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第四十五話 更新されないでください


翌日。



俺は。



イトヨリダイのところにいた。



「更新は?」



「まだっす」



「よし」



「何が?」



「キントキが載ってない」



「釣れてないだけじゃないすか」



「それを喜んでんだよ!!」



イトヨリダイは。



岩の上で。



スマホを。



つついている。



昨日と。



同じ場所。



同じ姿勢。



そして。



眠そう。



「あーし」



「何?」



「これ飲んでみたいんすよねー」



「…………」



画面を。



見せてきた。



茶色。



白。



上に。



何か乗っている。



「…………」



俺は。



知っている。



「キャラメルフラペチーノ」



「そう、それ」



「お前」



「はい?」



「何調べてんの?」



「いろいろ」



「釣果情報を見るためのスマホじゃなかったの!?」



「別にそれ専用じゃないっすよ」



「他の情報も調べてる!!」



*



イトヨリダイが。



画面を。



動かす。



「これも気になる」



「何?」



「猫カフェ」



「お前が行ったら食われる側だよ!!」



すっ。



「あと温泉」



「煮魚になるぞ!!」



すっ。



「コンビニ」



「何が気になるの?」



「二十四時間やってる」



「そこ!?」



「いつ寝てるんすか?」



「店は寝ねえよ!!」



「人間すご」



「感心する場所そこじゃねえ!!」



*



キンメダイが。



やってきた。



「何見てるんですか?」



「キャラメルフラペチーノ」



「何ですか、それ」



イトヨリダイが。



画面を見せる。



キンメダイが。



じっと。



見た。



「食べ物?」



「飲み物らしいっす」



「美味しい?」



「知らんす」



「飲んだことないの?」



「魚なんで」



「急に正気に戻るな!!」



キンメダイが。



もう一度。



画面を見る。



「僕も飲んでみたいです」



「お前まで!?」



「甘そう」



「お前は理由が一貫してるな!!」



*



キントキダイも。



来た。



「更新された?」



「まだ」



「よかった」



「みんな何で更新待ってるんすか?」



「お前が待たせてんだよ!!」



イトヨリダイが。



あくびをした。



「釣果って夕方とかじゃないすか?」



「…………」



そうだった。



釣り。



まだ。



終わってない。



俺たちは。



朝から。



ブログの更新を。



待っている。



「じゃあ今見ても意味ない?」



「ないっすね」



「先に言えよ!!」



「聞かれなかったんで」



「マダイみたいなこと言い始めた!!」



*



俺は。



海面を。



見上げた。



どこかで。



今日も。



人間が。



釣りをしている。



本命。



キントキ。



俺なのか。



こいつなのか。



まだ。



分からない。



「…………」



キントキダイが。



聞いた。



「今日も来てるかな」



「分からん」



「調べられない?」



「…………」



俺たちは。



イトヨリダイを見る。



イトヨリダイは。



スマホで。



何かを。



見ていた。



「何見てんの?」



「東京の家賃」



「なんで!?」



「高いっすねー」



「魚には一円も関係ねえよ!!」



「チカメさん、昔どこ住んでたんすか?」



「今それいる!?」



「なんとなく」



「検索に人生侵食されてるぞ!!」



*



その時。



上から。



何かが。



落ちてきた。



俺と。



キントキダイが。



同時に。



止まった。



仕掛け。



「…………」



「…………」



キンメダイが。



言った。



「来ましたね」



「来たな」



昨日までなら。



ただの。



釣りだった。



今は。



違う。



俺たちは。



知っている。



人間が。



キントキを。



探している。



仕掛けが。



ゆっくり。



沈んでくる。



「離れろ」



「うん」



俺と。



キントキダイが。



同時に。



離れた。



イトヨリダイは。



動かない。



「お前も逃げろよ!」



「あーし、キントキじゃないんで」



「そういう問題じゃねえよ!!」



餌が。



イトヨリダイの。



近くまで。



沈んだ。



イトヨリダイが。



見る。



「…………」



「食うなよ」



「食わないっすよ」



「本当に?」



「釣果ブログ見てるんすよ?」



「…………」



そうだった。



こいつ。



人間が。



どれだけ魚を釣るのか。



毎日。



見ている。



ある意味。



この海で。



一番。



針の怖さを。



知っている。



イトヨリダイが。



餌を見る。



スマホを見る。



また。



餌を見る。



「…………」



「どうした?」



「エビ」



「うん」



「昨日検索したら」



「うん」



「エビフライってあるじゃないすか」



「今その話する!?」



*



仕掛けが。



上がっていった。



誰も。



食わなかった。



「よし」



俺は。



息を吐いた。



イトヨリダイは。



スマホを。



つついている。



「今度は何?」



「エビフライ」



「だから何で人間の食い物ばっか調べてんだよ!!」



「あーし、人間になったら食べたいものいっぱいあるんすよねー」



「…………」



俺は。



止まった。



キンメダイも。



止まった。



キントキダイも。



止まった。



「…………」



「何?」



「今」



俺は。



イトヨリダイを見る。



「何て言った?」



「エビフライ?」



「その後!!」



「あーし、人間になったら?」



「そこ!!」



イトヨリダイが。



首を傾げた。



「なんか変っすか?」



「変だよ!!」



「チカメさん元人間なんでしょ?」



「そうだけど!!」



「じゃ、魚が人間になることもあるんじゃないすか?」



「その理屈で文明を突破するな!!」



「なれないんすか?」



「知らねえよ!!」



「じゃあ調べとくっす」



「何で検索する気だよ!!」



イトヨリダイが。



スマホに。



鼻先を近づけた。



俺は。



慌てて。



前に出た。



「待て!!」



「何?」



「それだけは検索するな!!」



「なんで?」



「俺が知りたいんだよ!!!」



*



夕方。



俺たちは。



また。



イトヨリダイの岩に。



集まっていた。



「そろそろ?」



「んー」



イトヨリダイが。



スマホを見る。



「圏外」



「またかよ!!」



ストラップを。



くわえる。



上へ。



泳ぐ。



しばらくして。



戻ってくる。



「更新きたっす」



「…………」



俺と。



キントキダイが。



固まった。



「キントキは?」



「ちょい待ち」



画面を。



動かす。



「あ」



「何!?」



「魚の写真ある」



「何!?」



「赤い」



「どっち!?」



俺と。



キントキダイが。



同時に。



画面へ。



突っ込んだ。



「近いっす」



「見せろ!!!」



次回。


『赤い魚、多すぎませんか』

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