↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
105/156

【城ヶ崎遠征編】第105話 釣り人の釣り方

第105話  釣り人の釣り方



一週間。



クエに言われた期限は、それだけだった。



ステラを城ヶ崎へ連れてこい。



ステラ。


もちろん知っている。


シマノのリールだ。


前世の俺も釣り人だったんだから、そのくらいは分かる。



そして、ステラを持っていそうな人間にも心当たりがある。



教祖。



前世の俺だ。



「そうか……!!」



そこで俺は気づいた。



「どうやって城ヶ崎まで釣れてくるんだよ!!」



魚をじゃない。


人間をだ。



川奈へ戻った俺は、海藻のソファに寝転んだ。



「チカメさん、教祖に連絡すればいいんじゃないっすか?」


「どうやって?」


「電話」


「番号知らねえよ」


「メッセージ」


「連絡先知らねえよ」


「SNS」


「アカウント知らねえよ」


「住所は?」


「知らねえ」


「何も知らないっすね」


「今の俺は魚だからな!!」



キントキダイが首を傾げた。



「海面から呼べば?」


「聞こえねえよ」


「大声で」


「魚だぞ!!」



イトヨリがスマホを取り出した。



「じゃあチャッピーに聞くっす」


「なんて?」


「人間の呼び方」


「野生動物みたいになってきたな」



イトヨリが画面を操作する。



「電話する」


「だから番号知らない」


「メールを送る」


「知らない」


「直接訪ねる」


「どこにいるか知らない」


「共通の知人に頼む」


「魚しかいねえよ!!」



全部正しい。



そして全部できない。



俺は海藻のソファに沈んだ。



「じゃあ、人間って何なら勝手に来るんだ?」



キンメダイが考えた。



「税務署からのおたずね」


「それは勝手に来るんじゃなくて行かなきゃいけないやつ!!」



キントキダイが続ける。



「警察からの呼び出し」


「もっと行きたくねえよ!!」



イトヨリが手を上げた。



「俺俺俺の電話!」


「誰だよ!!!」



俺が三人いる。



「違う!! そういうのじゃなくて、人間が自分から喜んで来るもの!」



「バーゲン?」


「来る!」


「無料配布?」


「来る!」


「福音?」


「魚が来ちゃうだろ!!」



逆だ。



呼びたいのは人間。


しかも釣り人だ。



「釣り人が、自分から行きたくなるもの……」



俺が呟く。



イトヨリが、ぱっと顔を上げた。



「わかったっす!!!」



「おっ」



「他人の釣果っす!!!」



「…………」



それは。



めちゃくちゃ来る。



「みんなに釣られるように頼んでくるっす!!」


「待て待て待て待て!!!」



イトヨリが泳ぎ出そうとした。


慌てて止める。



「なんで止めるんすか! 城ヶ崎でいっぱい釣れれば、人間が来るっす!」


「理屈は合ってるけど魚側から実行するな!!!」


「何匹くらい釣られればいいっすかね?」


「募集するな!!」


「大きい魚の方がいいっすよね?」


「選ぶな!!」



「でも、釣果があれば人間が来るっていうのは合ってるよね」



キンメダイが言った。



「まあな」


「じゃあ、釣られなくてもいいんじゃない?」


「え?」


「魚がたくさんいるって、人間に分かればいいんでしょ?」



「…………」



確かにそうだ。



釣果そのものが必要なわけじゃない。



魚がいる。



釣れそうだ。



そう思わせればいい。



その時、頭上を小魚の群れが走った。



何かに追われたのか、一斉に海面へ向かう。



水面が激しく揺れた。



バシャバシャと音が響く。



「…………」



俺は海面を見上げた。



人間から見える。



魚がいると分かる。



しかも、釣り人なら放っておかない。



「ナブラだ」



「ナブラ?」



「海面で魚がバシャバシャやってれば、釣り人なら気づく」



イトヨリも海面を見上げた。



「じゃあ、みんなでバシャバシャするっす!」


「四匹でやってどうすんだよ!!」



俺とイトヨリとキントキダイとキンメダイ。



四匹で海面を跳ね回ったところで、ナブラにはならない。



「魚を集めればいいんじゃない?」


「そうだな」



魚を集める。



海面を騒がせる。



人間に見せる。



それなら、誰も釣られなくていい。



「じゃあ城ヶ崎でやるっす!」


「教祖が川奈にいたら見えねえよ!!」


「じゃあ川奈でやるっす!」


「川奈に来ちゃうだろ!!」


「面倒くさいっすね教祖!!」


「教祖は何も悪くねえよ!!!」



問題はそこだった。



気づかせるなら川奈。



来てほしいのは城ヶ崎。



俺は海藻のソファに寝転んだまま、海面を見上げた。



「…………」



キントキダイが言った。



「じゃあ、ナブラが城ヶ崎まで行けば?」



「…………」



俺は起き上がった。



キンメダイが首を傾げる。



「ナブラって移動できるの?」



「魚だぞ」



「できるね」



できる。



川奈でナブラを作る。



教祖に見つけてもらう。



少し南へ移動する。



追ってきたら、また南へ。



さらに南へ。



城ヶ崎まで。



イトヨリが俺を見た。



「チカメさん、それって……」



「ああ」



クエは俺に、ステラを連れてこいと言った。



でも、人間を呼ぶ方法なんて俺たちにはない。



だったら。



「教祖を釣るぞ」





第105話 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。