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元・神獣の世話係 ~神獣さえいればいいと解雇されたけど、心優しいもふもふ神獣は私についてくるようです!~  作者: 草乃葉オウル ◆ 書籍発売中
バナンバタウン ~勇者の一番弟子と幻のバナナ~

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第46話 私のことだけ考えて

 一方その頃、戦場を離脱したオデットたちは、原生林に鎮座する巨岩の上に逃れていた。

 流石の木の根も硬い岩盤は突き破れないし、高いところまでは追ってこれない。


「原生林の豊かな地形に助けられたね……」


「それとこんな高い岩に簡単に登れるオデットさんにも助けられました……」


 肩にシャロを担いで、オデットは脚の力だけで巨岩を駆けのぼった。

 姿勢的に真下の地面が見えていたシャロにとっては、なかなかの恐怖体験になった。


「ここからなら、ジャングル全体が見渡せる。しかも、バナンバ原種が群生(ぐんせい)している場所もバッチリわかる」


「えっ? ど、どこですか……!?」


 シャロはオデットが指さす方向を見る。

 緑一杯の原生林の中に、光を放ちキラキラと輝く一帯があったのだ。


「バナンバ原種の皮は金色。だから、ああやって日の光を乱反射して、周りをキラキラと輝かせるんだ」


「き、金色って本当に金属みたいな光沢があるんですね! ゴージャスなバナナですっ!」


 できる限りテンションを上げて明るく話すシャロ。

 ちらりとオデットの横顔を見てみる。


(……やっぱり、オデットさん明らかにしょんぼりしてる。剣が折れたのが……いや、剣を折ってしまうような自分にショックを受けてるんだ)


 愛用している龍髭剣は、唯一無二の逸品ではない。

 その細さゆえに使い込めばいずれ壊れるし、何度も買い替えてきた武器でしかない。


 しかし、今までは体の一部のように自在に振るえ、意図しないタイミングで折れたことはなかった。

 剣の強度が落ちていれば、持った瞬間にわかるほどに使い慣れていたはず……。


「私が力加減を間違えて、剣を失ってしまった……。武器がなくても戦う方法はあるけど、今の私がバナンバ原種のある場所へ……あの木の根を操っている本体がいる場所に向かって、果たして役に立つかどうか……」


「そ、それは……」


 シャロにはなんとも言い(がた)い。

 明らかに調子を崩しているオデットに、適当な励ましの言葉をかけて戦わせていいかなんてわからない。


「みんなが言う通り、仕事のしすぎで疲れがたまっているのか、戦いすぎて肉体が衰えているのか……。自分の体のことも自覚できないなんて、私は三流もいいところだね……」


 座り込んで、ため息をつくオデット。

 シャロはその後ろで立ち尽くす。


「こんなんじゃ、これからの仕事にも支障が出る……。この次の仕事は入れてないにしても、S級冒険者として長期的な予定はいくつも入ってるし……。そもそも、これだけ強力なモンスターが出現してしまった以上、これからの原生林の管理を見直さないといけないし、バナンバ原種をどう安定して供給していくのか……」


「あああああああああああああああああああああっ!!」


 突然シャロが絶叫。

 オデットの思考は中断される。


「な、何っ!? 敵……!?」


 オデットは跳ねるように立ち上がって周囲を警戒する!


 ……しかし、脅威は見当たらない。

 シャロの体には外傷も異変もないように見える。


 困惑するオデットを無視して、シャロはしばらく黙っていた。

 そして、たっぷり間を置いてから口を開いた。


「今は目の前にいる私のことだけ考えてください!」


「……っ!?」


「余計なことは考えないで、私を守ることだけに集中してください! 私、まったく戦えないんですから! 一つのことだけを考えれば、迷うことなんてないはずです!」


「目の前の……一つのことだけ……集中して……考える……。シャロちゃんを守る……」


 脳が熱を持つほどに暴走していた思考が、シャロの言葉でクールダウンしていく。

 いきなり冷たい水に浸されたように、ギュッと引き締まっていく――。


 シャロは自己保身から自分のことだけ考えろと言ったわけではない。

 自分で考えをまとめられないオデットに、わかりやすく一つの答えを示したのだ。


『戦場ではいつも雑念が混じる。ただ、そんな中でも一つのこと、目の前のことだけに集中する時間を一瞬でも持てる人間は強いんだ。オデットもこういう考え方を覚えておくに越したことはない』


 頭の中に響くのは、懐かしい声。

 オデットはある出来事を思い出す。


(そうだ……。昔、似たようなことを言われたことがある……。グラストロ……勇者様に!)


 生前の勇者グラストロとの記憶。

 それは戦争の中、立ち寄った街の宿での出来事。


 忙しさの中で忘れていた思い出が蘇る――。

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