第58話 情報にも値段がつきました
翌朝。
情報係が来た。
「情報です!」
「何?」
「船、二艘来てます!」
「誰が見た?」
「一番です!」
「確認済み?」
「確認済みです!」
「よし」
「あと」
「何?」
「福音ください」
「…………」
「…………」
「はい?」
*
情報係が俺を見る。
「福音です」
「何で?」
「情報、持ってきました」
「うん」
「仕事しました」
「うん」
「なので福音を」
「…………」
そうだった。
忘れてた。
こいつら。
働いてるんだった。
*
最初。
情報係を作った時。
人間の話を聞いて。
戻ってきたら。
福音。
それが報酬だった。
その後。
釣られた。
食われた。
人数を増やした。
中継した。
シフトを作った。
速報ができた。
訂正ができた。
情報源まで確認するようになった。
「…………」
制度ばっかり増えて。
給料払うの忘れてた。
「ブラック企業じゃねえか!!!」
*
キントキダイが言った。
「払うべきだな」
「分かってるよ!」
「労働の対価だ」
「分かってるって!!」
キンメダイが聞く。
「どれくらいです?」
「…………」
それ。
決めてない。
イトヨリダイが言った。
「情報によるんじゃないすか?」
「情報による?」
「重要な情報と、どうでもいい情報で同じ報酬って変じゃないすか?」
「…………」
確かに。
*
情報係が言った。
「船、二艘来てます」
「うん」
「これは?」
「…………」
重要。
たぶん。
別の情報係が来た。
「人間、一人立ちました!」
「いらない」
「福音は?」
「出ねえよ!!!」
「情報です」
「情報なら何でも売れると思うな!!!」
*
キントキダイが言った。
「価値を決めればいい」
「どうやって?」
「危険を避けられる情報は高い」
「うん」
「福音の場所が分かる情報も高い」
キンメダイが頷く。
「高いですね」
「お前基準じゃねえからな」
「?」
「その顔やめろ」
*
イトヨリダイが言った。
「じゃあ、三段階くらいでいいんじゃないすか?」
「三段階?」
「重要」
「うん」
「普通」
「うん」
「いらない」
「最後に報酬出すなよ?」
「出さないっす」
「よし」
キントキダイが言った。
「重要なら福音を多くする」
「普通なら少し」
「いらない情報はなし」
「…………」
簡単。
分かりやすい。
これなら。
できそう。
*
そこへ。
情報係。
「情報です!」
「何?」
「人間が言ってました!」
「何て?」
「『でかいの来た』」
「…………」
全員。
止まる。
でかいの。
何?
「魚?」
「分かりません!」
「釣れたの?」
「分かりません!」
「仕掛けに来た?」
「分かりません!」
「何が分かってんの!?」
「『でかいの来た』です!」
「…………」
キントキダイが言った。
「重要そうではある」
イトヨリダイも頷く。
「でも内容ないっすね」
キンメダイが聞いた。
「でかい食べ物かもしれませんよ」
「お前は黙ってろ!!!」
*
情報係が聞く。
「これは福音いくつですか?」
「…………」
困った。
重要そう。
でも。
役に立つか。
分からない。
「普通……?」
「重要では?」
キントキダイが言う。
「いや、何も分かってないだろ」
「危険の可能性はある」
「可能性で値段上げんの!?」
イトヨリダイが言った。
「速報価格っすね」
「魚に先物取引みたいなもの持ち込むな!!!」
*
別の魚が。
慌てて来た。
「情報!」
「何!?」
「向こうに福音!」
キンメダイが反応する。
「どこです?」
「岩二つ越えたところ!」
「誰が見た?」
「俺!」
「どれくらい?」
「いっぱい!」
「確認済み?」
「食べた!」
「強い!!!」
キンメダイが。
すぐに泳ぎ出す。
「重要です!」
「お前にはな!!!」
*
少しして。
キンメダイが戻ってきた。
「本当にありました」
「そう」
「いっぱいありました」
「そう」
「おいしかったです」
「報告そこまでいらない」
さっきの魚が聞く。
「福音は?」
「…………」
福音の場所を教えて。
報酬に福音。
「…………」
俺は。
魚を見る。
「お前、自分で食えばよくない?」
「…………」
魚も。
止まった。
「…………」
「…………」
「確かに」
「商売下手すぎるだろ!!!」
*
でも。
別の魚が言った。
「俺は食べないから」
「え?」
「福音」
「じゃあ何で情報を?」
「別の魚に渡す」
「何を?」
「もらった福音」
「…………」
「別のものと交換する」
「…………」
待て。
福音を。
食べるためじゃなく。
交換するために。
欲しい。
「…………」
キントキダイが言った。
「価値があるからな」
「食わなくても?」
「ああ」
「…………」
前にも。
似たこと。
あった。
福音が。
餌じゃなく。
対価になる。
そして。
今度は。
情報が。
福音になる。
「…………」
嫌な予感。
*
その日の午後。
俺のところへ。
知らない魚が来た。
「情報あります」
「何?」
「福音は?」
「先に言えよ」
「先に福音」
「何で!?」
「価値ある情報です」
「内容分かんねえのに払えるか!!!」
魚が言った。
「じゃあ少しだけ」
「何を?」
「情報を」
「今日」
「うん」
「船が」
「うん」
「…………」
止まった。
「続きは!?」
「福音」
「情報を小分けにして売るな!!!」
*
魚は。
真顔。
「価値ある情報です」
「分かったよ!」
福音を。
少し。
渡す。
「で!?」
魚が食べる。
「今日、船が」
「うん!」
「もう一艘来るらしい」
「…………」
重要。
たぶん。
「誰が言った?」
「情報係」
「どの情報係?」
「知らない」
「未確認じゃねえか!!!」
「でも福音もらいました」
「返品しろ!!!」
*
それを見ていた。
別の魚が。
言った。
「俺、確認済みの情報あるよ」
「…………」
また。
別の魚。
「俺は直接見た」
さらに。
「人間が言ってた」
「俺は船の場所も知ってる」
「福音の場所も知ってる」
「大きい魚がいた場所も」
「…………」
魚が。
集まってくる。
情報を。
持って。
そして。
全員。
言う。
「福音は?」
「…………」
昨日まで。
俺たちは。
情報が正しいか。
確認していた。
今日。
情報が。
売り物になった。
*
キンメダイが言った。
「チカメさん」
「何?」
「僕も情報あります」
「お前まで!?」
キンメダイが。
俺に近づく。
「すごく大事です」
「…………」
嫌な予感。
「何?」
キンメダイが。
小さな声で言った。
「向こうに福音あります」
「それさっき聞いた!!!」
「確認済みです」
「お前が食ったからだろ!!!」
「福音は?」
「お前には絶対払わねえ!!!」
*
イトヨリダイが。
魚たちを見る。
「これ」
「何?」
「情報売買っすね」
「…………」
キントキダイが頷く。
「合理的だ」
「どこが!?」
「必要な情報に価値がつく」
「…………」
正しい。
知りたい魚が。
払う。
知っている魚が。
教える。
その対価が。
福音。
「…………」
ただ。
一つ。
問題が。
ある。
俺は。
周りを見る。
情報を売りたい魚。
情報を買いたい魚。
報酬を求める情報係。
そして。
俺。
「…………」
「なんで全部俺が払う前提なんだよ!!!」
次回。
『福音、貸してください』




