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【城ヶ崎遠征編】第104話 お、ねだん以上 ダイワ

第104話 お、ねだん以上 ダイワ



「お前が代わりに責任を取れ」



「…………俺が?」



クエは俺を見ている。



「お前も川奈だろ」


「そうだけど、俺あいつらと関係ないぞ」


「川奈だろ」


「川奈ってだけで!?」



横を見る。


軍曹は黙っていた。



「軍曹」


「…………」


「なんか言って」


「私だ」


「知ってるよ!!!」



そこだけは絶対に崩さない。



クエが後ろに並んだ戦利品へ目をやった。



「別に福音はいらねえ」


「え?」


「代わりに、欲しいものがある」



竿。


リール。


折れた竿。


傷だらけのリール。



クエが、その中の一つを示した。



「今一番気に入ってるのはこれだ」



イトヨリが覗き込んだ。



「ダイワのソルティガっすね」


「さすが、値段見てないのに高いの分かるんすかね」


「ソルティガっていうのか、これ」


「知らなかったんすか!?」



クエはリールを眺めた。



「これはなかなか強かったし、これを使ってる人間も最後まで竿を離さなかったからな」


「…………え?」



クエが笑った。



「海面に叩きつけてやったわ」


「…………まさかそのまま!?」



「残念ながら、人間はついてこなかったなぁ」



「ほっ」



一瞬、安心した。



「いや全然よくねえよ!!!」



クエは気にする様子もなく、戦利品へ目を戻した。



「だが、まだ獲ってねえものがある」


「まだあるの?」


「ああ」



クエが俺を見る。



「ステラだ」



「…………」


「…………」


「…………」



誰も分からなかった。



「何それ?」



キントキダイが聞いた。



「知らねえ」


「知らないの!?」



クエは平然としている。



「じゃあなんで欲しいんだよ!」


「前に海面まで行った時、人間が話してるのを聞いた」


「なんて?」


「これが一番高いステラだ、ってな」



「それだけ!?」



名前しか知らなかった。



「どんな形なんすか?」


「知らん」


「どこの何なんすか?」


「知らん」


「何に使うんすか?」


「知らん」


「情報が『一番高い』しかないっす!!」



クエがイトヨリを見る。



「高いんだろ」


「たぶん……」


「なら強えんだろ」


「そこも知らないの!?」



クエはもう一度、ソルティガを見る。



「こいつは強かった」


「だから?」


「なら、一番高い奴はもっと強え」



「値段で強さ決めるなよ!!!」



「だから勝負する」


「何と?」


「ステラだ」


「リールと!?」



クエは俺を見る。



「そいつをここへ連れてこい」


「だから物だろ!?」


「使ってる人間ごとでいい」


「急に難易度上がった!!!」



俺は軍曹を見た。



「無理だろ!! そんなの!!」


「…………」


「人間を城ヶ崎まで連れてくるんだぞ!?」


「私に言うな」


「元はお前んとこのイシダイだろ!!」



軍曹が目を逸らした。



「軍曹が目を逸らした!!!」



クエが低い声で言った。



「一週間だ」


「は?」


「一週間以内に、ステラをここへ連れてこい」


「だからどうやって!!」



「できねえなら、それでもいい」



クエが軍曹を見る。



「川奈の話に戻るだけだ」



「…………」



軍曹の表情が変わった。



さっきまで騒いでいたイトヨリも黙った。


キントキダイも、キンメダイも何も言わない。



俺はクエを見る。



「…………本気か?」


「ああ」



クエは岩の間へ戻った。



「一週間後だ」



それだけ言うと、次に並んでいた魚へ目を向けた。



「次」



俺たちとの話は終わったらしい。



魚が前へ出る。



「親分、今月分です」


「おう」



何事もなかったみたいに、また列が動き始めた。



俺はその場に立ったまま、しばらく動けなかった。



一週間。



人間を。



城ヶ崎へ。



しかも、ステラを持っている人間。



そんな奴を俺が知っているわけ――



「…………」



一匹だけ。



人間の顔が浮かんだ。



第104話 終

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