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元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~  作者: 草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
バナンバタウン ~勇者の一番弟子と幻のバナナ~

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第54話 オデットとラカタン

 無事、バナンバ原種を街に持ち帰った翌日――。


「改めて……私、みんなと一緒にアスパーナに行くよ」


 冒険者ギルドに集まったセフィラたちの前で、オデットはそう宣言した。


「今回の任務で、自分が忘れていた大切なことを思い出させてもらった。そして、立ち止まって体と心を休めることの重要性もね」


 オデットはシャロに視線を送る。


(いえいえいえ! 私はそんな大したことはしてません……!)


 ……と心の中で思いながら、シャロは手のひらを見せて横に振る。

 そんな二人の無言のやり取りを敏感に察知したラカタンは、これまた無言でちょっぴりジェラシーを感じていたり……。


「オデコさんが休むことの大切さに気付いてくれてよかったです! 一緒に温泉でのんびりしましょう!」


 セフィラは純粋にオデットの同行を喜ぶ。

 それ以上にオデットの返事に喜んでいたのは……意外にもガルーだった。


「ふぅぅぅ……その言葉を我は待っていたのだ! これで我も安心して温泉へ向かい、ゆったりと体を休めることができる! フフフフフフッ……!」


 あまりにも珍しい感情の見せ方をするので、疑問に思ったセフィラはズバリ切り込んでみる。


「どうしてガルーはそんなに喜んでいるんですか? 何か明確な理由がありますよね?」


「むっ!? べ、別に特別な理由などないぞ……? かつて共に肩を並べて戦った戦友と、温泉に行けるのが嬉しいだけ……だ!」


「本当にそう思ってるとしても、私が知ってるガルーは照れて、その感情を表に出そうとはしません」


 ごまかし方が下手くそなガルー。

 冷静に理屈で詰めてくるセフィラ。

 数秒の沈黙の後……ズバリ答えを言い当てたのはオデットだった。


「私がいれば、女湯で何かあってもセフィラを守ってくれる……だから安心なんだよね? ガルーとムニャーは男の子だし、シャロちゃんに護衛は荷が重いからさ」


「むむぅ……その通りだ。セフィラを無防備な状態にしては、我も心が休まらん。とはいえ、我は男だ。共に風呂に入るわけにはいかんからな」


 セフィラと種族は違えど、ガルーにとって女湯は踏み入れない場所なのだ。


「え~? 別にガルーも一緒にお風呂に入ればいいじゃないですか」


 無邪気なセフィラの誘いにも、ガルーは大きく首を横に振る。


「いかんっ! もちろん、我以外の男……ムニャーも含めて混浴など許さんッ!!」


「ムニャッ……!?」


 ガルーの大きな声にびっくりするムニャー。

 幼いムニャーには、ガルーが何をそんなにこだわっているのかわからないが、言われたことは守ろうと思った。


「くっ……! 私もギルドマスターなんて要職でなければ、温泉旅行に同行してオデットとお風呂に……やなくて、セフィラちゃんを守ってあげられたのになぁ……!」


 歯を食いしばり、拳を握り締め、全身で悔しさを表現するラカタン。


 今期の花粉を乗り切るだけのバナンバ原種は手に入ったが、プラタノ原生林に異変が起こってしまった以上、今後の対策を考えなければならない。

 ギルドマスターとして、今バナンバタウンを離れるわけにはいかないのだ。


 たとえそれがオデットと裸の付き合いができるチャンスだとしても……!


「また一緒に行こうよ、ラカタン」


 ラカタンの肩に手を置き、オデットは言った。


 全く予想外の言動だった。

 休むことにあれだけ抵抗があったオデットが、もう次の休みの話をしているのだから。


(そ、そんなに私のことを、特別に思ってくれてたんや……! 今までは口に出さなかっただけで……!)


 これまでにない感動、至福の時――ラカタンは肩に乗ったオデットの手に手を重ねる。


「うんっ! 今度は一緒に行こなっ!」


 ギルド中に響き渡るラカタンの喜びの声。

 オデットはちょっとびっくりしている。


 あくまでも、オデットは『みんなで』また温泉に行こう……と言ったに過ぎない。

 それをラカタンは『二人っきりで』温泉に行こうと言われたと受け取った。


 この認識の違いがトラブルを巻き起こすのは……当分先のことになるだろう。


「さて、そうと決まれば今日は準備ですね! バナンバタウンからアスパーナは遠いですから、たどり着くまでは油断せずに万全の体制でいきましょう」


 セフィラが話をまとめる。

 バナンバタウンがあるのは王国の中央あたりで、アスパーナはそこから北西に進んだ、シーズ王国と魔人国ダージェンドの国境付近にある。


 国境付近ということは、かつて戦場になり今も情勢が不安定……ということはない。

 すべての国境線で戦闘が起こったわけではないし、特にアスパーナに関しては『とある事情』でかなり治安がいいと言われているのだ。


 セフィラの言う万全の体制とは一般論。

 距離にして数日を要する旅の準備は、ちゃんとしておこうという意味だ。


 オデットは剣が折れてしまったので代わりの調達、セフィラたちは食料など必需品の買い出しを、街の観光がてらゆっくりと一日かけて行った。


 そして、翌日――いよいよバナンバタウンを後にし、アスパーナへ出発する!

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