、コツンとブーツの音を響かせながら前へと歩み寄る。


「おい、聞こえているのか――」

「今だ!」

「サンド・ブラスト(ただの物理的な砂かけ)!」


エドワードが隠れ場所から飛び出し、暗殺者の顔面に大きく手のひらを突き出して必殺技のように叫んだ。


ファサッ……!


一握りの灰程度の、しょぼい砂埃が彼の手から放たれ……そして悪魔的な精度で、ゾルネリウスの両目にダイレクトに直撃した。


「ギャアアアアッ! め、目がぁっ! 目がぁぁぁっ!!」


恐怖に怯える幼女のような甲高い悲鳴が、大広間に響き渡った。


優雅な暗殺者は短剣を取り落とし、両手で顔を覆いながら、床の上を右へ左へと猛烈な勢いで無様に転げ回った。

大きなマントの下から見えたのは、男子高校生二人よりも頭一つ分は軽く背が高い青年の姿だった。フードから乱れた前髪が覗いている。


だが、完璧な隙(オープン)だ。エドワードとイツロウは一瞬の躊躇もなく、最も近い出口へ向かって全力疾走を始めた。


「どこへ行くつもりだ、このクソガキどもが!」


バサッ!と風を斬る布の音が響いた。瞬きする間に、ゾルネリウスは石のアーチの前に重々しく着地し、彼らの退路を完全に塞いだ。


「マジかよ、どうなってんだ!? 完全に目潰ししたはずだろ!」エドワードが声を張り上げる。

「当然だ。私の感覚は極限まで研ぎ澄まされており、空気中の魔力(マナ)の揺らぎを感知できる。貴様らの魔力がどれほど取るに足らない極小のゴミであろうと、私にはハッキリと分かるのだ!」

暗殺者は涙と充血でウサギのように真っ赤になった目をしながら、怒り狂って吐き捨てた。


エドワードは踵を返し、イツロウを引っ張って逆方向へと走り出した。


「選択肢はねえ、イツロウ! 俺たちの速度を上げろ!」

「りょ、了解! ゲイン・スピード!」


足元で魔法が光り、二人の足は目にも止まらぬ速さで回転し始めた。廃墟の中を矢のように駆け抜ける……が、背後から迫るゾルネリウスの足音は、危険なほどに近づいていた。


『速ええっ!』と、二人はパニックになりながら肩越しに振り返る。


「笑わせるな! 貴様らなど遅すぎるわ!」背後から暗殺者の余裕の嘲笑が飛んでくる。

「ドロップ・スピード! ゲイン・スピード! ドロップ・スピード! ゲイン・スピード!」


パニック状態のイツロウは、走りながら声の限りに魔法を乱れ撃ちした。

バフとデバフのふにゃふにゃの魔法陣が四方八方に飛び交い、天井、床、壁に次々と虚しく激突していく……当然、プロの暗殺者には一発も当たらない。


「あいつにデバフかけようとすんな、このアホ! エイム(狙い)が下手くそすぎるんだよ! それにバフは重ね掛けできねえだろ!」エドワードが肺を吐き出しそうになりながら叫んだ。

「怒鳴るなエドワード、逆効果だ!」


首筋を凍りつかせるような風切り音がした。ゾルネリウスがさらに加速したのだ。


「あぁ、無駄口は叩かないことだ。体力を消耗するだけだぞ! ウィヒヒヒヒ!」暗殺者が嗤う。

「こいつ笑い方がキモい!」イツロウとエドワードは見事にハモった。


二人は追跡者の目を欺こうと、必死に右へ左へとジグザグ走行を始めた。

すると奇跡的に、背後のブーツの音が速度を落としたように聞こえた。


イツロウが振り返る。その顔には勝利を確信した満面の笑みが張り付いていた。


「振り切れるぞ! ヤッホー!」

ゴォォンッ!!


教会の鐘のような鈍い音が響き渡った。前を向いていなかったイツロウが、巨大な石柱に顔面から真正面に激突したのだ。彼は後ろに仰け反り、丸太のように硬直してギャグ漫画のようにズルズルと仰向けに倒れ込んだ。


暗殺者が影から姿を現す。彼は流れるような動作で長剣をくるりと回し、イツロウの首を胴体から一刀両断する構えをとった。


「イツロウ、起きろ!」エドワードは両腕をだらんと下げたまま、恐怖で硬直して叫んだ。


「さらばだ、イツロウ・ブルト!」ゾルネリウスは演劇のように大げさに宣言し、無慈悲な刃を高く振り上げた。


短剣が猛スピードで空気を裂き――


ガキィィィンッ!!


どこからともなく重厚なカイトシールドがフライングディスクのように飛び出し、暗殺者の武器に激しく衝突した。薄い金属の刃は粉々に砕け散った。

その衝撃は凄まじく、重い盾はイツロウの頭から数センチ横の石柱に深々と突き刺さった。


「なんだこりゃ!?」エドワードとゾルネリウスは目を丸くし、見事なシンクロで叫んだ。


暗い通路の奥から、重く、金属的で、自信に満ち溢れた足音が響き、やがて松明の光の中に二つのシルエットが浮かび上がった。


「ヘル・イェーッ!!! ギリギリ間に合ったな、サンズ!」

「全くだ。俺たちを仲間外れにしてボス戦を楽しんでやがった」


ヒーローのように現れたフルアーマーの巨漢とピンク髪の少年に、ゾルネリウスは完全に混乱し、一歩後ずさって周囲を必死に見回した。

『どういうことだ!? なぜ私はこいつらが近づく魔力を感知できなかった!?』


「マ、マイク!」エドワードは目尻に大粒の嬉し涙を浮かべて歓喜した。


一方のサンズは、自分も同じように熱狂的に歓迎されることを期待して、忠犬のように頭の上で必死に両手を振っていた。


「あとサンズもいるのか……」エドワードは横目で見て冷たくため息をついた。


「このクソ野郎、助けに来てやったのに!」ピンク髪の魔術師が憤慨する。


ゾルネリウスは頭を振り、冷静さを取り戻した。彼が視線を下に落とすと……床に倒れていたはずのイツロウの姿が、煙のように消えていた。


「チッ、少し油断したようだな。私の可愛い懸賞金は後回しだ」暗殺者は吐き捨てるように言い、手袋に包まれた指をマイクに向けた。「おい、そこの一番デカい奴。どうやって自分の魔力を隠した? そっちのピンク髪もだ。教えてもらおうか」


エドワードはマイクの広く分厚い鎧の背中に隠れながら、イツロウの姿を探して不安げに室内を見回していた。


「誰がお前なんかに教えるかよ! 夢でも見てろ!」エドワードは人間の盾(マイク)の背後から強気に叫んだ。


「いや、俺の体には魔力(マナ)が微塵も存在しないからだよ」マイクは腰に手を当て、隠し事ゼロの無邪気な笑顔であっさり答えた。

「俺はな、膨大な魔力を持ってるのに、頭が悪すぎてそれを外に引き出して使うことが全くできないからだ!」サンズもなぜか誇らしげに胸を張って付け加えた。


『こ、この究極のアホども! なんで自分から弱点(ギミック)をペラペラ暴露してんだよ!!』エドワードは心の中で絶叫し、パァァンッ!と自分の額を思い切り平手打ちして天を仰いだ。


「やれやれ……」ゾルネリウスの肩の力が完全に抜け、彼は腹の底から嘲笑した。「最初は少し警戒したが、蓋を開けてみれば拍子抜けだ。もしその話が本当なら、楽勝すぎる。イツロウも哀れだな、こんなパッとしない連中に守られているとは」


ゾルネリウスは顎を上げ、口元に大きな軽蔑の笑みを浮かべながらベラベラと喋り続けた。しかし、自分の圧倒的優位性を噛み締めるあまり、彼の目はもはや足元の暗闇を警戒していなかった。


突然、マイクが大きな石を拾い上げ、渾身の力で投げつけた。


バシッ!


暗殺者は眉一つ動かさず、片手でそれを軽々と受け止めた。


「愚か者が。貴様らと違い、私は強い。身体を強化するための魔力も――ヒィィィィィッ!!」


ドグシャァッ!!!

卑怯者のキック、第2弾。


イツロウは死角となっていた足元の影からバネのように飛び出し、硬いブーツのつま先を暗殺者の股間(男の絶対的な急所)に向かって、破壊的な威力でフルスイングで振り抜いた。


「よし、隙ができた!」マイクが叫ぶ。


鎧を着た巨漢はサイのように突進し、白目を剥いて涙目になりながら必死に立ち上がろうとするゾルネリウスに容赦なく襲いかかった。

だが、イツロウは一切の慈悲を与えず、狂ったような勢いで犠牲者の股間を親の仇のように踏みつけ続けた。


「オラオラァ、このクソ野郎! 俺がこのまま大人しくやられるとでも思ったか!?」イツロウは恍惚としたサディスティックな笑みを浮かべて叫んだ。「俺がどうやってお前の魔力感知から逃れたか知りたいか? さっき無駄撃ちしてたように見えたか? 違うね! 自分の魔力(MP)が完全に空っぽになるまで、自分自身にバフを掛けまくって隠密状態を作っただけだよ!」


彼は肩で息をしながら、RPGのシステムを悪用した史上最も卑怯な一撃で勝利を収めたことへの、恐ろしいほどの誇りで目を輝かせ、何度も何度も足を踏み下ろした。


「た、頼む……も、もう蹴らないでくれぇ……! 懸賞金は諦めるから……!」エリート暗殺者は冷たい石畳の上で胎児のように丸まり、股間を押さえて情けなく泣き叫んだ。

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