第2話 愛の女神 (第1部)
四人の悪友たちは、クラスメイトと真正面から鉢合わせになった。
アイミはゆっくりとした足取りで、自信に満ちた優雅さを漂わせながら彼らに近づいてきた。
「ようこそ、エドワード・ニシムラ、サンズ・クジラ、イツロウ・ブルト、そしてマイク・タロウ」
彼女は四人の高校生の目の前でピタリと立ち止まった。
「少し乱暴な呼び方になってしまったかしら?」
彼女は背中で両手を組み、少しだけ前かがみになって彼らと視線を合わせながら、女神のように微笑んだ。
そして、優しく慈愛に満ちた声で続ける。
「不安に思う気持ちも分かります。でも、どうか安心してください。私が皆さんの疑問をすべて晴らしてあげますから」
長い沈黙が降り下りた。ヒュルルと、風の音だけが空しく響いている。
アイミの完璧な笑顔が、ピクッと少し引きつった。必死に維持しようとしてはいるが。
四人は目を丸くしたまま、微動だにせず彼女をジッと見つめていた。やがて、彼らはヒソヒソと互いに顔を見合わせ……
「なんであいつ、俺たちのこと知らないふりしてんの?」とサンズがボヤく。
「さあな。若年性アルツハイマーなんじゃねえの? 俺たち、年の半分は同じクラスで過ごしてるっていうのに……」エドワードは首を傾げ、困惑したように目を逸らしながら呟いた。
「なあ、あの服見たか? あいつコスプレイヤーだったのか?」イツロウがマイクの耳元でフンッと興奮気味に鼻息を荒くする。
「ち、違いますっ! 私はただ皆さんを安心させようとしただけで!」アイミは煙を払うかのように、顔の前で慌てて両手をパタパタと振った。
彼女はコホンとわざとらしく咳払いをした。
「親愛なる人間たちよ……波乱に満ちた世界へようこそ! この世界は今、魔王の脅威にさらされています!」
彼女はビシッと片手で天を指差し、もう片方の手を腰に当てた。
「私は愛の女神、ヴェネリス! あなたたちをここへ導いたのは、その胸に純真無垢な心を持つ、勇敢な勇者の魂を見出したからです!」彼女は両手を大きく広げて、堂々と宣言した。
またしても、風の音だけが彼女の言葉に返事をした。
すると突然、四人のうちの一人が割れんばかりの拍手を送り始めた。
「ブラボー! ブラボー! 今の最高だったぜ!」マイクが大声で叫ぶ。「文化祭の演劇の手伝いをしてほしいなら、最初からそう言ってくれればよかったのに!」
「違うわ、マイク! 私はふざけて——ひゃっ!」
突然、マイクが少女の華奢な両肩に、ズシリと重い両手を置いたのだ。
「いやーマジで、セットも衣装も完璧だわ。よっしゃ、続きも喜んで手伝ってやるよ。とりあえず春休みが終わるまで待っててくれな」
マイクは左右を見渡し、他の舞台セットや隠しカメラがないかとキョロキョロ探し始めた。
「おい……あいつ、嘘ついてるわけじゃないみたいだぞ」エドワードがうつむいたまま、低く呟いた。
彼がゆっくりと顔を上げると、お葬式のような暗く絶望的な表情をしていた。
「俺たちの後ろにあったはずのドアが消えてるのを、どう説明するんだよ……?」
マイクはハッとして仲間たちを見た。
全員が冗談抜きでマジな顔をしているのを見て、彼は血の気が引き、一歩後ずさりして少女の肩からサッと手を離した。
「う、嘘だろ?」マイクはどもりながら、慌てて仲間たちの元へと後退した。




