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第130話 【神子元編】赤ければいい

挿絵(By みてみん)


「鮫駆除だああああああ!!!」



叫んだはいい。


ただどうやって。


目の前にはサメ。


後ろにもサメ。



俺。


キンメ。


キントキダイ。



赤い三匹が、なぜかサメのど真ん中にいる。



「来るぞ!!」



一匹が俺へ向きを変えた。



「また俺かよ!!!」



逃げる。



サメが追ってくる。



速い。



「チカメさん! 右っす!!」



上からイトヨリの声が飛んできた。



右へ曲がる。



サメも曲がる。



「俺はキンメダイじゃねえってええええ!!!」



その先に。



二代目。



「ウヒッ!」



ばぐっ!!!



二代目が横からサメに噛みついた。



サメが激しく暴れる。



「おお!! やった!!」



「ウヒッ!」



二代目がそのまま食おうとする。



「待て待て待て!! 食うな!!」


「なんで!?」


「一匹食い終わるまで待ってたら日が暮れるだろ!!」


「じゃあどうすんだよ!」


「とどめだけにしてくれ!!」


「あとで食っていい?」


「好きにしろ!!!」



二代目がサメを仕留めた。



一匹。



海底へ沈んでいく。



「…………」



なるほど。



俺は後ろを見る。



もう一匹。



俺を見ている。



赤い俺。



サメ。



二代目。



「…………」



これ。



いける。



「キントキダイ!!」


「なんだ!!」



キントキダイも逃げていた。



当然、後ろにはサメがいる。



「そいつ連れて二代目のところ行け!!」


「なぜ私が!!」


「赤いから!!」


「理由が雑すぎる!!!」



「俺たちを追ってくるんだよ!!」


「知っている!! だから逃げているんだ!!」


「だったらそのまま連れてこい!!」


「嫌だ!!!」



キントキダイが全力で逃げる。



サメが追う。



その先に二代目。



「ほら!! そのまま!!」


「私は囮ではない!!」


「もう囮になってる!!」


「勝手についてきているだけだ!!」


「それを利用しろって言ってんだよ!!!」



「二代目!!」



「ウヒッ!」



キントキダイが二代目の前を通過する。



ばぐっ!!!



サメが捕まった。



「…………」



キントキダイが止まった。



後ろを見る。



「助かった……」



「だろ?」



「もう二度とやらん」



その後ろから。



もう一匹。



「なぜだああああああ!!!」



また逃げていった。



「もう一周!!」


「私は客引きではない!!!」



客引き。



「…………」



なるほど。



「俺たち客引きなのか!!!」



「今気づいたんすか!?」



イトヨリが上から笑っている。



「繁華街っすね!」


「商売繁盛じゃねえか!!!」



「チカメー!!」



キンメだった。



一匹のサメが、こっちへ向かってきている。



「…………僕が連れてく」


「大丈夫か?」


「…………やるって決めたから」



キンメが前へ出た。



サメが向きを変える。



追う。



キンメが走る。



「キンメ!! 無理すんなよ!!」


「分かってる」



速い。



キンメが二代目の前を横切る。



「二代目!」



「ウヒッ!」



ばぐっ!!!



また一匹。



キンメが戻ってきた。



「…………できた」


「できたな」



もう俺の後ろには隠れていない。



「チカメ、後ろ」


「え?」



ぐわっ!!!



「わああああああ!!!」



今度は俺が連れていく。



「二代目ええええ!!!」



「持ってこい!!」



「魚市場みたいに言うな!!!」



ばぐっ!!!



仕留める。



食わない。



次。



キントキダイ。



「いらっしゃいませえええええ!!!」



ばぐっ!!!



次。



キンメ。



「…………こっち」



ばぐっ!!!



俺。



キンメ。



キントキダイ。



赤い三匹がサメを引っ張る。



イトヨリが上から位置を教える。



二代目が仕留める。



いつの間にか。



俺たちは完全に繁華街になっていた。



「右から一匹っす!!」


「俺が行く!!」



「左にもいる!」


「そっちは私が――」


「キントキダイ!!」


「なぜ毎回私が!!」



「同伴だ!!」


「お前も同伴してるだろ!!」


「俺いま一匹連れてんだよ!!」


「私もだあああああ!!!」



二匹で走る。



後ろから二匹。



前には二代目。



「二匹行くぞ!!」


「ウヒッ!!」



ばぐっ!!!



どん!!!



二代目が次々と仕留めていく。



しばらくして。



海が静かになった。



「…………」



俺は周りを見る。



サメ。



いない。



「終わった?」



イトヨリが上を一周する。



「今見える範囲にはいないっす!」



「終わったあああああ!!!」



キントキダイが岩にへばりついた。



「もう赤い魚には生まれない……」


「来世の話すんな」



岩陰から、稲取のキンメダイたちが出てきた。



「すごい」


「サメがいなくなった」


「助かった!」



「ウヒッ!」



二代目も満足そうだ。



「よし! 食うか!」


「今から!?」



二代目の前には。



仕留めたサメが何匹も沈んでいる。



でかい。



改めて見ると。



でかい。



「…………」



「どうした?」


「いや」



俺はサメを見る。



二代目を見る。



またサメを見る。



「これ全部食うの?」


「持って帰る」


「無理だろ!!!」



一匹でもでかい。



それが何匹もいる。



「どうやって熱川まで運ぶんだよ!」


「大丈夫だ」


「何が?」


「明日、じいちゃんたちに取りに来てもらう」


「熱川から!?」


「近いしな」


「どうやって呼ぶんだよ!」



二代目が辺りを見回した。



「ソウダガツオいない?」


「伝令使う気かよ!!!」



「イトヨリ!」


「はいっす!」


「探して!」


「なんであーしが!?」


「速そうだから!」


「ならしょうがないっす!!」



しばらくして。



「いたっすー!!!」



本当に連れてきた。



ソウダガツオが迷惑そうな顔をしている。



「何?」


「悪い。熱川まで伝えてほしいんだけど」


「誰に?」


「ワニ」


「ワニ?」



二代目が前へ出た。



「じいちゃんたちに、明日稲取まで来いって!」


「何しに?」


「サメ取りに」


「…………」



ソウダガツオが海底を見る。



大量のサメ。



二代目を見る。



「分かった」


「分かるんだ!!!」



「熱川でワニ探せばいい?」


「その辺にいる!」


「分かった」



ソウダガツオが北へ泳いでいった。



「伝令ってそんな雑な住所で届くの!?」



二代目は満足そうだ。



「これで大丈夫だ!」


「明日までここに置いといて平気なの?」


「平気だろ」


「何を根拠に!?」


「ウヒッ!」


「それ便利だな!!!」



その日は。



稲取に泊まることになった。



キンメはもう、俺の後ろには隠れていなかった。



現地のキンメダイたちとも少し話していた。



俺たちから少し離れたところで。



「…………」



「…………」



何を話しているのかは聞こえない。



でも。



逃げてはいなかった。



それで十分だった。



夜。



みんな寝た。



イトヨリ。



キントキダイ。



キンメ。



俺。



そして。



なぜか二代目も寝ている。



「…………」



静かな稲取の海。



月明かりだけが揺れている。



その中で。



(設定値を超過しました)



(警戒モードへ移行します……)



ガサガサ……。



ピョコ。



小さな影が一匹。



外へ出た。



ウオノエ。



しばらく辺りを見回す。



そして。



眠っている二代目を見る。



ぴょこ。



ぴょこ。



口元まで近づいた。



「おじゃましま!」



するっ。

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