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第四十六話 赤い魚、多すぎませんか

挿絵(By みてみん)


「赤い」



イトヨリダイが。



スマホを。



見ている。



「どっち!?」



俺と。



キントキダイが。



同時に。



画面へ。



突っ込んだ。



「近いっす」



「見せろ!!!」



少し。



下がる。



画面には。



一匹の。



赤い魚。



「…………」



「…………」



俺は。



見る。



キントキダイも。



見る。



キンメダイも。



見る。



「ウッカリカサゴじゃん」



「ウッカリカサゴっすね」



「脅かすなよ!!!」



イトヨリダイが。



首を傾げる。



「赤いって言っただけっすけど」



「今この状況で赤いって言ったらキントキだと思うだろ!!」



キンメダイが。



写真を見る。



「この魚も釣られたんですね」



「そうみたいだな」



キントキダイが。



言った。



「ウッカリしたんだね」



「…………」



「…………」



俺は。



もう一度。



写真を見る。



「本当にうっかりしてんなー、あいつら」



「チカメさんまで」



「だってウッカリカサゴだぞ」



「名前で釣られた理由まで決めるのおかしくないですか?」



「名前が悪い!!」



*



イトヨリダイが。



記事を。



下へ。



動かす。



「あ、本文」



「キントキ!!」



俺と。



キントキダイが。



また。



画面へ。



寄る。



「近いっす」



「早く読め!!」



「本命のキントキは――」



「うん!!」



「今日も――」



「うん!!」



「不発」



「よっしゃあああああ!!!」



俺と。



キントキダイが。



同時に。



喜んだ。



「二日連続!!」



「勝ってる!!」



キンメダイが。



首を傾げた。



「何にですか?」



「人間に!!」



「釣られなかったら勝ちなんですか?」



「魚側の勝利条件なんてそれくらいしかねえよ!!」



*



イトヨリダイが。



続きを。



読む。



「近日、再調査予定」



「…………」



俺たちが。



止まった。



キンメダイが。



言った。



「また調査?」



「らしいな」



「昨日も調査って言ってましたよね」



「言ってたな」



「なんでただの釣りを調査って言うんですか?」



「…………」



キンメダイが。



少し。



笑った。



「おかし〜」



「言ってやるな!!!」



「だって釣りですよね?」



「釣りだよ!!」



「遊びですよね?」



「そうだよ!!」



「なのに調査?」



「釣り人はな!!」



俺は。



元釣り人として。



言った。



「釣れない時に調査って言うと、ちょっと仕事っぽくなるんだよ!!」



「釣れなかったから調査になったんですか?」



「それ以上追及するな!!!」



イトヨリダイが。



画面を見ながら。



言った。



「便利な言葉っすね」



「覚えるな!!」



「じゃあ、あーしも釣果調べてるんじゃなくて調査してることにするっす」



「お前は本当に調査してる側だよ!!」



*



キントキダイが。



聞いた。



「次、いつ来るの?」



「書いてないっす」



「どこ?」



「詳しくは書いてない」



「何キントキ?」



「それも書いてない」



「何も分かんないじゃん」



「再調査することだけは分かるっす」



「一番嫌な情報だけある!!」



*



俺は。



考えた。



釣り人が。



本命を。



二回。



外した。



そして。



また来る。



「…………」



嫌な。



予感がする。



「どうしたんですか?」



キンメダイが。



聞く。



「釣り人ってな」



「はい」



「釣れないと諦めるやつもいる」



「じゃあ大丈夫ですね」



「でも」



「?」



「釣れないから燃えるやつもいる」



キントキダイが。



俺を見る。



「今回は?」



俺は。



スマホを見る。



近日。



再調査予定。



「燃えてる方」



「最悪じゃん」



「最悪だよ!!」



*



イトヨリダイが。



あくびをした。



「じゃあ次来る日が分かればいいんすね」



「分かるの!?」



「ブログに書けば」



「書いてないじゃん!!」



「じゃ分かんないっす」



「インターネット弱え!!」



「本人に聞けばいいじゃないすか」



「魚がどうやって聞くんだよ!!」



イトヨリダイが。



スマホを。



つつく。



「あーし、コメントしてみます?」



「やめろ!!!」



「明日キントキ釣りに行きますか?って」



「魚側から問い合わせるな!!」



「名前どうします?」



「投稿する気満々じゃねえか!!」



*



「あ」



イトヨリダイが。



言った。



「何!?」



「キャラメルフラペチーノ」



「今!?」



「近くで飲める店、調べてたんすけど」



「キントキ調べろよ!!」



「もう調べることないんで」



「切り替え早えな!!」



イトヨリダイが。



画面を。



見せる。



「あーし、このキャラメルフラペチーノっての、飲んでみたいんすよねー」



「魚なんだよ!!」



「甘そうじゃないすか」



キンメダイが。



画面を覗く。



「僕も飲んでみたいです」



「お前は絶対そう言うと思ったよ!!」



「これ、上に乗ってるの何ですか?」



「クリーム」



「美味しい?」



「美味しい」



「飲んだことあるんですか?」



「俺は元人間だからな!!」



イトヨリダイが。



俺を見る。



「いいなー」



「魚に羨ましがられる人生になるとは思わなかったよ!!」



*



その時。



「イトちゃ〜ん」



ゆっくりした。



声がした。



「ん?」



イトヨリダイが。



振り向く。



向こうから。



もう一匹。



イトヨリダイが。



ゆっくり。



泳いできた。



同じような。



淡い赤。



黄色い線。



でも。



雰囲気は。



まるで違う。



細い目。



というか。



ほとんど。



一本の線。



ずっと。



笑っているように。



見える。



「おねぇ」



「お姉ちゃん!?」



姉のイトヨリダイが。



俺たちを見る。



「あらあら〜」



「…………」



「お友達?」



「まあ、そんな感じ」



「誰がお友達だ!!」



「違うんすか?」



「いや違わないけど!!」



「あらあら〜」



「何で俺が照れてるみたいになってんだよ!!」



*



姉イトヨリが。



妹のところまで。



ゆっくり。



泳いでくる。



そして。



スマホを見る。



「あらあら〜」



「何?」



「またスマホばっかりいじって〜」



「別によくない?」



「目が悪くなりますよ〜」



「…………」



俺は。



姉を見る。



妹を見る。



スマホを見る。



「魚にも言うんだ、それ」



「目は大切ですからね〜」



姉イトヨリが。



今度は。



俺を見る。



「あらぁ〜」



「何!?」



「お目々、大きいですね〜」



「知ってるよ!!」



「よく見えそう〜」



「暗いところではな!!」



「いいですね〜」



「その感想初めてだよ!!」



キンメダイが。



言った。



「チカメさんの目、褒められてますよ」



「急に嬉しくなってきた!!」



*



その間にも。



妹イトヨリは。



スマホを。



つついている。



「イトちゃ〜ん」



「はいはい」



「お話ししてる時は、スマホ置きましょうね〜」



「おねぇ、母親みたいなんだけど」



「心配してるだけですよ〜」



「はいはい」



妹イトヨリが。



スマホを。



岩の上に置いた。



「…………」



俺は。



見る。



「素直なんだな」



「うるさいっす」



キンメダイが。



笑う。



「仲いいんですね」



「普通」



「仲いいですよ〜」



「おねぇが答えんな」



「うふふ〜」



「性格、全然違うな」



「よく言われるっす」



「誰に!?」



*



姉イトヨリが。



スマホの画面を。



覗いた。



「あら〜」



「何?」



「美味しそうですね〜」



「おねぇも飲みたい?」



「そうねぇ〜」



「じゃ、人間になったら一緒に行こ」



「いいですね〜」



「お前ら人間になる予定立てるの軽すぎない!?」



姉イトヨリが。



俺を見る。



「あら?」



「何?」



「チカメさんは、人間だったんですよね〜?」



「そうだけど」



「じゃあ、なれるかもしれませんね〜」



「姉までその理屈!?」



「その時は、ご一緒しましょうね〜」



「キャラメルフラペチーノ飲みに!?」



「はい〜」



「魚四匹で将来のスタバの約束すんな!!!」



キンメダイが。



言った。



「僕も行きます」



「増えた!!!」



*



「それじゃあ〜」



姉イトヨリが。



ゆっくり。



向きを変えた。



「どこ行くの?」



「ごはん探してきます〜」



「針気をつけてね」



「は〜い」



ゆっくり。



泳いでいく。



俺は。



その後ろ姿を。



見送った。



「…………」



「あれがお姉ちゃん?」



「そうっす」



「ずいぶん違うな」



「よく言われるっす」



「だから誰に!?」



妹イトヨリが。



すぐに。



スマホを。



手元へ戻した。



「早速いじるな!!」



*



その時。



遠くから。



何かが。



ものすごい勢いで。



泳いできた。



「チカメ様ーーー!!!」



俺と。



キントキダイが。



同時に。



振り向いた。



「サバ!!」



昨日。



インターネットに負けて。



帰った。



サバだった。



「聞いた!!」



「何を!?」



「人間!!」



「人間がどうした!?」



「また来る!!」



「それはネットで知ってる!!」



「…………」



サバが。



止まった。



「あ」



静かに。



向きを変える。



「待て待て待て!!!」



「ネットで知ってるんでしょ」



「その先があるだろ!!」



「あるよ」



「先に言え!!!」



*



サバは。



今日。



海面すれすれを。



泳いでいたらしい。



人間の船の。



近くまで行って。



水面の下から。



ずっと。



聞き耳を立てていた。



「お前そんなことしてたの!?」



「情報いるって言ったから」



「いるけど!!」



「船についてった」



「ずっと!?」



「うん」



「お前、記者というより盗聴してるだろ!!」



「聞こえただけ」



「海面すれすれまで行って聞いてたんだろ!!」



「うん」



「聞きに行ってんじゃねえか!!」



イトヨリダイが。



スマホから。



顔を上げた。



「で、何て言ってたんすか?」



「明日」



「…………」



俺と。



キントキダイが。



止まった。



「明日来る」



イトヨリダイが。



スマホを見る。



「それ書いてないっす」



「サバ!!」



「何?」



「他には!?」



「朝から」



「うん!」



「川奈」



「うん!」



「キントキ」



「それは知ってる!!」



「あと」



「まだある!?」



「昨日より重い仕掛け持ってくるって」



「…………」



俺と。



キントキダイが。



固まった。



イトヨリダイが。



もう一度。



スマホを見る。



「それも書いてないっすね」



サバが。



スマホを見る。



イトヨリダイを見る。



俺を見る。



「ネットに」



「うん」



「出てない?」



「出てない!!」



「…………」



サバが。



少しだけ。



胸を張った。



「サバ」



「何?」



「お前」



「うん」



「めちゃくちゃ必要だ」



サバの。



尾びれが。



少し。



速くなった。



「現地取材つえええええ!!!」



イトヨリダイが。



あくびをした。



「じゃ、あーし寝るっす」



「お前も働け!!!」



*



明日。



本命キントキ。



再調査。



俺か。



キントキダイか。



まだ。



分からない。



ただ。



一つだけ。



分かった。



人間は。



明日。



また来る。



しかも。



今日より。



本気で。



次回。


『魚にも情報網は必要です』

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