第9話 危険手当すら出ねぇのかよ!(第3部)
二人の高校生は首の骨が折れるほどの猛スピードで、残像が見えるほど狂ったように首を縦に振った。
『よっしゃあ! 即答で受けよう! 異世界に転生したばかりでモブとして死ぬなんて絶対にご免だ!』
「それに、一時間前に『偉業団』にヘスティリアのダンジョンクエストが発令されたんです。彼らはそこへ向かい、ゴブリンやアンデッドを一掃しなければならないんですよ」
安堵のゲスい笑みが彼らの唇に広がった。『マジかよ、俺たち運良すぎだろ! 間一髪で命拾いしたぜ!』
「ところで、お友達の二人はどこですか?」
彼らの顔に張り付いていた笑顔が、熱せられたプラスチックのようにドロドロに溶け落ち、顎が地面に到達する勢いで外れそうになった。
『やべえ! イツロウとエドワード! あいつらまだ兵舎のベッドで爆睡してる! 間違いなくそのまま任務に強制連行される! クソッ、最悪だ!』
「マイク! 仲間を見捨てるわけにはいかない! 今すぐ行かなきゃ!」サンズがパニックで頭を抱えながら叫んだ。
「ああ、行くしかない! ヘスティリアに戻って装備を整えるんだ! 道を聞きながら急ごう!」
「ダメよ! 行っちゃダメ!」
アナステリアが足を踏ん張り、関節が真っ白になるほど凄まじい力でマイクとサンズの手首をガシィッ!と握りしめた。
「仲間を見捨てろって言うのかよ?」
「そういうわけじゃ……」
「手を離してくれ」
「ダメです! 行かせられません!」
「手を離さないと、今ここで俺の『野獣』を解放して、お前の純潔を奪うぞ!」
彼女は甲高い悲鳴を上げ、まるで煮えたぎる熱湯にでも触れたかのように彼らの手首を離し、一歩後ろに飛び退いた。
少し離れたところで、サンズは目を細めてその異常な光景を注意深く見守っている。
「じゅ、純潔を奪うって、どういう……?」
「ああ、今聞こえた通りだ! グフフ……アーッハッハッハ!」
「その気持ち悪い手の動きをやめなさい……! なんで指をそんなウネウネ動かしてるの!? 見てるだけで全身に鳥肌が……まさか……」
「そうさ! お前にフラれたことがどれだけ俺を傷つけたか、分かってないようだな。それに、俺を家に誘うなんて隙を見せるからだ! 本当は、俺ともっと『次のステップ』に進みたいって思ってるんだろぉぉ?」
マイクはずしりと重い一歩を踏み出した。
アナステリアは胸の前で腕を交差し、瞳を恐怖で震わせながら慌てて後ずさる。
「さ、下がって!」
ドンッ……。
「もう一歩も近づかないで!」
ドンッ……。
「やめて!」
ドンッ! ドンッ! ドンッ! ドンッ!
その瞬間、純粋な恐怖の悲鳴が路地裏を引き裂いた。「きゃああああああっ!!」
アナステリアは踵を返し、本物のシリアルキラーから逃げるかのような猛スピードで逃走した。
サンズは顔面を完全な蒼白に染め、ガタガタと震えながら自分の両腕を抱きしめていた。
マイクの狂気じみた『変態の求愛ダンス』を目の当たりにし、もし彼女が逃げていなければこの後どうなっていたかを想像してしまい、虚空を見つめながら深いトラウマを植え付けられていた。
「よし。これで一件落着だな」マイクは仕事を終えた一流の職人のように、パンパンと両手を擦り合わせた。
「あ、そういうことかマイク! 彼女を逃がすために、わざとあんなサイコパスの演技をしたんだな? お前、本当にいい奴だな!」
しかし真実は、彼は本気で行動に移そうとしていたのだ……。満足げな表情の裏で、行き場を失った一筋の重い『フラストレーションの涙』が、静かに彼の頬を伝い落ちた。
マイクとサンズが、マクスウェル・ヴァネステリアのアーティファクト店へと脇目も振らずに全力疾走している頃……エドワードとイツロウの側は、もはやお散歩気分とは程遠い、本物の地獄と化していた。
「おい、四人一組のパーティーを組むから急いで準備しろ! そこのゴミみたいなステータスの魔術師と僧侶、お前ら二人はあいつらと組め!」
フルアーマー姿の隊長が、ヘスティリアの大都市から数キロ離れた古代遺跡と、山の斜面にぽっかりと不気味な口を開けたダンジョンの入り口で怒号を飛ばしていた。
三十人ほどの『偉業団』の団員がそこに集結していた。
屈強な騎士たちに統率されているものの、その大半はただの平凡で貧弱な人間だった。
しかし、その震える民兵たちの列の中で……。
「マジかよ……」イツロウが力なく呟いた。
「なんで俺がこんな目に……」エドワードが血を吐くようなため息をついた。
二人の肩は完全に落ちきっていた。生気のない、死んだ魚のようなガラス玉の目で、ダンジョンの暗い入り口をただ見つめている。
クエストのためにベッドから叩き起こされ招集された時、女神ヴェネリスの言葉が彼らの頭蓋骨の中で残酷に反響したのだ。
『この世界はクエスト、あるいは偉業を成し遂げることで進化していくの』……あの方程式の残酷な答えが、今出た。
『偉業団』での一ヶ月の奉仕活動とは、街の警備で突っ立っていることではない……超高難易度のクエスト(偉業)で、使い捨ての捨て駒(肉の盾)として最前線に立たされる一ヶ月だったのだ! だからこその名前!
「この世界、俺たちを舐め腐ってやがる!!」イツロウとエドワードは、ダンジョンの入り口で声を揃えて絶叫した。
マイクとサンズが息を切らしてマクスウェルの店へと走っている間……
エドワードとイツロウは、全く見ず知らずの赤の他人と共に、たった数個のショボい初期魔法だけを握りしめ、圧倒的絶望が待つダンジョンの暗闇へと足を踏み入れていた。
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